01.パンツのために死んだ俺
はじめまして。
パンツを追いかける男の学園コメディです。
気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
高校生三年生の春。
俺は人生最大のチャンスを迎えていた。
通学路には同じ制服の生徒たちがゆるく流れている。
眠そうな顔のやつ、スマホを見ながら歩くやつ、コンビニの袋をぶら下げているやつ。
そして俺は――
前方を見据えていた。
「勉、お前さ」
隣を歩く友人が呆れた声を出す。
「朝から何キョロキョロしてんの?」
風間爽太。
爽やかで真面目で、女子からやたら人気のある俺の友人だ。
「黙れ」
俺は低く言った。
「今は戦場だ」
「学校行くだけだろ」
違う。
これは戦いだ。
俺は前方を見据える。
十メートル先。
黒髪ロングの女子。
そして――
短いスカート。
春の風に、布がふわりと揺れている。
俺は目を細めた。
「……来る」
「何が?」
爽太が怪訝そうに聞く。
「風だ」
「その顔やめろ」
俺は静かに言った。
「パンツ」
「最低だなお前」
その瞬間。
通学路を風が吹き抜けた。
桜の花びらが舞う。
スカートが揺れる。
俺の目が見開かれる。
「来る!!」
「何が!?」
「パンツイベント!!」
俺は全神経を集中させた。
世界がゆっくりになる。
スカートが揺れる。
めくれる。
白が見える。
そして――
「危ない!!」
爽太の叫び声。
視界の端に、何かが飛び込んできた。
大きなトラック。
クラクションが鳴る。
だが俺の脳は、一つの情報しか処理していなかった。
「パンツ!!」
ドン。
◇
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
「……どこだここ」
天井も床もない。
上下の感覚すら曖昧になるような、ただの白い空間。
その中央に――
おっさんが立っていた。
白いヒゲ。
白い服。
そして妙にだるそうな顔。
やる気のない神様、という言葉がぴったりだった。
「すまんの」
「え?」
「ワシのミスじゃ」
「え?」
おっさん――いや、どう見ても神様っぽい存在は、頭をぼりぼりと掻いた。
「お主、死んだ」
「軽っ」
「トラックの運転手が居眠りしてな」
「そうっすか」
神様が眉をひそめた。
「お主の方が軽いではないかっ!」
「パンツ見れたんで」
「は?」
神様が固まる。
ゆっくりこちらを見る。
「……見れたの?」
「見れました!!」
俺は思わず声を張り上げた。
神様がびくっと肩を揺らす。
「急に声でかい」
「白でした!!」
「情報いらん」
神様は深いため息をついた。
まるで面倒なクレーム客に当たった店員のような顔だ。
「……とにかく」
神様は頭を掻きながら言った。
「ワシのミスじゃ」
「ふーん」
「興味なさそうじゃな」
神様はもう一度深くため息をついた。
「……まあよい」
白いヒゲを撫でながら言う。
「お詫びに転生させてやる」
「転生?」
「そうじゃ」
神様はあっさり頷いた。
「異世界でも現代でも、好きなところに送ってやる」
俺は少し考えた。
「……異世界?」
「できるぞ」
神様は指を一本立てた。
「剣と魔法、冒険、勇者。そういうやつじゃ」
「でも俺」
「うむ?」
「現代日本がいいです」
「え?」
神様が止まった。
「日本?」
「はい」
神様は腕を組んで唸った。
「変わったやつじゃのう……」
しばらく考えたあと、面倒くさそうに言う。
「まあよい」
「どうせワシのミスじゃ」
そして俺を指差した。
「能力も一つやろう」
俺は即答した。
「パンツを見る能力ください」
神様は黙った。
口がぱくぱくしている。
「金魚みたいになってますよ」
「転生させるの、やめようかな」
「やめないでください」
「めんどくさいのぅ」
神様は大きくため息をついた。
「普通なら赤ちゃんからやり直すんじゃが」
「普通なら?」
「めんどくさい」
「え?」
「高校生のまま戻れ」
「雑!!」
神様が指を鳴らした。
その瞬間、頭の奥で音がした。
『パンツイベント発生予測』
「かっこいい」
「パンツが見えそうな瞬間がわかる能力じゃ」
「最低だ」
「お主が望んだんじゃ」
「最高だ」
「ちなみに音も鳴る」
「音?」
「強いイベントほど、うるさい」
「パンツの強さとは」
◇
「おい、勉」
声が聞こえた。
目を開ける。
見慣れた通学路が広がっていた。
春の朝。
制服の生徒たちが歩き、遠くで笑い声が聞こえる。
隣には――
風間爽太が立っていた。
「ぼーっとするなよ」
「……え?」
俺は周りを見回した。
同じ道。
同じ風景。
さっきまでと何も変わらない朝。
そして――
同じ女子。
「時間を少し戻してやった」
神様の声が耳元で聞こえた。
俺は呟いた。
「パンツの神」
「違う」
その瞬間。
頭の中で音が鳴った。
ピコン。
『パンツイベント発生予測』
――こっちだ。
理由はわからない。
気が付いたら走り出していた。
「来る!!」
「何が!?」
突風。
桜の花びらが舞う。
スカートが揺れる。
俺は瞬時に判断した。
時間がない。
風が来るのは数秒後。
今の位置じゃ――
見えない。
俺は走った。
「おい勉!?」
爽太の声を無視する。
もっと近く。
パンツを見るには――
距離が必要だ。
そのとき。
俺は誰かとぶつかった。
「ぐえっ!?」
警察が走ってくる。
「確保!!」
「逃げるな!」
男はあっという間に取り押さえられた。
通学路がざわつく。
警察が俺を見る。
「君!ナイスだ!」
「この男、ひったくり犯だ!」
爽太が呆然と俺を見る。
「勉……お前、今なにしてた?」
俺は答えた。
「パンツ見に行った」
「違った!!」
爽太が頭を抱えた。
「お主」
横から聞き覚えのある声。
見ると、神様が立っていた。
相変わらず、だるそうな顔だった。
神様は呆れた声で言う。
「もうパンツ見とるんか」
俺は言った。
「事件解決しました」
神様はため息をつく。
「嘘つけ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この先もパンツとともに、いろいろ起きます。
よければ続きも読んでいただけると嬉しいです。
※本日、続きも投稿予定です。




