シーズン2第10話「永遠に続く青空」
シーズン2第10話「永遠に続く青空」をお届けします!
光の剣がすべての闇を打ち払い、アストレア王国に真の平和が訪れた最終話。戦いを終えたミリーの前に訪れる最後の奇跡と、二人が選び取る未来を描く感動のエピローグです。
それでは、シーズン2第10話のスタートです。
光の剣が放った眩い浄化の聖光が、アストレア城の隅々にまで行き渡った。
魔導士の手から離れ落ちた『真実の眼』のペンダントは、かつての美しく澄んだ青い輝きを取り戻し、柔らかくその場に転がっている。
「ぐあぁぁっ……! ば、馬鹿な……この私が……!」
元・宮廷魔導士の叫び声は、城内を覆っていた黒い霧と共に、まるで泡のように消え去っていった。
暴走していた魔力炉は完全に鎮まり、城を縛り付けていたすべての呪縛がパキリと音を立てて消滅する。
静寂が戻った玉座の間で、ミリーはふっと息をつき、その場に膝をついた。
手からすっと光の剣がほどけ、温かな光の粒子となって空中に溶けていく。
「……やり遂げたわ、ロイ」
彼女の背後で、透き通るような白銀のシルエットが優しく微笑んだ。
奇跡の力を使い果たしたロイの魂は、今や穏やかな光の輪郭を保つのもやっとというほどに薄れていた。それでも、その碧色の瞳には、もう何の未練も恐れもなく、ただ深い安らぎと愛だけが満ちている。
ロイはゆっくりと歩み寄り、生きていた頃と変わらない優しい手つきで、ミリーの頬にそっと触れようとした。もちろん、霊体である彼の手が物理的な感触を残すことはない。それでも、その仕草だけで、彼女には彼の温もりが痛いほど伝わってきた。
「よく頑張ったね、ミリー。君はもう、誰にも守られるだけの弱い王女じゃない。この王国を、そして僕の誇りをも守り抜いてくれた、最強で最愛の女王だ」
「やめてよ、そんな風に言わないで……」
あふれ出る涙を、ミリーは必死に袖で拭った。
「私は、ただあなたと……もう一度、ちゃんと隣に並んで生きたかっただけなのに……」
ロイは首を横に振ると、一段と柔らかく微笑んだ。
「僕の魂は、ずっと君の胸にあるそのペンダントと共にあるよ。そして、この国に吹くすべての風が、僕からの愛の証だ」
空の色が、少しずつ変わり始めていた。
東の空から、漆黒の夜の帳を押し破るように、眩い朝焼けの光が差し込んでくる。それは、人工的な奇跡の光ではなく、世界が自らの力で取り戻した、本物の新しい一日の訪れだった。
「……行かなくちゃ、ロイ?」
「ああ。夜明けの時間だ」
ロイの姿が、朝の光に溶けるように、ゆっくりと、しかし穏やかに薄れていく。
彼は最後に、愛おしそうにミリーの瞳を見つめ、静かに告げた。
「愛しているよ、ミリー。――また、風の向こうで」
「うん……! 愛しているわ、ロイ……!」
その名前を呼んだ瞬間、彼の姿は完全に光の粒子となって消え去り、あとに残されたのは、朝露に濡れた床に静かに転がる『真実の眼』のペンダントだけだった。
ミリーは息を呑み、ゆっくりとそのペンダントを拾い上げた。
ひんやりとした青い石を胸元にあてると、かつてないほど力強く、そして温かな鼓動が彼女の心臓と重なり合うように響いた。
彼は消えてなどいない。自分の魂の深淵に、そしてこの世界の風の中に、永遠に生き続けている。
数ヶ月後。
完全な平穏を取り戻したアストレア王国の王城バルコニーに、気高い女王の姿があった。
純白のドレスに身を包んだミリーは、胸元に青く輝くペンダントを揺らしながら、どこまでも高く澄み渡った青空を見上げていた。
風がそよと吹き抜け、彼女の栗色の髪を優しく撫でる。
「……ただいま、ロイ」
空に向かって呟いたミリーの顔には、もう涙はなく、明日へと向かうための眩いばかりの満面の笑みが浮かんでいた。
愛する人は還るべき場所へ帰り、世界には永遠の青空が広がっている。
彼女はしっかりと前を向き、新しい未来を抱きしめて、ゆっくりと歩き出したのだった。
(シーズン2・完)
シーズン2最終話「永遠に続く青空」、そして『魔王を殺した王子、私を救った恋人』のすべての物語をお読みいただき、本当にありがとうございました!
本編から外伝、そしてシーズン2に至るまで、ロイとミリーの切なくも美しい愛の奇跡の物語にお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
二人の選んだ未来と愛の軌跡が、皆様の心にいつまでも温かく残り続けますように。
それでは、また別の世界でお会いしましょう!




