シーズン2 第8話 :魂の共鳴、再び
シーズン2第8話「魂の共鳴、再び」をお届けします!
黒い霧に包まれたアストレア城の前で、呪いに苦しむ親友アルフレッドを救うため、ミリーは自らの命を賭した決死の行動に出ます。ペンダントの共鳴が引き起こす、奇跡の瞬間とは――。
それでは、シーズン2第8話のスタートです。
「アルフレッド!」
ミリーの叫び声が、黒い霧に包まれた城門前にこだました。
精神の乗っ取りと戦い、苦悶に満ちた表情で頭を抱えるアルフレッドの身体から、どす黒い紫色の瘴気が激しく噴き出している。彼の背後では、洗脳された近衛騎士たちが無機質な目で冷酷な刃を構えていた。
このままでは、アルフレッドは完全にエンペラー将軍の呪いに飲み込まれ、永遠に自我を失ってしまう。
(どうすればいい……? 私にはもう、あのペンダントがない。ロイの形見である『真実の眼』を奪われた今の私には、彼らを救う力すらないというの……?)
絶望の淵で、ミリーの脳裏にふと、北方の遺跡で知ったペンダントの秘密が蘇った。
――『真実の眼』とは、王家の血筋の魂と、異世界や別の次元に存在する「強い絆の気配」を繋ぎ止めるための魂のアンカーである。
ペンダントそのものが手元になくても、彼女自身の血筋と、ロイを想う純粋な魂の繋がりが消えたわけではない。
「……そうだわ。私の身体こそが、彼の魂を繋ぐ生きたアンカーよ!」
ミリーは迷いを捨て、その場でスッと両目を閉じた。
彼女は自分の両手を胸の前に合わせ、亡きロイの温もりを、あの優しい笑顔を、そしてあの夜に交わしたすべての記憶を心の深層へと呼び起こした。
(ロイ……お願い。私に力を貸して。この王国を、あなたの大切な友人を、闇から救い出して……!)
ミリーの心の叫びが、次元の壁を突き破るように空間の波長を震わせた。
その瞬間、彼女の身体から、まばゆいほどの純白の聖光が爆発するように迸った。それはペンダントという物質を介さず、女王自身の強い覚悟と愛の奇跡によって生み出された、真実の光だった。
「――なっ……なんだ、この眩い光は……っ!?」
洗脳された騎士たちが、あまりの強烈な聖光に目が眩み、思わず剣を取り落として後ずさった。
アルフレッドを蝕んでいたどす黒い紫の瘴気が、まるで熱湯に触れた雪のように激しく音を立てて蒸発していく。
そして、その光の中心――ミリーの背後の空気が、ふわりと優しく揺らいだ。
「……ミリー……」
それは、あまりにも懐かしく、温かい声だった。
光の粒子が寄り集まり、透き通るような白銀のシルエットが形作られる。そこには、半年前この世を去ったはずの第一王子ロイの姿が、鮮やかな碧色の瞳とともに確かに存在していた。
「――ロイ……!?」
アルフレッドが目を見張り、その場に崩れ落ちるように膝をついた。
物質の身体はなく、それは強い想いとペンダントの共鳴によって現世へと呼び戻された、一時的な魂の顕現だった。しかし、その瞳に宿る意志は、紛れもなくあの優しく強い「ロイその人」だった。
ロイの幻影は、ゆっくりと歩み寄り、苦悶に歪む親友アルフレッドの肩にそっと手を置いた。
物理的な感触はないはずなのに、その温かな眼差しだけで、アルフレッドの心の奥底にあった闇の呪縛がパキリと音を立てて粉々に砕け散った。
「……よく耐えたな、アルフレッド。もう、心配いらない」
ロイの落ち着いた声が、冷たい夜気を優しく包み込む。
アルフレッドの瞳から、どす黒い紫の光が完全に消え去り、本来の澄んだ理性が戻ってきた。彼は自分の両手を見つめ、大粒の涙を流しながら深く頭を垂れた。
「……ロイ様……! 私を……私を許してくだい……!」
「顔を上げろ。君は悪くない」
ロイは優しく微笑むと、その視線をまっすぐに最愛の恋人――ミリーへと向けた。
二人の視線が交わり、言葉がなくとも、お互いの心が完全に通じ合う。
現世に留まっていられる時間は長くない。北方の魔導士たちが引き起こした闇の残滓が、まだ城の奥で不気味にうねっている。
ロイの魂は、愛する者たちを救うため、最後の力を振り絞るべく一歩前へと踏み出した。
シーズン2第8話「魂の共鳴, 再び」をお読みいただき、ありがとうございました!
ミリーの強い想いが奇跡を起こし、一時的に現世へと舞い戻ったロイ。親友アルフレッドの洗脳を解き、再び二人の絆が奇跡の光を生み出しました。
次回、シーズン2第9話「愛が結ぶ奇跡の刃」では、ロイの魂とミリーの絆が一つに重なり、王国の運命を賭けた最終決戦の火蓋が切って落とされます。




