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千年王国計画 〜第三王子による長期国家運営録〜  作者:
建国編

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燃えた手紙

【建国地 執務室 夜】※アルト視点


 手紙が、届いた。

 運び屋は、南の獣道を使ってきた商人だった。

 荷物の底に、隠してあった。

 

 封を開ける。

 小さな字で、びっしりと書かれている。

 リオンの字だ。以前より、落ち着いており、震えていない。

ーーーーーーーーーー


 兄上へ。


 伝えなければならないことが、三つあります。

 

 一つ目。人間国の教会が、聖戦の準備を始めています。

 農村への布教活動が、急速に強化されています。兵糧の供出を民に求める動きも出始めています。表向きは「神への奉納」ですが、実態は軍への備蓄です。私の協力者が確認しました。

 

 時期は、半年以内と見ています。教会が民を動かす速度を考えると、それより早まる可能性もあります。

 標的は、建国地と魔物国の両方です。大司教は「異端の根絶」という言葉を使っているようです。

 

 二つ目。ルクレシア姉上が外交で動いています。

 建国地周辺の物流を止めようとしています。北の街道沿いの集落への要請と、人間国側への噂の流布が確認されています。姉上の動きは、武力ではなく情報と経済です。正面からの衝突は、今のところ考えていないと思います。

 

 ただ、姉上の本命は別にあると思っています。建国地の内側を揺らそうとしているはずです。すでに工作員が入っているかもしれません。ご注意ください。


 三つ目。私自身のことです。

 魔物国の中で、私の立場は少しずつ変わっています。ガルディアス兄上の失敗の後、父上が私を呼びました。短い話でした。「見ていろ」とだけ言われました。意味は、まだ分かりません。

 

 ガルディアス兄上は、私を疑っています。証拠はないはずですが、偽文書の件で感づいているかもしれません。今のところ、直接の動きはありません。

 

 私は、まだここにいます。細い繋がりですが、情報は送り続けます。

 兄上が作った場所が、まだそこにあることを、ここから確認しています。

 それだけで、十分です。


 リオンより。


ーーーーーーーーーーーーー


 アルトは、手紙を閉じた。

 蝋燭の火が、揺れている。頭の中で、情報を整理する。


(聖戦、半年以内)


 予想より、早い。

 だが、予想の範囲内だ。


 大司教が動くことは、分かっていた。

 エリオスが評議室で問いを立てた時点で、追い詰められていた。

 追い詰められた者は、大きく動く。


(ルクレシアの工作員は、すでに入っている)

 カルという商人のことを思い出した。泳がせている。

 だが、ルクレシアの本命が内側への楔だとすれば、次の手が来る。


(父上が、リオンを呼んだ)

 「見ていろ」という言葉。

 魔王らしい言葉だ。リオンに何かを期待しているのか。

 それとも、試しているのか。まだ、分からない。


 アルトは、手紙をもう一度開いた。

 最後の一行を、読み返した。

「兄上が作った場所が、まだそこにあることを、ここから確認しています」


(……リオン)

 十二歳の弟が、魔物国の王城で、一人で情報を集めている。

 震えない手で。

 

 アルトは、手紙を折りたたんだ。

 蝋燭の火に、近づける。手紙が、燃えた。

 証拠を残してはいけない。炎が、消えた。


 アルトは、立ち上がった。

 レオンを呼ぶ必要がある。

 半年で、何ができるかを考えなければならない。


(リオン、まだそこにいてくれ)

 声には出さなかった。

 だが、確かにそう思った。

 

 建国地の灯りが、窓の外に見える。

 まだ、点っている。それで、十分だった。

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