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それぞれの闘い

 火蓋をきったのは秋葉の魔法による鎖だった。

 タール達の頭上から鎖を落とす。ちょうどタール達三人の中心辺りを狙い、放つことで、拡散的に避けさせ、三人を離れさせる。

 タール達が避けた先には、作戦会議で指定したメンバーがそれぞれ追い討ちをかけた。

 楊拳には逆水、谷徳が。デルクにはアーミーと、エクスが。そしてタールには、秋葉、ティード、ヴェルクの三人が。攻撃をし、吹き飛ばし、更に離れさせた。

 「一人一人を潰す…ね。それに数の有利を使うのに躊躇いはない。さすが。基本だが大事なことをしっかり抑えている。」

 タールは追撃を受け、飛ばされながらも、冷静に思考し、空中で体勢を整え、摩擦で勢いを殺しながら着地した。

 飛ばされた方向を見ると追撃をした三人は着地と同時に構えをとり、タールを見据えていた。

 「肩の力入りすぎだぜ?もうちょっと楽にしようや。これから楽しむためにも…さ。」

対し、タールは余裕の笑みを浮かべながら軽口を叩く。

 その余裕な態度に眉をひそめながら秋葉が応じた。

 「そうしたいところだけどあなた相手に油断はできないわ。全力で…あなたを止めさせてもらう。」

 「本当…厄介な女だ…。と。でも自己紹介くらいはしてくれよ。これから楽しむ相手の名前もわからないなんて悲しいことはしたくないぜ。」

「自己紹介?」

ヴェルクが怪訝げに聞くとタールは一人一人指差しながら言った。

 「ああ。俺…のことはまぁ、そちらさんは十分知ってるから必要ないだろうけど…。秋葉。ヴェルク。お前らは知っているし、自己紹介はいいさ。けど、そこの美人は…俺、しらないなぁ。よければ是非とも紹介してほしいもんだ。」

 ティードは、それもそうだなと言って簡単に自己紹介をした。

 「リーブド魔法学院高等科二年、ティード・ハルーフだ。よろしく。」

「おう。よろしく。」

秋葉は緊張が薄れるなぁ…と軽くペースを乱されながらも、油断せず、タールを見ていた。

 「さて。自己紹介も終わったところでと。」

タールは両拳をぶつけ合わせ、秋葉達を見ながら魔力を込めていく。

 「始めようか!楽しい闘いを!」

拳を勢いよく突きだす同時に魔力の衝撃波が飛んでくる。

 轟音共に因縁の対決が始まった。




 「始まったようですね…。」

デルクは魔力が放出され、衝撃波が飛んでいる場所を目を細めながら、見ていた。

 「余裕ね。」

アーミーがフリフリの魔法少女のような格好で拳を構えながら、 デルクを見る。

 エクスも無言ながらも油断せずデルクを見ていた。

 「これは失敬。ラーテッドの主人様よ。せっかく我がペットの世話を誰が頼んだというわけでもないのに、してくれていたというのに、世話を押し付ける結果にしてしまった不甲斐ない私がこんな態度をしてはいけませんでしたな。…しかし…お似合いですよ。あなたのその格好。」

言い終わった瞬間、デルクはその場を跳ぶことで離れる。

 デルクがいた場所は高速で近付いたアーミーの拳によってクレーターができていた。

 「怖いなぁ…。ラーテッドよ。こんな主人のもとにいては辛かろうに…。すぐに助けてやらなければな…。」

 「あんたがイラつくこと言うからでしょ。それに何さっきから。戦おうとせず逃げてばかり。私、ここにクレーター作りに来たわけではないんだけど?」

デルクはこの場所に来てから、ずっと戦おうとせず攻撃を避けることしかしていない。

 お陰でアーミーの攻撃はこの場所にクレーターを多くつくる結果になってしまっていた。

 デルクはラーテッド、ラーテッドと壊れた機械のごとく同じことしか言わない。その様子に薄気味悪さを感じていた。

 「あいつ…見かけ通りの戦えない奴か?参謀って役目の。」

エクスがそう言うのも無理はない。

 見た目が痩せ細っており、何も知らない人でも大丈夫なのかと声をかけてしまってもおかしくないほどだ。

 これでは戦えまい。が、油断ならないのは確か。世界一つ丸々生物転換をしたほどの男だ。何を隠し持っているかわからない。油断は間違いなくしてはならないものだろう。

 「ククク…何、主人としてラーテッドが心配でねぇ。様子を見ていたのさ。まぁ、とは言っても確かにこのまま逃げ回っていてもラーテッドは返して貰えなさそうだ…。仕方ない…。貴様らの言うとおり私は闘い向きではないのだが…。ペットを返してもらうためにも直接出向いてきた。当然…。それ相応の用意をしてな!」

デルクは懐から注射器を取りだし、首に指した。後、呻き声をあげ、膝をつく。

 「な…!?」

アーミーとエクスが驚く中、デルクの背中が盛り上がりだした。

 すると背中から蟹の脚が幾つも溢れだし、その脚が支えることでデルクの身体が宙にあがる。

 そして肩から蟹の腕が幾つも出てきた後デルクはアーミー達を見た。

 「返してもらうぞ…!!!ラーテッドを!!!我がモルモットを!」

 アーミー達が驚いたのは一瞬だけだった。すぐに不敵な笑みを浮かべ、余裕な態度をとる。

 「残念だけどそれはできないわね。私…一度ものにしたら離さない性格なの。ってことであなたには諦めてもらうわ。」

 アーミーとエクスは構えをとり、デルクと相対する。

 「ほざけぇぇぇぇぇ!」

 デルクの叫びと共にアーミーの拳とデルクの蟹鋏がぶつかった。




 谷徳が振るった拳は楊拳に呆気なく手のひらで止められる。

 その手のひらで谷徳の拳を握り、上に上げると同時、蹴り飛ばす。

 谷徳はそのまま岩にぶつかる。が、岩にぶつかった衝撃は逆水が作った魔力の盾がクッションになることで防いだ。

 「ふぅむ…谷徳とか言ったな。吉寺の…。うむ。弱いな。酷く弱い。」

 楊拳は逆水を見る。

 「逆水の次代の者だな。その魔法は。魔力を形にするのではなく、魔力で物質をつくる魔法。「逆質魔在」。貴様の方がそこの弱いのより何倍もできそうだ。どうだ?かかって来ぬか?」

 「戦わなくていい。」

逆水が返事をしようとしたとき谷徳がそれを遮った。

「逆水はそこで見ててくれ。」

 谷徳は逆水の前に立ち、楊拳を見据える。

その様子に楊拳は溜め息を一つつき、言った。

 「吉寺の。貴様では相手にならん。そもそも家からして弱く、情けないではないか。秘匿を義務とした我々が唯一、友好を交わし、技術を提供したというのに、ものにするどころか、ついぞ、発動することすらかなわなかった。あれから何年たったか…死んでいたから知らぬが、どうやら未だになしえていないようだ。」

その言葉に下唇をかみ、なにも言い返せない谷徳。

 悔しさで頭がいっぱいになりかけたがふと、楊拳を見て、気になることを聞いた。

 「あんた…どうやって生き返ったんだよ…。」

当然、気にはなることだった。

 楊拳は歴史の古い逆水家創世次代の者。随分昔に死んだはずだが何故か目の前で喋り拳をふるい、死んでいたとは思えないほどだ。

 これでは生き返ったというより、全盛期次代の楊拳がそのまま来たようなもの。

 谷徳のその問い掛けに少し考えるような仕草をし、言った。

 「わからない。」

 「………なに?」

 谷徳と逆水の頭に疑問符が浮かぶ。

 それは当然だろう。生き返りというどんな高等魔法でも不可能なもの。もしあるなら…それは神の域のものだ。

 生き返った以上、そんなことができる超存在か何か。つまり、記憶に残るほどのものと会っていてもおかしくない。いや、むしろそれが普通だろう。少なくとも記憶に残るほどの何かと…人、機械、風景その他いろんなものが。とにかく記憶に残っているはずだ。

 しかし、この男は言った。わからないと。死んでいたという自覚があるのだということはさっきまでのやり取りで十分にわかっている。にも関わらずだ。

 「俺が…気付いたときにはあいつらと…タール達と行動していた。いや、あいつの野望に。面白そうだと思ったのもあった。それも覚えている…。死んでいたのも覚えているが…。生き返った理由は…わからない。」

「………。」

楊拳の様子から嘘を言ったり、誤魔化したりといったものを感じ取れない。

 本当に…わかっていないのだ。生き返った方法が。

 秋葉が楊拳の名前を部室で言ったとき、谷徳と逆水は当然、楊拳は昔、死んだ奴だと話をした。

 その際、あれこれ皆、考えたが結論としてはわからない。答えてくれるかはわからないが直接聞けばいいだろう。というものになったが、まさか聞いても、わからないという返事が嘘や誤魔化しではなく、返ってくるとは思わなかった。

 いよいよ持ってして管理局の存在が分からなくなってくる。管理局とは…一体何なんだ…。『何がいるんだ?』戸惑いが内から溢れそうになるが何とか止め、楊拳を睨み付けた。

 そう。今分からないことを考えていても仕方がない。今はただ、目の前の敵を倒すことを考えればいいだけだ!

 「ほう。いい目だ。戸惑わすつもりはなかったんだが…。普通、戸惑いで戦闘どころではなくなるかとがっかりしかけていたところだったが…。良かった。どうやら…楽しめそうだな!」

一瞬、消えたかと思うほどの速度で間合いをつめ、楊拳は谷徳に拳を振るう。

 が、その拳は谷徳に届くことなく、楊拳は飛ばされ、岩にぶつかる。

 ヒュンヒュンと空気を裂く音がする。その音の正体は谷徳の近くにあった。

 大きく半透明な刃物が空中を誰が触っているというわけでもないのに回っている。

 よく見ると半透明な刃は魔力でできており、取っ手を中心に両端の刃がそれぞれ別の方向を向いてあった。その取っ手が物質のナイフでそのナイフを中心にこの刃物を形成していた。

 取っ手を持ち、魔力刃を楊拳が飛んだ方向に向けた。

 「そりゃ戸惑いはするさ。管理局の訳のわからなさにも驚いてる。けど…今はお前を倒す方が先決だ。」

 楊拳は谷徳の方にゆっくりと歩いて来る。

 「わからんな。一家の道具にすぎん出来損ないがそうまでする理由が。」

「わかんねぇだろうよ…。お前には。」

呪いをかけた本人が、わかるわけがない。




 「我々は逆水の道具に過ぎない。利用価値があるから。生きていけてるのだ。」

谷徳は物心ついたときにはこの言葉を何度も聞かされていた。

 子供ながらになんでそうなのかと疑問に思う…ことはなく、親の言うことだから。この家に住んでいる他の者達もそうなんだからと納得して反抗することはなかった。

 転機の日は逆水家の跡取り娘の真澄と出会った時。

谷徳が抱いた真澄の第一印象は…綺麗。だった。まだ幼いながらもボーッとしながら見てしまうほどに谷徳は真澄に魅とれいた。

 両親は言う。

 「この娘がお前が命かけて守らなければならない娘だよ。この娘のために生き、この娘のために死になさい。」

 これは両家の決まり。谷徳は文句などなく、返事をしようとした。その時、凜とした声がそれを遮った。

 「危ないと思ったら逃げてもいいです。だから私のために生きるなんてしなくても大丈夫ですよ。あなたがしたいことをしてください。」

驚く両親を無視して、真澄は真っ直ぐ。それでいて優しく谷徳を見つめる。

 この日から谷徳は真澄の護衛として過ごすことになった。とは言っても谷徳は修行の身。まだまだ子供なため護衛という名目で真澄と遊んでいた。

 いろいろなことを教えたり教えられたりした。外にある沢山の遊びや、風景、魔法。お互いが知っていることを語り合う。

 幸せな毎日。が、それは呪いの存在を知ると共に崩れていく。きっかけはいつものように真澄の部屋で遊んでいるとき。

 「外に行かない?親達は今話あってるから僕たちがちょっと外に出たくらいじゃ気付かないよ。」

 真澄と遊んでいるときは毎回、家で遊ぶ。外で遊ぶことはない。

 これは友人と遊ぶうえで何らおかしくはない普通の提案。だが逆水家にとってはそれは普通の提案ではなかった。

 少し、本当に少し家を出ただけだ。敷地から一歩出ただけで、真澄は倒れ、動かなくなった。

 何が起こったのかわからない谷徳がもたついている間に大人達がどうやってわかったのかすぐに駆け付け、真澄を抱き上げ、家に戻した。

 「お前はなんてことをするんだ!逆水の次期当主を…殺すつもりだったのか!?」

 谷徳は親に何度も殴られ、意識が朦朧としながらも、訳のわからないこの状況を必死に理解しようとしていた。しかし、何度も殴られ、どれだけ責められようと、教えられてない以上、わかるはずもない。

 後にこれは逆水の家にある呪いなのだと教えられた。

 それは、自由を縛る呪い。真澄は、食べるものも、見るものも、触るものも、寝る時間も、やること全てが決まっている。それさえ守れば数少ない自由…言葉を発することなどが出来るようになる。逆に守らなければ、その呪いは本領を発揮し、人を蝕む、毒となるのだ。

 なんで教えてくれなかったのかと思わなくもなかったが…親が子にこんなこと教えられる訳がない。もう少し時がたってから教えるつまりだったのだろう。

 谷徳は無力感に苛まれつつも、どうしてこんな呪いがあるのかその原因を思い出す。

 初代逆水家の当主であり、過剰な呪いを躊躇いなく、次代に行った者。逆水…楊拳。

 この男がかけた呪いは強く、真澄は後遺症で喉が傷つけられ、喋ることが難しくなってしまった。

 呪いを行った者が呪いを解除しない限り、永久に存在する。それが呪いの最大にして最悪の特徴だ。

 谷徳はずっと楊拳を殴って無理矢理にでも呪いを解きたいと思っていた。それは楊拳が死んでいる以上、叶わぬ願いだとわかっていも、それでも。谷徳は思わずにはいられなかった。

 



 そのチャンスが今、来たのだ。ずっと願うのならばそれだけ。逆水家の呪いを解き、真澄に自由を与えてやりたかった。

 「逆水家の呪いを…今日、この日を持って終わらせる。あんたを倒すことでな。」

魔力刃を楊拳に近付き、振る。

 刃は楊拳に届く前に防がれた。魔力で物質をつくる、「逆質魔在」…逆水家の遺伝魔法によって。

 「面白い。…が。できると思っているのか?吉寺の。小僧ごときに。」

「やるさ。そのために、俺は生きてきたんだからな。」

楊拳は拳を握り、谷徳に降り下ろす。咄嗟にガードをしようとしたが、腕には逆質魔在による、ギロチンのような形状のものがあり、ガードをやめ、避ける。避けた瞬間、楊拳の拳が谷徳に向かってきたが、それに魔力刃をぶつけることで防ぎ、威力でお互い軽く飛ばされ、空中で体勢を整え着地する。

 「いいぞ。わかった。約束しようじゃないか。貴様が…貴様らが私に勝ったとき、呪いを解除してやろう。」

 「たりめぇだろ。負けたなら大人しくそうしろよ。」

 強気な谷徳の態度に笑い出す楊拳。

 「クク…勇ましいことだ。では、それを約束させていただこう。」

 言った瞬間、谷徳に近付き、正拳突きをしてきたが拳は逆質魔在による盾で防がれる。

 「………逆水の。次期当主か。」

楊拳は目線を動かし、真澄を見る。真澄はそれに対し目線を逸らさずジッと、楊拳を見ていた。

 「ふむ。そう言えば大家の者の指示であれば呪いは例外として降りかからないようにしていたんだったな。天鼓家の者による部活動だからこそ、呪いは降りかからないのか。」

 すぐに魔力刃を振るい、楊拳と距離を離し逆水に語りかける。

 「逆水…!お前…!?ここは俺が何とかするって言っただろ!だから…!」

 「私も……戦う。これは…この事は…逆水家の…問題……だから。」

 「…わかってないな。逆水家の問題は吉寺家の問題でもあるんだ。それに、逆水家は代々吉寺家が守ってきた。それを誇りとして吉寺家は生きてきたんだ。俺は今までなかなかその誇りと言うのを感じる時が来たことがなかった。それ相応のことが何もなかったからな。だからこれは俺にとって誇りを手にいれる戦いでもあるんだ。だから、逆水は手を出さず、見ていてくれないか?」

 「…前にも…言ったけど…あなたは…吉寺の…者である…以前に…谷徳って言う名前の…一人の…人間…なんだから。… 吉寺として…生きるんじゃなく…あなたはあなた…谷徳として…生きて…欲しいの…。」

 「だから…だからこう言ってんだろ…。」

「え?」

「おれは吉寺としてじゃなく!俺は俺として!谷徳として!お前を…逆水を…真澄を!守るっていってんだよ!」

 頑固な真澄はどれだけ理屈を持ってして言っても、重要な時、芯が強い彼女にとって本当に大事な時、退いてくれない。だから、そんな理屈…ではなく、本心で。彼女を説得しようとした。

 「だったら…私も…そうだよ。…逆水として…逆水家として…戦いたいんじゃなく…真澄…として。…あなたと…一緒に…戦いたいの。」

…真澄の意志は自分が思うより遥かに大きい。真澄のこの言葉は谷徳がそう確信するには十分すぎるものであると同時に…そんな事を思っててくれたのかと嬉しくなった。

 そうしていると歯車同士を合わせ高速で回転させたような音が聞こえた。

 楊拳を見ると頭上に巨大な円形の盾があり、その中心に穴が開いてあり、そこに魔力エネルギーが集中していた。

 「こちらの準備は完了したぞ…。そろそろいいかな?」

楊拳が腰を低くし、構えながら、谷徳と真澄を見ていた。

 谷徳は真澄を見て、言う。

 「本当に…それでいいんだな…。」

「うん。」

 「怪我するかもしれないぞ…。」

「うん。」

「今は部活っていう学生の行動範囲のことしてるから呪いは発揮してない。けど、呪いをかけたあいつに手を出せば発動してしまうかもしれない…。そん時どうなるかわからないんだぞ…。」

「うん。」

 「…ったく。ホント、頑固だよ。真澄は。」

 「あなたも。」

二人して、一緒にクスッと笑い、構える。

 真澄は谷徳が魔力刃を持っている右手に自分の左手を合わせるように置く。ちょうど、恋人繋ぎをするような形になる。

 真澄は瞬間、魔力を魔力刃に込めた。

 すると魔力刃が巨大化し、半透明だった色が金色に輝きだした。

 「…ほう。逆質魔在をその武器に流したか。魔力が比べ物にならぬほど濃くなっておる…。」

 楊拳は楽しそうに笑いながら腕を引き、拳を撃つ体勢をつくる。

 谷徳と真澄は一緒に腕をあげ魔力刃の刃先を上に向け、迎撃体勢をとる。

 数瞬の沈黙の後…。楊拳は拳を撃った。同時、込められていた魔力エネルギーが盾から放出され、真っ直ぐ光線となって谷徳と真澄を襲った。

 「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 二人は腕を降り下ろし、結果、魔力刃と光線はぶつかった。

 大きな音をたてながら刃と光線はぶつかりあう。

 長い時間、いや、時間にしたら数秒のことだろうが、本人たちからしたら長く感じるほどそのつせばりあいをしていたがやがてその拮抗は光線が弱まると共に一気に崩れ、魔力刃を降り下ろしきり、光線は真っ二つとなった。

 瞬間、目の前にドリルのようなものを逆質魔在で発動し、腕にそれを顕現していた楊拳がいた。

 楊拳がそれで突いてきたが、真澄の逆質魔在の盾で間一髪、目の前数センチで防ぐことができた。

 しかし、楊拳はこのチャンスを逃すまいと一気にドリルの回転のスピードをあげ、二人を倒そうとするドリルの音が鮮明に響いた。

 真澄は盾の硬度をあげると同時にその盾を中心に大きな魔方陣を出現させた。

 「今なら…!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

二人で魔力刃を構え、その盾を突いた。瞬間、魔力盾は魔力刃の金色…魔力を吸い込んだ後、刃自体も吸収していく。

 「………ぬ!?」

 楊拳は異変を感じ、避けようとするが…遅かった。

 その盾から魔力刃がさらに巨大化し、一本の魔力刃の形をした光線になり、それが…楊拳を飲み込んだ。




 谷徳は目が覚めた。

 どうやら大量の魔力を最後の一撃に一気に込めたため、倒れてしまっていたらしい。

 目が覚めても身体は動きそうになく、まだ少しの回復を要するようだった。

 後頭部にある、柔らかい感触が楊拳はどうなったのかと焦る気持ちを自然と落ち着かせる。

 しかし、こんな柔らかいだけでなく、いい香りがするもの、こんな場所にあったけと考えていると…

「あ。起きたんだね。大丈夫?」

真澄が顔を覗きこみながら心配してくる。

 同時、理解する。この柔らかい感触の正体はもしかして…!

 「真澄…!お前…!ひ…ひざまく…!?」

「うん。そうだけど…。膝枕ぐらいでそんなオーバーな…。」

「い…いや…!だっておま…!………って真澄…声が…。」

真澄はコクンと相槌をうつように頷くと首を動かし、あそこを見ろというジェスチャーをした。

 谷徳はその示された方向を見て…ゆっくりと立ち上がり、そこに近付いて行った。

 そこには楊拳が仰向けで倒れていた。楊拳は谷徳を確認すると、声をかけてきた。

 「…俺の敗けだ。約束通り呪いは解除しておいた。次代の逆水が証拠だろ。」

「…あんた、これからどうすんだよ。」

「…死人だからな。消えるとしよう。俺も十分長生きしたし…最後にかつて駄目だと思っていた吉寺のに負けるとは…クク…これだけでも生き返ってよかった。ありがとよ。」

「………そうか…。」

 「それじゃ、お礼も言えたことだし、そろそろ消えさせてもらおう。おっと…。ひとつ言っておくがこれは元々死んでいた奴が元に戻る。それだけの話だ。…だから心置きなく、消えさせてもらう。」

言って、谷徳が何か言い返そうとしたとき、楊拳の身体は粒子になって消えていった。

 見届け終わったとき、緊張が解けたのと、無理して立ち上がったのがきて、ガクンと膝から崩れ落ちそうになった。 

 そんな谷徳の身体を真澄が正面から抱いて支えることで倒れずにすんだ

 「大丈夫…。今はゆっくり休んでも…大丈夫だから…。」

真澄のその言葉に。心から落ちついてきた谷徳は、身を委ね、しばし目を瞑る。

 そして意識が睡眠に移る瞬間に、

 「谷徳。ありがとう。」

 そんな一言が耳に入る。

 助けられてよかった…という言葉は起きてから言おう。

 今は心の中で。真澄を少しでも救えたことに…。よかったと喜んでいよう。

 

 

 



 

 

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