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魔能対策部の過去

 放課後。伝えるべきことを伝えた後、部活はこの日は終了となり、解散した。

 が、家に帰った後秋葉は部室に忘れ物をしたことに気づき、部室に戻ってきていた。

 「…あった。」

机の上に置いてあったノートをとり、帰ろうとしたとき、

 「ありゃ?どしたのリーダー。忘れ物?」

 声をかけられた。

 振り向くと、ティードが部室のドアを開け、秋葉を見ていた。

 「ええ。そんなところよ。ティードはどうしたの?」

「私も忘れ物。っとと。あった。」

ティードは自分がいつも座ってる席に近づき、そこに置いてあった袋を持ち上げた。

 「?なにそれ?」

「お菓子の詰め合わせ。甘いもの食べたいなって思ったとき買ってたこと思い出してね。鞄の中探ったけどあら不思議。なかったんだよ。それで部室に忘れたんじゃないかとおもってね。それで来てみたらビンゴですよ。いやー。誰かにとられてなくて良かった良かった。」

 「この部に誰かの忘れ物を盗る人なんていないと思うけど?」

「いやー。私もそうだと信じたいものですが中身がお菓子だとわかれば、どこぞのあで始まって伸ばし棒で終わる名前で呼ばれてる人がやってしまいそうでねー。仲間を信じきれない私と疑わしいそのかたにショックをうけてしまいましたよ。」

「あ…確かに。」

ありそうな光景とひと悶着がセットになって浮かび、二人で顔を見合わせ、笑う。

 決戦が近いだろうに、こんな呑気なやり取りをしている自分達に余裕を感じてしまうが、実際にはどうなるのかわからない。ただ、何気ない幸せを感じるときというのは、日常からかけ離れた時、感じるものなのだろう。だからかいつもより思いっきり笑ってしまうのだ。

 「しかしビックリしたな。リーダーがいきなり、私達の目的は既に相手にバレてますっていったときは。」

何気ない会話を交わしていると、ティードが話題の一つとしてそう言った。

 だから何気なく、秋葉も返した。

 「そりゃあね…。そもそも、最初からバレてたし。」

「え?それってどういう…!?」

「どういうって…文字通り…かな。」

「文字通りって…。それにリーダー、ここで話すとタール達に丸聞こえでヤバイんじゃ…。ってそうか。バレてるから隠しても意味がないのか。」

「そこら辺も大丈夫よ。ここで話してもタール達には聞こえないから。」

 「え!?り…リーダーそれって…。」

「………。」

「…はぁ。ま、リーダーにはリーダーなりに考えがある…か。信じるよ。私がやるのはそれだけだ。ごちゃごちゃ考えたって私にはいいアイデアなんか思い付かないしさ。」

「…ありがとう。」

「良いってことよ。…でもさ。気になるのはなんでそこまでそいつ…タールを倒そうとするんだ?何かあったのか?」

 「………フフ…。」

ドがつくほど直球に聞いてくるティードに驚きつつも、その素直さに思わず笑顔が出てしまう。

 だからか。話そうと思ってなかったのに、つい話してしまった。秋葉は二年前、自分が一年生の時の話を始めた。




 「魔能対策部?」

「そうさ。それで俺達の能力を使って悪事を働く奴等を捕まえるのさ!」

リーブド魔法学院高等科の一年になりこれから多くの魔法を学べると共に想像もつかない、魔法の広い世界に入れる!っと浮き足だって入ったこの学院に、幼なじみの男、タールもいた。

 エスカレーター方式なだけあり、小、中学校も一緒で高校も一緒なんて普通のことだ。あまり驚くことでない。しかし、教室での休憩時間、部活の選択用紙を渡され、先生が退室してから前の席にいたタールが後ろを向き、その一言を言った時には驚いた。

 「どうしたのよ急に。あなた、そんなに正義感強かったっけ?」

「ああ!今まではそういう気持ちを隠していたが今、その気持ちが開花した!今こそ隠していた爪を見せるときだとな!」

「あっそ…。ところで部活何にする?」

 高等科になることで再び部活を選択する機会を与えられている。秋葉は小、中はそれぞれの科にある生徒会なるものに所属しており、部活には入ったことがなかった。今回のはいい機会かもしれない、部活に入ってみようかなと考えている。とはいっても生徒会の先輩に入ってこいと言われているのもあり、正直迷っているというのが本心だ。

 「私はまた生徒会に入ることになるかなって考えてるんだけど…。」

「無視すんな。おい。」

「そう言われても急にそんなワケわからん部活の説明されても困るわ。入る気ないし。」

「わかった。なら約束して欲しいことがある。」

「どこがわかってどこがならなのか教えてくんない?」

「俺が部員を…そうだな。五人秋葉以外に集めてやる!それで部ができたら秋葉…この部に入ってくれないか?」

「………。はぁ。わかったわ。できたら…ね。」

相変わらず話を聞かない奴…。ここは素直にそう答えて流すのが得策ね。と思いながらも、もし、そんな部活が本当にできたとしたら…少し…少しだけだけど…楽しそうだと思ったのは本心だ。

 



 思った以上に早くその五人というのは集まった。

 約束した手前、断ることはできず、男三人女四人メンバーの内の一人として入ることになった秋葉。

 始まったのは思ったものより遥かに充実した毎日だった。

 学年が違えど、集まったいろんな人達と一緒に人を悪人から助ける。…なんて正義感が強くなければ馬鹿にしてからかってしまいそうなそんな部に所属しているからか、優しく、話しやすく、いつも楽しくそれでいて、人を助けた時にお礼を言葉だけでもしてもらえることは明日への思いに繋がった。

 そんなある日メンバーの内の一人の男がタールに聞いた。

 「どうしてこの部を作ろうと思ったんだ?」

「正義感だよ。人を助けたいと心の底から思ったからさ。」

その答えはタールらしいと思ったが、聞きたいことはまだあったようだ。

 「お前らしいな。けどまだ気になることあるんだよ。」

「なんだ?遠慮なく聞いてくれよ。」

「この世界間転送装置や、戦うときに貼ってるあの結界、そんでこの膨大な量の資料と依頼。これは『どこから』手に入れたんだ?いや…手に入れてるんだ?」

 「…なんだよその言い方。」

「なんでイラッとしてるんだよ…。純粋に疑問に思ったから聞いてるだけだ。」

「…管理局だよ。大全管理局。そこから貸してもらったり、忙しくて手につけられない依頼とかこちらにまわしてもらったりとかしてるんだよ。」

「「えぇ!?」」

確かにメンバー皆、心の片隅に疑問に思う声があったのだが、実際、どうしてかは聞いていなかった。

 どうしてか聞いたら…これだ。

 管理局が手伝ってくれているとは思わず、今まで過ごしていたが、考えてもみれば悪事を働いている人間の情報は管理局に最も集まりやすい。

 それもそうか。という納得と同時、タールと管理局はどうやって、どうして関わっているのか。また、今後管理局が協力してくれいるという事実にプレッシャーを感じずにはいられないなとかいろんな考えがメンバーの頭を埋めた。

 「ほらな。こうなるから言わなかったんだよ。そりゃあ、管理局協力とか聞いたらプレッシャーになるわなぁ。」

おどけながら言うタールにいや、管理局協力とかむしろ最初から言ってほしかったなどなどの意見がとび、少し重たかった空気がいつもの雰囲気に戻ってきていた。

 だから聞けなかった。…聞きたくなかったのかもしれない。管理局とタールはどうやって関わったんだ?そんなに深い関係性になんでなれたんだ?こんなことを聞けば…それこそ、何かが…終わってしまいそうで…。

 いつの日かこんな幸せは…壊れてしまうとわかっていても。聞けなかったのだ。





 それから半年がたった。

 その日もいつもと同じ。学校に来て、ダルいとか言いながら授業を受けて、放課後になって部活の時間。

 秋葉はいつものように魔能対策部の部室に行った。

 その部室の扉を開く前、嫌な予感がしていた。今までのが一気に崩れるような何かが待っている気がした。

 それでも、だからこそ、ここで逃げてはいけない気がした。

 この日が今までの幸せを壊す終わりの日だとわかっていても。きっと扉を開けたのだろう。

 意を決して扉を開くとメンバー皆、いつものように雑談を交じりながら休憩をしていた。

 授業終わりにいきなり依頼受けて出撃じゃキツイなという意見が多く、仕事前にはこうして休憩している人が多かった。

 皆、秋葉を見て、「よう。来るの早いな。今日は生徒会ないのか。」とか「お疲れ秋葉。と言ってもこれから仕事だからお疲れとかおかしいか。」とかそんな、いつもと同じ、何気ない声をかけてくる。

 そんないつもの風景を前に秋葉は少し安堵した。

 気のせいだったのかな。そう思いながら声をかけてきた皆にいつものように返して席に座って休憩をしようとしたとき、タールが席から立ち上がりメンバー皆の方を見て、言った。

 「皆、揃ったようだな。…実は今回、大掛かりな依頼が来ている。これは…皆で協力してやるのが最も安全かつ、得策だと判断したほどのものだ。」

 そのいつにないタールの鬼気迫る声を聞き、空気が少し緊張に包まれた。

 秋葉ももしかしたら嫌な予感はこれなのかもしれないと考え、話を聞くのに集中する。

 「その依頼は…管理局内での裏切り者を倒してくれというものだ。」

 その言葉を聞いて一瞬疑問符が浮かんだがすぐにその疑問をメンバーの男が口にした。

「は?んなもん、管理局側が自分等でやればいいだろう。」

「最もな意見だな。だが冷静に考えてもみろ。管理局内での裏切り者…これはつまり何らかの反管理局組織が関与しているということ。これに管理局が動けばメディアに大々的に放送されてしまう。そうなれば管理局の信頼はがた落ちだ。そうならんよう、影で協力してる俺らに動いてほしいってことだよ。」

「…だからって…学生にそんな…。」

「元々、学生の行動の範囲に収まらん、部活内容だろ。それにいつも管理局には助けられているんだ。たまにはこっちが助けてあげようじゃないか。」

「「………。」」

 タールのその一言が決め手になり、その依頼を引き受けることになった。

 この時にちゃんと断っておけばとか。いろいろ後になって考えるけど…今回のことでも理解したが用意周到なこの男によって、今回のをうまく避けれたとしてもいつか終わる日が来たのだろう。

 そう。幸せが終わる日が思った以上に早かった。今回のはそういう話なのだ。

 




 連れてこられたのは岩山が所々に点在した場所だった。

 「ここが依頼された場所…嫌に殺風景ね。」

メンバーの一人の女の子が言うと、タールはそうだな。けど目的の場所はあそこだ。と言って指差した。

 そこは白い施設…のようなものだった。魔力で結界をはっているのか半透明になっているが普段からそういう「隠す」ことを多くする犯罪者相手にしてきているため、なんら問題なく、見つけることができた。目が鍛えられているとでも言うべきか。

 「あそこね…。で、どうする?作戦通り決行ってことでオーケイ?」

 タールはそれにうなずき、言う。

「オーケイだ。確認しよう。指定した二人はひとつのチームとして行動する。各チームは指定した方向からそれぞれ施設に入る。んで、俺のチームは正面突破での撹乱だ。他のチームは入ってからは内部図で印してる場所に向かってくれ。そこにターゲットがいる。そして万が一のことを考え…捕獲、拘束力が高い秋葉は外で待機。魔力で足場を作ることで施設上空から見下ろす形で監視し、逃げ出した奴がいたら直ちに拘束だ。んで、魔力無線は常に開いておくこと。連絡はなるべく取り合っていくぞ。その通信の中継も頼んだぞ。秋葉。けど、最悪、魔力通信の妨害がある場合がある。そん時は…そん時だ。各々の無事を祈ってくれ。」

「いい加減だなぁ。」

「許せ。これもお前らを信用してるからこそだ。んじゃ…行くぞ。」

言われた通り、男女二人づつチームとなり散って施設に入っていく。

 「あ…!」

としたとき秋葉が声をだし皆の足を止めた。

 「?どうしたの秋葉。」

 「あ…その……………。気をつけて…ね…。」

 秋葉の言葉を聞いた皆はおう!と元気よく返事をしてなかに入っていく。

 それを確認した秋葉は少し戸惑いながらも上空に魔力で飛び、待機する。と、無線が入ってきた。

 『こちらチーム二。施せ………つ…入っ……』

 「………。」

予想通りと言えば予想通り。けれども心配は連絡が入らない分、大きくなる。

 外は恐ろしく静かだ。魔力コーティングで防音性が高い施設らしく外には何の音も聞こえない。何が施設内で起こっているのか、完全にわからないのだ。

 「………大丈夫かな………。」

どれくらい経ったころだろうか。ジッと上空から施設を見ていると無線が突然入ってきた。

 驚きながらも無線が入ってくるということは無事なのだと理解し、少しホッとする。

ジジジ…と音がし、相変わらず聞こえにくさがあるものの秋葉は集中して声を拾う。

 しかし、その内容はどう考えても無事とは相反するものだった。

 『あ……は…に…げ………て。』

 音の聞こえにくさだけではない。通信している本人の弱々しい声が相まって何をいっているのかが聞こえにくかったが…。

 その内容は…間違いなく…秋葉に逃げろといっているものだった。

 それだけではない。本人は明らかに何らかの深手をおい、ボロボロになっていることがわかるほどの声の弱々しさだった。

 「皆………!!!」

すぐに迷うことなく魔力浮遊を解き、高速で落ち、魔力をクッションのようにして着地する。

 正面の扉からすぐに入り、入りくんだ施設内を駆け回り、仲間を探す。

 しばらく探していると突然、ペチャッっとした感触がした。

 え?と思いながら足元を見ると赤い液体が足元に広がっていた。

 いや、足元だけではない。通路の先を見ると壁を含め、所々に血が大量に流れていた。

 「………!」

通路の先を抜けると広い部屋にでた。

 そこには四肢や首、肉体がその部屋に散るようにあった。

 「………あ…え?…。」

 呆然と呟くことしかできず、その肉塊を見ていると聞き覚えのある声が聞こえた。

 「おい。外で待っとけっていったろ?全く…。」

その声はタールのものだった。無事であることにホッとしつつ、これがどういう状況なのか聞こうとし、振り向き…出そうとした声がでなかった。

 「………ター………ル?…」

 「おう。そうだぞ。見てわかんだろ。」

タールの手には…見知った男の生首があった。その髪を引っ張るようにして持っている。

 「…それは………なに?」

「これか?おいおい大丈夫かよ秋葉。魔能対策部のメンバーの、仲間の顔を忘れっちまったのか?酷い奴だなぁ。」

「あなたの…仲間でしょ………。なのに………どうして………?」

「仲間とか関係あるかって。殺そうと思ったから殺した。そんだけだ。何か文句あるか?」

タールの言葉を聞き、焦りながらも、動揺しながらも、冷静な自分が状況を整理していた。

 この部屋に出る前まで施設をまわっていたが…何もなかった。驚くほどに無機質な風景が続いているだけで、人一人すらいなかったのだ。

 まさかと考える。殺そうと思った…この言葉からタールは魔能対策部のメンバーを殺す意思を持って殺しているのがわかる。操られている訳でもなく、何か起こって暴走している訳でもなく…。

 「他の………皆は……どこにいるの?」

「察しがいい秋葉らしくないな。分かんないなら教えてやるけど。皆ならこの部屋中に散らばってるぞ。まぁ、誰か分かんないと思うけどな。原型とどめてないし。」

確信した。この男は何らかの理由を持ち、自分で、自分の意思で、明確すぎる殺意を持って、殺したのだ。

 「ってかさ。仲間なわけないじゃん、こんな汚い…」

手に持っていた男の生首を落とした後…踏み潰し、辺りに肉がとんだ。

 「肉塊がよぉ!!!洞察力鈍ってたのかなかったのか…そこらへん少々残念だな秋葉ぁ!!!」

言い終った瞬間、タールは鎖に絡まれ壁にぶつけられた。

 「………。」

秋葉の魔力でできた鎖は、確実にタールを捕らえている。

 それを確認した秋葉はタールの方を見つつ、思考する。

 タールが殺意を持って殺すためにここにメンバー皆を集めたのはわかった。嫌な予感は的中したのだ。それも考えてなかった最悪の形で。最悪とは続くものだ。まだ、何か違和感を感じる。

 しばらく考え、違和感の正体がわかった。この施設だ。

 全管理局からの依頼…というのが嘘だと考えればこの施設はどうやって用意したのだろうか。タールが何らかの大企業の息子…というのも聞いたことがないし、どこかの家の御曹司というのも聞いたことがない。

 仮に学校内で、それらの事情を隠している…のだとしても、これだけ大きな施設を用意できるほどのものはそうそう隠しきれない。少なくとも、真偽抜きにした噂が流れているはずだ。しかし、そんな噂は聞いたことがない。それに、秋葉は名家天鼓家の人間だ。どんなに隠していても何処かで聞いたことくらいはあるだろう。しかし、それもない。

 ならどうやって…。

 しかし、その思考はタールが動くことで一旦途切ることなる。

 魔力の鎖の感覚が急になくなったのだ。

 見ると、タールが自分を捕らえている鎖を力で引きちぎっている。

 「あなたに聞きたいんだけど…。この施設はどうやって用意したの?」

 駄目元で、聞いてみる。答え方によってはヒントを得られるかもしれないと考えて。

 「いきなり攻撃していきなり質問とはね…。常識なくないか?まぁ、いいか。さて、その答えだが…答えはシンプル。管理局に借りたからでぇーす。」

「………は?」

全く予想だにしていない答えだが…考えてみれば可能性はなくはないものだ。突拍子がなさすぎるから、考えてなかっただけで…。

 つまり、タールの目的や、思考を知っていながら…管理局が協力したというものだ。

 「俺の仲間そろそろ、ぶっ殺そうと思ってます。こうこうこうして殺そうと思います。だから大きな俺の仲間の処刑場くださいって言ったらあっけなくオーケイでたぞ。元々その為に協力してくれてたし、そろそろ本番のエンターテイメントを提供しようと思ってな。だから、ちゃんとここに来る前に言っただろ。いつも世話になってるんだから、たまには返してやろうって。」

「………。」

「あれ?思ったより動揺してないな。予想の内だったか?俺的には壮大なネタバラシのつもりだったけど、そうでもなかった?」

「…んなわけないでしょ。ただ…。」

いろいろ衝撃的なことがありすぎて一周まわって落ち着いているというのもある。それらの衝撃的なことは後で考える。今、考えて動揺してたらそれは隙になる。だから…今は…

 「あなたを倒すことを考えているだよ。魔能対策部としてね。」

「…ククク………。これだからお前はメインディッシュなんだ…。他の奴等は大したことはないが、お前は能力含め、一番油断ならんからな。だから外で一人で待機と言ったんだ。先程の俺をすぐ攻撃した思いきりのよさ含め、最高だよ!秋葉!そのメインディッシュ…いただくのは勿体ないほどだ!」

言うと、タールは腕に魔力を込め、その魔力が渦のようになり、秋葉の方に向け、拳を振るった。

 すると、かまいたちのようなものが辺りを切り刻みながらに突き進み、それが秋葉に向かって来る。

 秋葉は鎖を幾重にも重ね、盾のようにすることで衝撃を防いだ。

 タールは身体強化を応用し、一点に込めた魔力エネルギーを放つことを得意としている。

 身体強化魔法により、一点に溜めたエネルギーを放出する…ということは一点に溜まった分、エネルギーが暴走するかのようにとどまることになる。そのエネルギー放出する際を最も魔力エネルギーを扱いやすくする形である螺旋をイメージし、放つことで扱いやすく、かつ、威力が大きいものとして使うことができる。

 螺旋は魔力を一点に集め、拡散を防ぐことによって扱いやすく、魔力の無駄を極力減らすことができる。また、エネルギーが螺旋により循環を起こすことで放った際の方向、威力、形の自由性をあげることにも成功している。これを魔導学術では『波動』と呼ぶ。

 なんとかタールの攻撃を防ぎながら鎖を出す際にその元になっている空間、ワープホールを出し、そこから鎖をタールに向けて放つ。

 「…ッチ!」

タールは波動による攻撃を一旦やめ、上空に跳ぶことで避けるが、避けた先には大量のワープホールが展開され、鎖が顕現し、一気にタールに集い、捕らえる。

 秋葉はタールの方に向け拳を握る動作をする。

 鎖はタールを中心に球体をつくり、一瞬、縮んだ後、爆発した。

 体から黒い煙をあげながら落ちているタールを再び鎖で捕らえる。

 「まだやる?」

「容赦…なすぎるだろ…お前………ためらいとか……ないのかよ…。」

「あなたに言われたくないわね。それに…ほとんど魔力ないんでしょ。」

 「…ククク…お見通しか…お前には。その通りだよ。正直、メンバーの奴等が予想以上に強かった。お前を最後にって考えてたけど、勝てるとは思ってなかった。どれくらい強いのかを確認がてら拳を振るったにすぎんよ。」

「…どうして、殺したの?皆を。」

「殺したかったからだよ。人をさ。単純にそれだけさ。平和ってーのが嫌でね。戦争ってのを体験したかったんだが、この平和のなかじゃ、それはできない。だから…!人殺しをしようと思ったのさ。」

 「…あなたの狙いは何なの?」

「混乱だよ。「世界」のな。今回のはその実験みたいなもの。仲間が仲間を殺す…なんていい具合に混乱できるだろ?こういう経験を地道に重ねていってやがて世界規模に起こすのが俺の夢なんだ。」

「…歪んでるわね。」

「俺のせいにすんなって。親がいないこの人生のせいさ。」

「……親…いなかったの?」

「あぁ。俺が産まれて、一年位してから、借金でね。自殺だよ。愛情さえ親からの愛情さえ貰ってればこんなんにならんかったのによぉ!全く。キツイ人生だ。」

秋葉は歯ぎしりをし、強くタールを見る。

 辛い人生だったのだろう。だとしても!人を殺すのは間違っている。しかもこんな凄惨に。許される訳がない!

 「…タール……あなたは…!だからといって…!」

 「嘘に決まってんだろ。ってことで時間稼ぎは終わりかな。」

タールがそう言った瞬間、眩しい光と耳をつんざく音がし、それが終わったときには…何もなくなっていた。施設も、タールも。死体も。

 ただ、岩山しかない殺風景のなか、立ち尽くすしかなかった。

 


 

 

 

  



 




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