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第七章 諸行無常

僕は少し警戒しながら、その裁判官の動向を窺っていた。


すると、どうやら今から妻側の弁護士とウェブで繋ぎ、双方が合意していることを確認した上で手続きを進めるらしい。


ほどなくして画面が繋がる。


妻本人の姿はない。


向こう側に居るのは弁護士だけだった。


裁判官が用意された文面を読み上げる。


婚姻費用の金額。


支払い方法。


その他の確認事項。


そして双方に確認が行われる。


僕は同意する旨を伝えた。


向こうも同様だった。


それで終わりだった。


本当に、それだけだった。


時間にして十分も掛かっていないと思う。


確認が終わると、裁判官は立ち上がった。


何か重々しい言葉がある訳でもない。


今後について語る訳でもない。


ただ、ごく自然に席を立ち、そのまま部屋を出て行った。


まるでトイレにでも行くかのような気軽さだった。


そして、それで全て終わった。


これで決まり。


その瞬間、ふと思った。


今までの数か月は何だったのだろう。


何度も調停に通い、


何度も待合室で待ち、


何度も同じ話を繰り返し、


ようやく辿り着いた結論が、


たった十分にも満たない時間で決まってしまった。


なんだか少し不思議な気持ちだった。


諸行無常。


そんな言葉が頭をよぎった。

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