終章 決戦は金曜日
週末に調停を控え、最近、自分に少し違和感がある気がする。
前までは、薬を飲めば眠れた。
今は薬を飲んでも、なかなか寝付けなくなってきた。
心療内科の先生は、「しばらく様子を見ましょう」と言っていた。
それと同時に、「お酒はやめてください」とも言われた。
それは僕にとって、「息をするな」と言われているのと同じだった。
「わかりました」と答えたが、内心では無理だと確信していた。
――酒をやめられる人は、こんなところに来ないよ。
職場でも、みんなが気を使ってくれる。
少し壊れかけている僕にも、優しく接してくれている。
今日、「閃輝暗点」になった。
目の前がチカチカしたり、キラキラしたりする症状のことだ。
あまりに綺麗だったから、
思わず、「キラキラしてる……」と呟いた。
何もない空間を見つめながら。
隣で仕事をしていた後輩が、「えっ?」と僕の方を見ていた。
無理もない。
焦点の合っていない目で、何もないところを見つめながら、そんなことを呟く人間がいたら、誰だって驚く。
ついに壊れたか、と。
だからだろうか。
少しでも危険が伴う作業のときは、外してもらえるようになった。
――こいつは、何をしでかすかわからない。
そう思われているのかもしれない。
正直、賢明な判断だと思う。
僕が上司でも、おそらく同じ事をする。
事故が起きてからでは遅いのだから。
ここは、いい職場だ。
僕という人間の状態を、しっかり見てもらえている。
普通なら、もっと雑に扱われてもおかしくないと思う。
それでもここは、違う。
元気になる手助けをしてくれている。
回復するまで、待ってくれている。
周りに助けられているから、頑張れていると思う。
週末は調停だ。
気が重い。
まさに――
決戦は、金曜日だ。
あの歌のように、明るい戦いにはならないかもしれない。
それでも、僕には味方がいる。
いよいよ始まる。
僕の中では、もうあの曲が流れている。
「決戦は金曜日」だ。




