第12話 新しい提案
洗濯物もすべて片付き、静けさが戻ったリビングで、透子はそっと姿勢を正した。
「では、これからのご利用について、少しご相談させていただけますか?」
柚月は、ソファーの端にちょこんと腰掛けたまま、ゆっくりと顔を上げた。その目はまだわずかに不安を帯びていたが、以前のような強張りはない。
「はい」
かすかな返事に、透子は頷いてタブレットを開く。画面には、現在のサービス利用履歴と今後の提案プランが表示されている。
「今回は初回含めて二回目のご利用でしたが、今後も継続してお手伝いさせていただく場合、週一回の定期訪問という形が一番安定します。清掃に加え、洗濯や軽い買い出しなども含めて、日常的なサポートが可能です」
柚月は、膝の上で手を握りしめたまま小さく頷いた。
「週一回、それで、お願いします」
その一言に、透子はわずかに表情を和らげた。決意がこもった言葉だった。
「ありがとうございます。では、来週以降は毎週同じ曜日・時間帯に訪問という形でよろしいですか?ご希望の曜日や時間はありますか?」
「最初に来てもらった火曜日がいいです。前と同じ午後1時で」
「かしこまりました」
タブレットに入力を済ませたあと、透子は画面を閉じた。
「それから、一つご提案がございます」
そう言って、透子はバッグからメモを取り出し、そこに簡単な献立案を記した。
「先ほど、ゴミの中にたくさんの宅配容器があったのが気になりました。栄養の偏りやコスト面もございますので、もしよろしければ、簡単な作り置きのご飯をご提案させていただければと」
柚月の目が、わずかに大きく開かれる。
「作り置き?」
「はい。調理道具や食材の確認は必要ですが、週に一度、保存が効くおかずを数種類まとめてお作りして、冷蔵・冷凍保存する形です。宅配ほど手軽ではありませんが、少しでも自炊に近い形で、体調の維持にも繋がるかと思いまして」
柚月は、言葉を失ったように黙り込んだ。そしてほんの少し、口元が動く。
「お願いします」
掠れた声だったが、はっきりとした意志がこもっていた。
「もちろんです。次回の訪問時に、キッチンを使わせていただきます。鍋やフライパンは新品で揃っているようでしたが、保存容器が見当たらなかったので、次回こちらでいくつかお持ちいたしますね」
「はい。お願いします」
それは、以前よりもはっきりとした声音だった。透子は、笑顔を抑えきれずに微笑む。
「こちらこそ、ありがとうございます。では、来週の火曜日、午後一時にお伺いしますね」
柚月は頷き、また少しだけ、ソファーの端で姿勢を正した。
初対面のときの彼女とはまるで違う、前を向こうとする小さな変化だった。




