54話:王立魔法騎士学園へ出発
とうとう王立魔法騎士学園に行く日となった。学園まで、およそ馬車で3日間。それまでの護衛としてパパと数人の部下も一緒に同行する。
アテナと世話役のメイドが一緒に馬車に乗り、いざ学園へ出発だ。
「ラピス頑張るのよ」
「ラピス様ならきっと大丈夫です。お気を付けて」
ママとアイル先生が、お見送りをするためだけに王城まで来てくれた。
一応、名目上テストはあるが、それは入学テストではなく、クラス分けのためのテストで実技と知識を問わられる。
クラスのランクは、Sが1番上でDが1番下となっていて、魔法科と騎士科に別れ、そして5年前から錬金科が発足された。
その錬金科の先生の1人にカイト様がいる。毎日ではないが、錬金術を教えてると聞いている。
錬金科が発足されて、錬金術の見方が変わったと感じている。
最低職業という地位にいた錬金術師は、戦える生産職として騎士や魔法使いと同等以上の扱いを受ける者が出始めた。
自分で材料を集め、魔物と戦うなんて日常茶飯事となりつつある。それもカイト様の教え子の頑張りの成果の影響でもある。
そんな話を聞くと、早くカイト様に会いたくなってくる。まぁ学園に行けば、何処かで会えるだろう。
王立魔法騎士学園は、4年生で最初の1年はメインの学科を中心に、2年からは選択科目で騎士や錬金術を学べるが、7割近くがメインの学科のみ学ぶ事が多い。
「今日は、ここで夜営を致します」
王家が持つ馬車は、外見と中身の広さが食い違っている。【空間拡張】という魔法が付与されているらしく、そのまま食事や睡眠を馬車の中で行えられる。
もちろん、お風呂も付いている。いくら夜営するとはいえ、王族は常に身嗜みを整える必要があるため最低でも水浴びや拭く行為が必要だ。
だが、やはりキツイものがある。冒険者や傭兵とかならいざ知らず、年頃でしかも王族の娘が身体を拭くだけというのは可哀想である。
「アテナ、お風呂入ろ?」
「うん、馬車なのにお風呂があるなんて不思議」
この馬車を作るのに掛かった金額は、金貨100枚だそうだ。相場は、もっとしそうだが発明したのがカイト様らしい。
ラピスに聞いてみたが、空間魔法を扱える者が片手の指程度しかおらず、おそらくカイト様しか作れないだろうのこと。
「うわぁ、本当に馬車の中なの?」
「素敵」
まるでお城にいるみたいな浴場。立派な湯船が鎮座し、最低でも5人は入れるであろう広さがある。
「湯船に、もうお湯が張ってある」
「お嬢様、私達が入りたいタイミングで自動的に出ると説明がありました」
世話役のメイド………ルシア、一応武道の心得があり職業としては暗殺者となっている。暗殺者は、斥候系職業で盗賊の上位職業となっている。
別に暗殺者というだけで悪者ではない。俊敏な身のこなしや気配を消す隠蔽に長けている。
「お嬢様ラピス様、お手伝いさせて頂きます」
前世が男だった故に着替えを手伝って貰うのは慣れない。それにアテナも成長して身体付きが、まだ子供ながら女性らしく出るところは出て、引っ込んでるところは引っ込んでる。
それ故に、まだ幼い時よりも全裸を直視し難くなっているのが現状だが、アテナから過剰にスキンシップとして触って来るので、余計に困っている。
だけど、困っているとは言えない。何故なら、アテナが悲しむ顔を見たくないからだ。
「うわぁ、気持ちいい」
「アテナ、走ったら転ぶよ」
「だって、こんな素敵なお風呂に入れるなんて夢のやうじゃない」
それは分かるけど、後ろを振り向くとルシアが苦笑いで困っている。下手に注意したらクビが飛びかねないからだ。
「アテナ、先ず身体を洗ってからだよ」
「はーい」
『ありがとうございます』と小声でルシアが、私(俺)にお礼を言ってきた。
アテナが椅子に座ると、ルシアが身体を洗う。私(俺)は自分で洗っても良いのだが、暗黙のルールとして順番を待っている。
「ラピス様、失礼致します」
やはり、他人に身体を洗って貰うのは慣れない。幼い頃は許容範囲であったが、年頃になると気恥ずさが段々と勝ってくる。
「ふぅ、気持ち良かった」
「アテナ、髪を乾かすね」
風魔法と炎魔法で温風を作り、濡れた髪を乾かす。地味にすごい技術を使っているのにラピスは気づいてない。
「おーい、飯の用意が出来たぞ」
パパが呼んでる。食事が出来たみたいだ。夜営の時は硬い黒パンと干し肉と相場が決まっているが、今回は王族のアテナがいるという事で豪華に違いない。




