ベルの必殺技?
今回はベル視点で話です。
「……はぁ。」
私は何度目か解らない溜め息を吐き、後ろを向く。
そこには明らかに苛立っているメルナがいた。
「メルナ、あの子達のためにお姉ちゃんが時間を取られるのがそんなに嫌なの?」
ガンッ!!……
後ろで壁が思いっきり叩かれたような音がする。
こういう時は思いっきり発散させないと、後々あの子達に手を出しかねない。
巷ではクールビューティーなんて裏で呼ばれているのに、本当はこんな子供みたいなんてねぇ。
「…図星ね…
メルナ、それみっともないから止めなさい。良い年こいて小さい子供みたいな嫉妬。
確かに気持ちは解らなくもないけど、あの子はお姉ちゃんの故郷の人なんだから、何かあったらタダじゃあ済まないって事覚えておきなさいよ。
これは一応姉である私からの忠告。」
メルナはじっと私を見つめると、顔を反らす。
反論してこないのなら一応は納得してくれたようだ。
やっぱりメルナには“姉„というワードに弱いなぁ。数ヶ月先に生まれたのをこんなに嬉しいと思った事は無い。
「それに、今から暴れられるんだから良いじゃない。」
「ベル、見つけた。数は合計十人。二グループに別れて手間の部屋と奥の部屋で休んでて、奥の部屋に通じる道は二つ。
一つが手前の部屋からの行くルートで、二つ目がさっき通った十字路にある。
私は奥の部屋に行くから、ベルは手前の部屋お願い。
……あと、人の獲物横取りしないでよ。」
「それはこっちのセリフ。」
お姉ちゃんから任された仕事を初めてから二十分後、私とメルナは今回の目標である転移者を守るために派遣された騎士は悠長に食事を取っていた。
「全く、なんで俺達があんなケツの青いガキどもを守らなきゃいけねぇんだよ!」
「よせよ、あんなガキどもでもスキル持ってるらしいし、今回の任務は大した事無いのに成功すれば金と休暇が貰えるんだ。」
「確かにそう考えると、一応納得できるな。」
男達は私達に全く気づかず、大声で話す。
「…何てバカな連中…
ここは階層が浅いから余裕だとでも思っているのか?…」
メルナは呆れたようにそう言う。
実際こいつらは油断しきってる上に、そんな大声を出しているから私達に見つかるんだよ。
「メルナ、こいつらさっさと片付けるわよ。」
「解った。」
メルナは魔法収納袋からマナサーベルを取り出し、私は六つのマナライフルの砲身を束にしたような物と、黒い箱にグリップが二つついた物と水筒のような筒を出して、組み立てる。
「それってベルが去年の終わり位からいじってた奴?」
メルナは組み立てている作業を眺めながらそう言う。
「そう。お姉ちゃんが昔試作したっていう“ガトリング砲„っていう武器で、威力は低いけど、沢山の弾が発射できる武器なんだよ。
試しに前使った事あったけど、中々気分爽快だったよ。」
私は全長五十センチほどのガトリング砲の両グリップを握る。
「さて、準備が整ったから殺りますか。
あとメルナ、私の正面には絶対に立たないでね。ボロボロに絶対なるから。」
「それじゃあ私は、もう片方のグループを襲ってくる。」
私はメルナに忠告をした後に、堂々と大広間の方に入ると、男達の視線がこちらに向く。
「…あ?お前らここは今使ってるからどっか行きな。」
「もしかして俺達とイイコトでもしたいのか?」
男達は見下すような目線や汚ならしい目線に同情するような目線など人それぞれだった。
「生憎だが嬢ちゃんは、見てはいけない物を見てしまった。」
そんな中、一人の鎧を着た男が私の目の前に立ちふさがり、剣を抜いて脅す。
「ひいっ!どうかお許しを!……なんて言うと思った?」
私は男達を少しからかったあと、ガトリング砲を目の前にいる男に向ける。
「あ?」
男は眉を曲げて困惑する。
「それじゃあサヨウナラ。」
私は引き金を引くと、ガトリング砲身の砲身が回り初めると共に、小さい赤い弾が男の股関節辺りから腹部に飛んで行く。
「うぐうぅぅうッッ!」
男は初めの内は悶絶するような声をあげたが、二秒もすれば弾は貫通し男は倒れる。
「はぁッ?!」
「な、何が……」
残った男達は何が起きているのかさっぱり解らないらしく、反撃する訳でも、防御をする訳でもなく突っ立っている。
でも、そんなのは関係なく私は容赦なくガトリング砲を撃ち初める。
ガガガガガガガガ!!
砲身からは先ほどのように大量の弾が男達を襲い初める。
「ひゃっほーい!天誅!
お姉ちゃんとの時間を奪った罰、ここで受けて貰うわよ!」
私はガトリング砲をまんべんなく掃射する。
「ウアァァァァァ!!」
「ダ、だずけでくれぇ!!」
「目、目がぁぁぁ!!」
部屋は数十秒前の呑気さはどこかに行き、地獄絵図が広がっていた。
私は自分でも中々ヤバい発言をしているのを自覚しながらも、撃ち続ける。
部屋を掃射し始めて三十秒も経てば、部屋の中は血の跡は無いものの、穴だらけの死体が沢山転がっているなんとも恐ろしい光景が広がっていた。
「ウ……うぅゥ……」
「あれ?生き残っていたのが居たんだ。」
私は死体の一角にまだ意識のある奴がいるらしく、声のする方に行くと、身体中穴が空いているが心臓部や脳には当たっていないのが一人だけいた。
「あ“、あ……くま…」
「せいぜい来世に期待するんだね。」
私はガトリング砲を男に浴びせるように狙い撃つ。
生き残った男の体は頭を吹き飛ばされて死んだ。
「…さて、悪魔はお姉ちゃんの元へ帰りますか。」
私はメルナのいる部屋に入ると、腕や足、首が転がっているという猟奇殺人の事件現場が広がっている。
「メルナ、帰るわよ。」
「解った。」
そして、私とメルナは地獄と化した部屋を後にした。
その後、とある冒険者グループがこの地獄の惨状を見つけてしまい、新種の凶悪な魔物がこのダンジョンに現れるというのが噂されるのは少し先の話。




