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クラスメイトは『大切な人を救うために死に戻る能力者』  作者: 破れ綴じ
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[23:07] 折れるのはどちら?

「……ねえ。答えてよ。冗談だって言うなら、今すぐ言って」


 マズイ。

 何がまずいって、この目だ。いつも僕に話しかけてくれるような感じじゃない。

 冗談だって言って事態が解決するなら僕だってそう言いたいさ。本人もこう言ってくれているし、それで話が終わるなら全力で乗る準備があるんだが……どう見ても「冗談です」が通用するような雰囲気じゃない。


 どうしてこんな場所に? いつからつけてきていた? 何の目的があってこんなことを? 

 普通に考えて桐島ミオが僕と辻セイラの二人を尾行する理由なんて存在しないはずだ。彼女は来るイブ当日のために、練習用の相手を探す必要がある訳で、知的好奇心から僕達を追いかけようだなんて無駄足を踏んでいる時間は無いはず。

 もしかすると僕達はずっと疑われていたのか? 僕と辻セイラが気づいていないだけで、実はとっくに死に戻りのことがバレていた可能性が? 


「ねぇ、セイラ」


「その、違うのミオ、これは、そうじゃなくて、ただ……」


「なんで……? なんでいつもみたくすぐ答えてくれないの? いつも通りパパっと教えてくれたら済む話じゃん……?」


「ちが、違くて……」


 おお。

 なんだか横恋慕の釈明をしているみたいな辻セイラ……。

 ……いやそれどころじゃない。

 今の状況は彼女にとって一番避けたい場面に違いなかったんだ。


 桐島ミオは辻セイラの『大切な人』だ。

 ここで真実を話してしまえば「辻セイラが自分のせいでループに囚われた過去が存在すること」を明示してしまう。一つでも言葉を間違えれば関係性ごと一気に壊れかねないし、それがこの二人にどれだけ影響するか……軽く想像しただけでも碌な未来にならないことは明白だ。


 普段の辻セイラなら多少のトラブルぐらい簡単に突破できるだろう。何十周と修羅場を潜りぬけてきているんだから誰かに問い詰められたぐらいで動揺したりしない。

 しかし、今の状況は話が別だ。彼女はこの事実が知られないよう必死で取り繕ってきたはず。カメラを仕掛けたのはこの周が初めてなんだから今の事態も想定外だったんだろうが、九条ノドカでないにせよこんな事態にいつも通りの対応をしろというのも無理がある。


 なら、僕が出るしかない。


「待ってくれ、僕から説明させてくれないか」


「マコっち……」


「……瀬尾」


「分かっている。二人とも納得できるように説明するから」


 桐島ミオは不安になっている。

 どうして三好ルナに命の危険が訪れるのか。どうしてそんなことを知っているのか。それが事実だという保証はあるのか。防ぐことはできるのか。できなければどうなってしまうのか。


 辻セイラは不安になっている。

 死に戻りのことがバレてしまったかもしれない。少なくとも三好ルナのことはバレてしまった。これが今後のループに影響しないか。桐島ミオを巻き込むことにならないか。僕がそれをどう切り抜けるのか。


 桐島ミオは納得したが死に戻りのことはバレてしまった。死に戻りのことはバレなかったが桐島ミオに友人の死の恐怖をただ与えただけに終わった。そんな結末では、影中トオルを捕まえたとしても関係性の崩壊から「精神への悪影響」が起こりかねない。

 二人を同時に納得させる説明でなければ、問題は解決しないんだ。


「まず聞かせてくれ。僕達の話はどこから聞いていた?」


「え……っと、その……聞こえたのは、ルナが殺されるってとこだけ……」


「『聞こえたのは』ということはそれ以前から尾行はしていたのか。何故だ?」


「それはっ、二人がどういう関係なのか気にな……なんでウチが質問されてんの!?」


「すまない、しかし聞きたいことは聞けた」


 ずっと前から尾行されていたというのは正直驚きだが。僕達はいつの間にかそこまで油断してしまっていたのか、あるいは桐島ミオの尾行が上手過ぎたのか。彼女には過去にも尾行の前例があるから、可能性としては後者の方が有り得そうだ。


 しかし……カメラの件も、あの男の名前も漏れていない。不幸中の幸いというやつか。

 尾行していたのも「二人の関係が気になるから」。なるほど、少なくとも死に戻りのことがバレていて、そのために着いている訳でもなさそうだ。

 どうして僕と辻セイラの関係性を気にしているのか知らないが……自分とのデートを断った人間が本来バイトのある時間帯に他の友人と二人で歩き回っているのだから気になるのも不自然なことではない。

 あれだろうか、辻カリンみたいな。桐島ミオもそういうトピックが気になるのだろうか? 

 辻セイラとそんな関係になるだなんて想像するだけで鳥肌立つから止めてほしいんだが。


 とにかく、彼女が死に戻りのことを知らないのは朗報だ。

 これならまだ手の打ちようがある。


「桐島ミオ」


「……マコっち」


「僕は今から大事なことを話す。とても大事なことだ」


「なに……?」


 いいか辻セイラ、これから僕が何を言っても過度に反応するなよ。

 君の懸念は理解している。それを絶対に忘れない。その上での発言だからな。






「君は『この学校に未来予知の能力者がいる』という話を聞いたことはあるか」






「……そ、そう、なの、マコっち? そんな『噂』が……?」


「ああ、そういう『話』がある。その様子だと聞いたことが無い様だな」


「……! 瀬尾、それは……」


「大丈夫だ辻セイラ。信じてくれ」


 そうだ。

 確かにこの学校には『この学校に未来予知の能力者がいる』という話が存在する。


 生憎、それを主張しているのは九条ノドカただ一人だが。

 だから、「噂」ではなく「話」だ。勿論、嘘ではない。


 辻セイラからすれば、「未来予知能力者がいる」なんて言いふらしたり、自称したりすることは避けたい状況だ。状況説明が楽にはなるが、WPPOを噂の発生源……つまり自分の元に呼び寄せることになる。

 しかし、WPPOの監視要員が冬期休暇期間に入っていることは九条ノドカから確認済み。おまけに今の僕達は、本来人が入らないような場所で、内密の話を、三人だけで話している。これは『密会』に当たるので──彼らがここで話した内容を無理に調べることはない。


 つまり、今ここでこの話をすることのデメリットは存在しない。

 勿論、九条ノドカに怪しまれるから普段使いもできないがな。


「じゃあ、さっきの話は……」


「事実、三好ルナには危険が迫っている」


「……そういう、こと、だったんだ」


 そして、この方法なら辻セイラの秘密は守られたまま、今の僕達の行動の辻褄も桐島ミオが全て理解してくれる。WPPOに予見されるリスクは一切存在せず、かつ「未来予知能力者」という有り得なくもない話で飲み込みやすい。

 ここで某転校生なら「未来予知とは? どういう精度で? 何が視える?」と細かいことを聞いてくるんだろうが、桐島ミオはWPPOじゃない。理屈が理解できれば意識は勝手に未来予知から親友の命の話題へと移行する。


 警察やWPPOに通報すれば、という案も考えれば不可能だと分かる。

 未来に視えたからというだけでは証拠が存在しないし、桐島ミオはWPPOが未来予知を行使して世界平和を維持していることを知らない。実際、問題を解決しない限りループが発生して影中トオルの暗躍は未来予知できなくなるから、取り合ってもらえない事実は変わらないんだ。


 だから、桐島ミオは──僕たちがその未来を防ぐために暗躍していると理解できる。

 危険だから、他の人を巻き込めず、この二人だけで活動していることも理解できる。


「その、未来っていうのは……」


「本当は話したくないんだが、言わなければ君はきっと納得しないんだろう」


「……うん」


 だろうな。

 しかし、ここでこんな曖昧な話をされても、証拠は何一つない。

 僕と辻セイラが結託して自分を追い払おうとしている……そう考える可能性もある。

 そのためには具体的な情報と今行っている行為を理解するための納得が必要だ。


 勿論、ここで桐島ミオに話してしまうのも非常にリスキー。

 情報がどこから漏れ出すか分からないし、彼女が「三好ルナを守るため」と躍起になって現場に踏み込む可能性もある。守るべき対象が倍に増えてしまっては本末転倒だ。

 しかし誤魔化したところで、桐島ミオが何の行動もとらず黙って待っていてくれるなんてこともあり得ない。


 だから、話すしかない。

 渡す情報は最小限に、できるだけ不安を煽らず、僕達の事情を理解し、かつこの話が事実だと信じてくれるように。少なくとも、彼女が納得するだけの必要最低限の説明を行って、その動きを制限するんだ。


「口外しないと、誓ってくれるか」


「う、うん……誓い、ます」


「分かった。まず、この男を知っているか──」






 *






「──という、未来だ」


「……」


 ……さて、どう転ぶか。

 伝えすぎたか、それとも足りなかったか。


 渡した情報は三つ。

 1. 狙われているのが三好ルナであること。

 2. 狙っているのが公開指名手配中のあの男であること。

 3. 決行がイブの夜であること。


 男の能力と、僕達の作戦の中身は渡していない。詳細に教えすぎて、彼女の不安を煽ってしまっても、逆にやる気を引き出し過ぎてしまってもいけない。あくまで、証拠さえ見つかれば通報して終わると、そう彼女が理解できるぐらいの塩梅に抑える必要がある。


 彼女が納得するための最低ラインはこれで満たせている計算なんだが……結果はどうだ。途中からずっと黙ったっきりで不安だったんだ。確かに、効かない方がおかしい内容ではある。今日の昼までは「親友の様子が変」程度だった話が、蓋を開けてみれば指名手配犯から親友への殺意の話になったんだ。飲み込むのに時間が要るのは当然だろう。

 だが、桐島ミオがどう反応するか、それを確認するまでまだ、僕は安心できない……。


「……ねえ、マコっち」


「なんだ」


「ウチも……ウチも何かする。何かさせて」


 ……ああ。

 やっぱりこうなってしまうのか。


 一番避けたかった展開で、同時に、一番あり得ると分かっていた展開だ。

 黙って隠し通したところでどの道、桐島ミオは勝手に動くだろう。だから説明で納得してもらい、納得した分だけ大人しくしていてもらう……それが僕に打てる唯一の手のはずなんだが。

 結果はこれだ。説得は失敗、頭が納得しても、気持ちの方を止まることができなかった。


「危険なんだぞ。分かっているのか」


「分かってるよ。分かってて言ってるってば」


「ミオ、駄目。絶対に、駄目だから、お願い」


「じゃあ二人が協力してるのは何でなの? 二人は危険な目に遭ってもいいけど、ウチだけダメって……どういうことなの?」


 違う、違うんだ。

 君が全部理解した上で発言していることは分かっている。そして、君がどうして「危険な作戦」に僕と辻セイラだけ参加できて、自分が参加できないのかを不思議に思うのも理解できる。

 そうだよな。危険だと分かっていても協力すると申し出ているのに、同じ気持ちの僕達二人だけがOKされて、自分だけが三好ルナを助けるために何もしないでと言われる。そんなの理不尽だ。


 でも違うんだ。君が協力者になれないのは辻セイラに大切に思われているからなんだ。

 君が危険に巻き込まれてしまえば、三好ルナを救うどころの問題じゃなくなってしまう。


 辻セイラの気持ちも理解できる。

 友人を危険から遠ざけたいのに、そのために友人が危険に首を突っ込んでくる。証拠だの段階だの以前の問題として、桐島ミオがあの男と同じ空間に立ってしまえば、不安の種がただ増えるだけだ。だからなんとしても阻止したい……しかしその事情を説明することができない。


「僕達は今、通報するための証拠を集めている最中なんだ。それが取れれば匿名で通報して、後は然るべき所が動いて終わる。君が危険を冒す必要はないんだ」


「それが失敗したら? そうなったらルナ連れて遠くに逃げるけど、それでいい?」


「待て、待ってくれ。それじゃダメなんだ、君が危険なのは変わらなくて……」


「邪魔なのは分かってるよ! ウチ、二人みたいに頭良くないし、途中から聞いただけだし……でも、ルナが殺されるかもしれないのに、黙って家で待ってろって言われて、はい分かったって待てる訳ないじゃん……!」


 ぐっ……どうしよう。本当にどうしよう。どう説明しよう。

 せめて泣く一歩手前の声で、正論を言うのはやめてくれないか。

 ほら、辻セイラもそんな「どうしよう」って目で僕を見るんじゃない。

 僕だって同じ目をしているんだから、なんか気まずいだろう。


 ……しかし、これが実際に正論なんだ。

 立場を入れ替えれば分かる話で、ハルキが殺されると知らされて「危険だから待っていろ」と言われて、僕は待てるのか? 待てる訳がない。

 理屈で危険を十個並べたところで、この種の感情には一つも刺さらない。刺さらないと知りながら、僕には同じ説得を繰り返す以外の持ち札が無い。


 折れる訳にはいかない。

 なのに、折るための言葉も持っていない。

 ……どうすればいいんだ。

 このままじゃ、時間が過ぎていくだけで……。






「……じゃあ、ウチが人集めるから、大勢でクリパするってのは?」


 ……は? 






「イブの夜に、ウチが友達いーっぱい集めてさ。ウチとセイラなら、ルナん家にも話通せるし。予定ある子も多いけど、それでも頼めば集められるからさ」


「……ミオ?」


「そいつ、ルナを殺しに来るんでしょ? 証拠が無いから通報できないんでしょ? だったら……見てる人が超いっぱいいる場所でなんて、何もできなくない?」


「──駄目に決まっているだろう!」


 何を言っているんだ、君は。

 友人を沢山集めて? 三好家を説得し、三好ルナを別のパーティーに連れ出して? 人がたくさんいる場所で過ごせば相手も手は出してこれない? 

 確かに合理的ではあるさ。全くメリットが無い訳じゃない。それどころか、桐島ミオには説明していない情報を踏まえた上でも問題解決のためには非常に有効な作戦になる。


 1. 人目。

 目撃者が数十人いる場での犯行は、難度が比べ物にならない。ましてや顔が全国に公開されている男だ。目撃されること自体が命取りになりかねない。犯行のハードルは飛躍的に上昇する。


 2. 能力との相性。

 影で移動する以上、実体に戻る瞬間が必ずある。人が多ければ多いほど、その一瞬を誰にも見られずに済ませる余地は消えていく。明るくて影の多い場所はあの男の狩場でもあるが、一番手が出しにくい場所でもある。


 3. 彼女自身の役割。

 桐島ミオがやるのは人集めと場の賑やかしであって、犯人への接触じゃない。作戦には大きく協力できるし、彼女自身が狙われる可能性も下がるからループは起こりにくい。

 一人でうろつかれるより、危険はむしろ下がるくらいだ。


 だが、駄目だ。穴とは別の場所に、越えてはいけない一線がある。

 無関係の一般人を大勢巻き込んでしまう……! 


「もし相手が人目を気にせず踏み込んできたら、何も知らない参加者を巻き込むことになる。僕はそれを許容できない」


「そうだよミオ、ミオが危ないって。ミオがその場にいるってだけで、私は……」


「でも、だって……」


 例え、作戦が上手くいったとしてもあの男が「諦める」保証がどこにも無い。

 三年間逃げ続けてまで執着している人間だぞ。目撃者の壁を前に引き返すのか、壁ごと踏み抜いてくるのか。もし後者であれば、「判断を見誤って作戦を強行してしまった犯罪者」なんてWPPOの恰好のカモでしかないのに、死に戻りの能力のせいで「障害があってもループを確実に発生させてしまう強敵」になってしまうんだ。

 そんな中で、巻き込まれるのは何も知らずに集められた一般人。

 事情の説明も同意も無しに、何十人を盾の位置に並べるなんて、容認できる訳がない。


「だから、諦めてくれ。この件は僕と辻セイラがどうにかする。だから……」


「……」


「……セイラ?」






「いや…………それ、いいかもしれない」


「はあ!?」






 お、おい、待ってくれ辻セイラ。

 よりによって君がそっちにつくのか!? 

 君はこっち側の人間のはずじゃないか。桐島ミオを危険に晒さないため、僕と一緒に「無関係の人間を巻き込めない」と主張する側の人間で……。


 ……。


 ……あっ違うぞこれ! 

 この女……作戦の合理性さえ確認できれば、無関係の人間なんか何人巻き込まれようがどうでもいいって人間だった! 


「確かに。その作戦なら上手くいきそうな気がする」


「だよね! ほらマコっちも! セイラだってこう言ってるし!」


「いやいやいやいや!」


 ああもう! 


 辻セイラのことだ。彼女は賢いから、相手の能力のことを知っている以上、今の桐島ミオの提案がいかに影中トオル特攻なのかを瞬時に理解してしまったんだ。ただ単純に「人が多いから実行しにくい」というだけじゃない数多くのメリットに、今この一瞬で全部気づいてしまっている。


「聞いてくれ、二人とも。無関係な人間を何十人も巻き込む作戦なんだぞ」


「そうだけどさ。でも、それで解決するかもでしょ? 一回しかチャンスは無いんだし」


「そうそう。失敗したらもし被害が出ても無かったことになるし。何人いようが私の精神には影響しないし」


「……? 何の話?」


「こっちの話。ミオは気にしないで」


 ……なんてことだ。

 二対一の構図になってしまった。


 形勢が悪いなんてものじゃない。

 ついさっきまで「危険だから待て」と説得する側にいたはずが、いつの間にか「その作戦は駄目だ」と防戦する側に回されているんだから世話がない。おまけに向こうの陣地には、僕の唯一の共犯者までいるときた。


 いや……その方がいいのか? 

 あの男だって、恨みを晴らすだけならまだしも余罪を増やしまくってより目を付けられるのは困るはずだ。三好ルナ以外を狙うことは無いかもしれない。

 影中トオルがカメラに映らず、第二段階に移行した場合のことを考えると……そのための対策として、大勢クリパを準備するのは、もしかして最適解なのか? 


「瀬尾」


「マコっち!」


「……ぐっ」






「今……進めている作戦で証拠が取れず、通報の目が完全に消えた場合……その時の最終手段としてなら、その案を採用しよう」






「……っ、うん! うん、それでいい! ウチ、めっちゃ頑張って準備するから!」


 ……駄目だ。

 結局折れてしまった。折れるのは僕の方だった。


 確かに、パーティーという形式は魅力的だ。

 もし実現できれば、「九条ノドカを現場に誘う」ことだってできる。

 彼女を現場に呼びつけることは未来予知能力者の証明になってしまうから禁じ手だったが、友人という名目で呼びつける分には何の問題にもならない。

 影中トオルが攻撃を行おうとした瞬間、九条ノドカさえいれば事は一瞬で解決する。


 そう考えれば、確かにこの作戦は理想的だ。

 無関係の人間を巻き込むことになる、というハードルが相変わらず邪魔ではあるが。


「瀬尾、ありがと。ミオのこと解決してくれて」


「さっきまで僕の敵をしていた癖に何様だこの女……」


 ……ああ、頼むからカメラに映っていてくれ。もう縋るものがそれしかない。


 一度は糾弾した作戦に頼るのも的外れな気はするが、逆にそこで影中トオルの姿が映ってさえいれば通報が可能になる。映ってさえいれば、匿名で通報して、然るべき所が動いて、それで全部終わるんだ。

 12箇所もカメラは落ちている。あの男が今夜、どこかで光の下を横切りさえすれば、どれかのレンズが必ず捉えているはず。


 そうすれば、こんな最終手段の出番は無くなる……。

 皆は何も起こらないクリスマスパーティーを楽しめる。

 ループは起こらず辻セイラは次を迎えることができる。

 僕は自分の家でアラタと母さんとパーティーができる。


 だから、あのカメラに映ってさえいれば……。






 *






「あっ瀬尾さん! 瀬尾さんもパーティーに呼ばれていたんですね」


「ああ……」


「私も友達から誘われて。主催者の桐島さんにも歓迎して頂いたので是非にと」


「ああ……」


「……何かお困りで? 必要なら仕事、あるいは友達としてお悩みをお聞きしましょうか」


「ああ……」


「???」

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