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クラスメイトは『大切な人を救うために死に戻る能力者』  作者: 破れ綴じ
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31/56

[21:19] 三連休を白紙にする50の方法

 瀬尾家は今日も平和だ。


 ──ピッ


 ──『続く残暑。WPPO日本支部は平均気温を3℃下げることを検討し──』


 ──ピッ


 ──『駅前で住民に声をかけて回る不審な女性の目撃情報が相次いでおり──』


 ──ピッ


 ──『暑さを乗り切ろう! 今回は有名な怪談語り屋・宵坂ヨミさんにお越し頂き──』


「あっ、これがいい。面白そう!」


 ふむ? 怪談番組か。

 なるほど、中々いいチョイスなんじゃないだろうか。


 母さんはリモコンを持つと必ずこうなる。興味ないものは早々に飛ばして、面白そうだと思ったら即決。実に感覚派でスッキリしていて気分が良い。

 かといって、飛ばした画面の情報もしっかり押さえていたりするし。ほんの数秒見ただけなのに、いざという時にすぐ思い出せる程度には頭の回転が速い。


 流石母さんだ。

 僕の記憶力が良いのもきっと母さん譲りだろう。そう思うととても嬉しい気分になれる。

 おかげで今日のバイトも頑張れそうだ。

 和ませてくれたお礼として、今日の稼ぎは全部家に入れるべきかもしれない。


 さて、と。


「マコト、連休なのに今日もバイトなの〜?」


「連休だからだよ。明後日は敬老の日だし、人手が要るんだ」


「さっすが私の息子。アラタは?」


「宿題だよ。今日は僕が側にいるからね」


「まー! じゃあ、お母さんは今日一日ゆっくりしてるわね」


「うん。そうしてくれ」


 世間が休むから店が混む。混むから人手が要る。

 単純な話で、むしろ連休を外して催事を組む店があったらそっちの経営が心配だ。

 それに、この9月14日~9月16日の三連休は元々シフトを厚めに入れてある。

 夏休みに一度、警察の事情聴取のために丸一日抜けた分の埋め合わせだ。


 あの時の店長は理由も聞かず、疑いもせず「無理しないで」と言ってくれた訳だが、こっちは後味が悪いまま。

 迷惑をかけた分は労働で返す、それが筋というものだろう。きっと母さんもそう言ってくれる。


「でも心配ねぇ。一日中立ちっぱなしなんでしょう?」


「屋内だよ。空調も効いてる」


「でも熱中症って屋内でもなるって言うじゃない。WPPOも早く気温下げてくれたらいいんだけど」


 それは確かに同意だ。

 熱中症は屋内でもなる……というより、発症場所としてはむしろ屋内の方が多いくらいだし。


 確か、過度に暑い/寒い時期はWPPOの各国支部から本部に連絡が行って、WPPO-EM……所謂WPPO環境部門が対策するんだったか。

 で、もし認められれば、農業や漁業などに影響の無い範囲で気温の変更を伴う対策が施行される……と。

 母さんが熱中症にならないためにも、WPPOにはさっさと気温を下げてもらいたい。

 顔色は悪くないし、薬も昨日と同じ分だけ減っていたんだ。なのに暑すぎて倒れてしまったなんて言われたら……想像したくない。


「帰りは何時頃?」


「9時半に上がる。10時前には着くよ」


「暗ーい。気を付けるのよ。ほら、さっきのニュース。駅前の」


「当然。近寄らないから」


「近寄らないっていうか……あなたの場合ねぇ」


「そうだね。兄さんには前科があるからね」


 ……う。


 ……いや、確かにそうだ。

 僕はあの夏祭りで見事に不審者に突っ込んでいったという実績がある。二人がジト目で見つめてくるのもおかしなことじゃない。

 不審者が出たから近寄りませんと言われても、「本当か?」と思うのはごく自然なことだろう。

 その節は本当にご心配おかけして……。


 でも、僕はあれからずっと噂の払拭に尽力してきたんだ。

 いまいち払拭できていない気もするが、噂というのは飽きてくれば必ず消える。二学期が始まって少し経てば文化祭の出し物の話題も増えてくるし、近いうちに下火にできるだろう。


 だからあんまり家の食卓で蒸し返さないでほしい。

 校内で噂されなくなったのに家でもイジられたら恥ずか死んでしまう。


「じゃあ今夜これ、一緒に見ましょうよ。録画するわ。ね、アラタ?」


「僕は怖いの苦手だけど……でもお母さんがそう言うなら、見たいな」


「そうだな。母さんがそう言うなら、一緒に見ようか」


 帰りは遅くなるが……怪談番組なら遅い時間に見るぐらいが一番いいかもしれない。

 普段は夜更かしもしないが、母さんからの誘いであれば話は別だ。休みの日に家族で見るホラー番組は良い具合に僕達の気分を涼しくしてくれるだろう。


「ま、怪談なんてどうせ能力絡みでしょうけど」


「流石お母さんだね。物事を冷静に見られている」


「きっと母さんは詐欺とかにも騙されないだろうな」


「……息子たちが私に甘すぎるわ~」


 まあ、怪談というものは能力現象が世に知られるよりずっと前から存在していたらしいし、全てが能力という訳ではないかもしれない。

 言葉で説明できない超常現象や現実では有り得ない怪奇現象、そういったものは全部「能力でなんかやってるんじゃない?」で説明がつくからな。

 逆に言えば、今もなお文化として残っている辺り、やはり人はそういうスリルを求めてしまうのだろうが。


 そしてそれを冷静に俯瞰できる判断力と、それを娯楽として消費できる母さんはやはり感性豊かな人ということに……。

 ……おっとしまった。母さんの魅力を考えていたら飛ぶように時間が過ぎてしまう。そろそろ切り上げなければ。


「もう出る。ごちそうさま」


「いってらっしゃい」


「気を付けてね、兄さん」


「ああ。行ってくるよ」


 服はもう着替え済み、荷物も持ったし、水分も補給して、日焼け止めも塗った。

 忘れ物は無いはずだ。出かける準備は万端。

 土、日、月──敬老の日。

 三連休もまだ初日。しっかり気を引き締めていこう。


 ……それにしても。

 今日で丁度1ヶ月なのか。時間が経つのは早いな。


 だとすると──今日が折り返しになるか。


 あの女は「これから2ヶ月以内に次の死に戻りが起こる可能性がある」と、そう言っていた。

 実際には次回の死に戻りが原因ではなく、彼女の逮捕が「辻家に精神的ショックを引き起こすから」だとか、そういった可能性も考えたが……だからといってあの女が再度襲来しないとは限らない。

 正直ハイペースすぎるが、僕は一学期であの能力の意地の悪さを十分に学習している。今更文句を言うつもりもない。

 いや文句は言いたいな。なんだあの能力。やっぱり呪いだろあれ。


 ……ただ、正直なところ。僕の録音を握られたまま、結局2ヶ月何も起きなかったあの期間の方がよほど不気味だった。何も起きないというのは、何も起きていないという意味ではないんだ。あの時の僕はそれを知らなかっただけで。

 それに比べれば今回は、少なくとも可能性の予告をされている。

 予告されているだけマシ……なのだろう。


 まあそれも、彼女が来ない限り分からない……か。






「おはよ。今日は何曜?」


「……」


 ──「ちょ、なんで閉めるの」






 びっくりした。

 本当にびっくりした。

 僕は悪い夢でも見ているのか。

 自宅の扉の前に──私服の辻セイラが立っているだなんて。


「……人違いじゃないか?」


「んな訳ないでしょ。私のこと舐めないで」


 何だ。

 何なんだ。

 どうしてここにいる。

 どうして僕の家を知っている。


 教えた覚えはないぞ。一度もない。

 この女に住所を教えるような機会が僕の人生に存在した記憶が……。


 ……有り得なくはない。

 人の端末を勝手に触って自分の番号を登録していった女だ。

 あの三日間、僕は辻家に泊まり込んでいたんだ。あの時ついでに何をどこまで見たか、僕は確認すらしていない。

 納得できた、納得できてしまった。余計に腹が立ってきたが。


 それで一体。この女は何をしに……。


「で、今は時間ある? そこまで長くはならないけど」


「……」


「ね、どうなの」


「……ああ」


 そういうこと……かあ。


 よりにもよって今日か。

 折り返しだと数えた、その日の朝か。

 数えた僕が悪いのか? 数えなければ来なかったとでも言うのか? 

 そんな訳がないだろう、日付は僕の都合で動かない。


 分かっている。分かっているが言わせてくれ。

 確かに僕は「真夜中でも旅行中でもバイト中でも構わない」と言ったが。

 でもまさかこんなピンポイントで来るとは思わなかったんだ。

 予告されていたとはいえ、こっちにも準備というものがあるだろう。


「その、今日はバイトなんだ」


「だから?」


 ……この女。


「……店に遅刻の連絡をするから、5分くれということだ」


「そ。ありがとね」


 なんてことだろう。

 今思えばちょっと安請け合いしすぎだったかもしれない。

 おかげで僕は、人員が足りないと分かっている日に、1ヶ月かけて労働で返そうとしていたのに、この遅刻で今日また借りを作ることになってしまった。


 ……まあでも、薄々そんな予感もしていた。

 どうせ僕は、連休だろうが、バイト前だろうが、この女に振り回されているのがお似合いなんだ。






 *






 ……暑い。


 いや、暑いのは分かっていた。WPPOが3℃下げてくれていない以上、これは当然の気温だ。問題はそこじゃない。

 ここは屋内でもなんでもないただの公園だぞ、しかも人が一人もいない。この炎天下に公園にいる人間がいるかという話で、つまりそれが選んだ理由なんだろうが……日陰のベンチ一つで足りると思っているのか君は。


「で、今回は?」


「月曜日の夜にベッドに入ったはずなんだけど、目が覚めたら土曜日だった」


「見事にループしてるじゃないか……」


 ずっと眠り続けて次の週だった……訳ではないよな? 流石に。

 つまり、月曜の夜に「何か」があったと。


 となると……ループ開始は土曜日の早朝、それこそ辻セイラが目覚めるまで。ループ終了は月曜日深夜になるのか。およそ3日、この連休をフルにループしている訳だな。

 前のループが1週間近くだったから感覚がマヒしがちだが、結構長いぞ、これは。

 辻カリンの時も3日だったか? また面倒なことになりそうだ。


 しかし……前回の約束通り、彼女はループ発生を自覚し、すぐ相談に来てくれたんだろう。そこだけは認めなくてはならない。

 事実、土曜日の朝一──ループ開始直後に相談に来てくれている。前みたいに、既にループが進行している途中で、情報を伏せながら……なんてことはしていない訳だ。


「じゃあ、ゼロから二人で調べていくしかないな。時間に猶予はあるし、まずは何をする?」


「いや──今で19回目だけど」


「おい」


 待ってくれ。

 ……待ってくれ。


 さっきまでの僕の感傷を返してもらえるか? 


「すぐ僕に相談するんじゃないのか」


「『相談する周は』すぐに言うんでしょ。だから合ってるじゃん」


「屁理屈じゃないか!」


 そうじゃないだろう君。

 僕は「すぐ僕を頼れ」と、そう言ったんだ。一番早い段階で相談しろと、そう思って君に約束を取り付けたのに。既に18周潰れているだと? 既に2ヶ月弱ループを過ごしているだと? 約束と違うじゃないか。

 いや、違う。まさかだと思うが、彼女の言い分は「僕に相談イベントを行う周は早く告知する」であって、「相談を行わない周はそもそも告知しなくていい」……なのか? 

 今まで通り、対象や要因を絞り込むための周は、僕に相談せず独自に行うと……。


「原因を探す周でアンタがいると普通に邪魔なの。プライベートな場所にアンタをわざわざ連れ込む理由を作らないといけないし、別にアンタがいたところで大して役に立たないし」


「……ぐ」


 ……反論できない。


 いや、確かにそれは事実だ。

 僕は辻セイラの『大切な人』と必ずしも親密な訳ではないし、辻セイラにしか分からない異常は存在するが、僕にしか分からない異常は存在しない。原因特定では特に役に立てない。

 それに、僕を連れて動こうと思えば、都度「どうして辻セイラだけではなく瀬尾マコトまでいるのか」と考える必要もある。毎周記憶を忘れる訳だから、僕に都度ループを説明するコストも必要だし……確かに効率は悪い。


 でも、そうじゃないだろう。

 分かっている。分かっているが、僕が言ったのは効率の話じゃなかったのに。


 ……いや、止めよう。

 僕が個人的にどう思おうが、向こうの意見の方が筋が通っているんだし、そんな時まで僕の意見を優先しろだなんて言う権利は無い。

 事実辻セイラは18周かけて要因を特定するために動いてきてくれたんだ。それに対して、特に役にも立てないヤツが「どうして僕を頼らない!」とか言い出してもウザいだけだもんな。

 うん、この話は止めよう、僕が腹を立てただけ。それで終わりだ。


 それよりも今は──このループにどう向き合うか。


「分かった。それで、対象と現場の場所は。原因は何だったんだ」






「どれも全く分からない」


「ふざけるなよ君」






 ……いや。

 いやいやいやいや。


 今度こそ話が違うじゃないか。え? 

 原因の特定には僕が邪魔だから黙っていたが、結局対象が誰かすらも分かっていない? 

 じゃあ何だ。辻家の母親が事故死するループのように、月曜日の深夜に『大切な人』の直接的な死亡イベントが起こる訳ではない……つまり「何か」が起こり、間接的な将来の死の要因確定が起こるということか? 


「じゃあ、病気ということか?」


「いや、病気の線はない。明後日カリンのWPPO-HB初検査予約があるんだけど、そこでチェックしてもらった」


 ん、え。

 取れたのか? 予約。

 WPPO-HBの能力による症状回復サービスといえば、半年待ちが当たり前だと聞いているぞ。まだあのアレルギー発覚から2ヶ月半程度しか経ってなくないか。


 ……あっそうか。敬老の日があったか。

 敬老の日は日本だけの祝日だから、世界的には明後日はただの月曜でしかなくて、枠が比較的空いていたんだな。それにしても早い気がするが。


「そこで、担当患者に他にも病気があったり、付き添いの人も重症だったりした場合はきちんと指摘してもらえるから」


「だから、そこで指摘されなければ……」


「そう。家族全員、異常無しって認定貰ったよ。私だけ『ストレス?』って聞かれたけど」


 そうか……。

 確かに、言われてみればそうだ。能力で病気を治す組織が、いくら料金外とはいえ「この人他にも重病抱えてるけど無視するか……」「この付き添いの人今晩死ぬけど指摘しないでおくか……」等と対応する訳もないし。

 辻カリンの時には分かりやすい兆候があったが、辻セイラの反応からするにそういった前兆すら誰にも出ていない……つまり、病気による死に戻りは考えにくい。


「じゃあ、精神はどうなんだ」


「様子がおかしい人はいない。精神が壊れかけてる時は、近しい人には絶対違和感があるし。今回はそれもない」


 ……そうだな。


 あの時は、昼休みに話を聞かされただけの僕でも、桐島ミオが多少なりとも落ち込んでいるのが見て取れた。今の元気な姿と比較すればさらに分かりやすい。

 僕でも気づくようなことなんだから、辻セイラが気づかないということもないだろう。もしあったとしても、19周もしていれば、全員に心当たりがないか聞き回るぐらいのことはしているはず。


 つまり、こういうことか。


 1. 病気ではない。緩やかに進行して死に至る要因が、事前に見つかっていない。

 2. 精神でもない。将来の死に繋がるほどの損傷が、誰にも現れていない。

 3. 何か分かりやすいイベントが起こって死亡した訳でもない。


 前触れがないんじゃない。

 前触れが存在しない種類の死が、今回の原因であると。

 となると……。

 残るのは、能力による死亡イベントの可能性か? 


 目立つ外傷ができる訳でも無い、病気でも無い、精神の異常も無い、分かりやすいイベントも無い。それでも月曜の深夜、『大切な人』の誰かが死ぬ。僕たちが想定している物理的な手段を全部飛び越えてくる「何か」が存在すると考えるしかないだろう。


 正直、能力による被害と仮定すると、「条件から内容まで何でもアリ」になってしまうから考えたくないんだが。現時点でもかなりの難題なのに、さらに難しくなってしまうぞ。

 例えば、もし相手が地球の裏側から人を殺せる能力者だったら? 

 もし名前を書くだけで死ぬような能力だったら? 

 もし発動条件が、僕たちが一生観測できない場所にあったら? 

 そうなるとこっちにはもう一切手が打てなくなってしまう。


「一応確認するが、月曜の夜、直前まではどうなんだ」


「全員無事。18周のうち何回かは、寝る直前まで普通に元気なことを確認したし」


「……全員」


「全員。だから余計に分かんないんだって」


 ……無理じゃないか。

 本当に手掛かりがゼロだ。

 19周どころか、190周やっても届かない可能性があるぞ。


 なるほど、それなら僕に頼りに来るのも当然か。

 普段は僕を無視して原因をある程度特定してから相談に来ているが……今回はその特定すら行うことができない。実行役の僕というよりかは、アイデアを出す役としての僕を期待して、相談に来た……と。


「それで、一個だけ案があって。協力してほしくて、今回は来た」


「ん、あるのか? 案が」


「当たり前でしょ。3日間も何もせずボーっとしてた訳じゃないんだから」


 そ、そうなのか。

 じゃあやっぱり僕に求められているのは実行役としての活躍なのか。


 しかし、あるんだな。

 これまで以上に情報不足でかなり絶望的な状況だと思うが、既に案はあると。

 それなら話は別だ。月曜日にタイムリミットが来るんだから日曜日──明日までにはもうアクションを起こさなければいけない。そうでないと、いざやってくる月曜日の本番に一切前準備無しで挑むことになってしまう。

 僕から他に提案できる作戦は無いし、大人しく従うのが得策か。


「まず、死に戻りの瞬間、私は死んでるから確認とかできなくなるでしょ。でも、その瞬間に何か変化があったかもしれないじゃん。音とか、光とか、部屋の中の何かとか」


「それは、まあそうだな」


「だから、それが分かれば、対象は特定できるかも」


 なるほど、確かに。

 辻セイラの発言が正しいなら、彼女は死亡と同時に脳が破壊され、ほぼ全ての知覚手段を失う。つまり、彼女自身は「その瞬間まで」のことは分かっても「その瞬間に何が起こるか」を観測できない。

 だが僕は死なない。発動条件に僕は含まれていないんだから、その時間に起きて情報を伝えれば、「何が起きたか」を次の周へ持ち帰れる。

 この周を確定で捨ててしまうことにはなるが、ベテランの辻セイラがここまで情報不足に苦しんでいるんだ。一歩でも前進できれば御の字だろう。

 一人一人見ていくとなると、かなりの周回数が必要になるというデメリットがあるが……そこは何か対策があるのだろうか。


 ……しかし。

 なんだ、この嫌な予感は。

 僕が辻セイラの推論を一つずつ噛み砕いて行って、理屈が丁寧に積み上がり、こっちが「なるほど」と頷いた瞬間に、何かとんでもない提案が飛んでくるかのような……。


「私は準備とかもあるから、瀬尾にも協力してほしいんだけど」


「……聞かせてくれ」






「まず、全員の部屋に盗撮カメラを仕込む」


「待て」






「で、全員が寝静まったところを私の部屋で監視する」


「待て待て!」






「アンタにはミオの家に上がって、寝室に小型カメラ仕掛けてきてほしくて」


「待て待て待て!!」






 住居侵入罪、刑法130条。

 性的姿態等撮影罪。

 各都道府県の迷惑防止条例。

 軽犯罪法第1条第23号。


 ……その作戦で君は、僕が協力すると思っているのか!?

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

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