21話 提案の裏
魔族が席に着くと、祭さんも対面の席に着いた。
祭さんが席に着くのを見てから、東條さんと俺も席に着く。
他のメンバーはまだ状況が整理できてないのか、立ったままだ。
「おいおいなんだよ、なんで敵と話すんだよ」
「やめろ神宮寺、若織さんが人質になってんだ、素直に従え」
「あ?柴崎、お前……まぁいいや」
そうして神宮寺も席に着いた。
なんだやけに素直だな。
「話を聞いてくれてありがとう、では話し合いといこうか、まずさっそくなのだが、魔王復活を諦めるから、俺たち魔族と和平を結んでほしい」
「ほう」
そう言って祭さんは顎に手を添えた。
魔王復活を諦めるだと、それはこっちにとってありがたい話だな。
見返りが和平か、うーん、悩ましい。
魔族は好戦的な種族だ、たとえここで和平を結んでもすぐに和平は破棄される。
この提案裏があるな。
「よ、良い提案なのではないでしょう?」
仙道がそう言って祭さんの顔を見た。
いや提案としては悪くない、でも先もない提案だ。
まるで目の前の餌に食い付けと言わんばかりの提案、いわば時間稼ぎのような。
時間稼ぎ?
「一ついいかな、魔族くん」
「ルシファーだ、そう呼んでくれ」
「わかったルシファー君、その提案は条件としてはまぁ良い、ただな先もないんだよ」
「……先か、ならその条件に俺たち魔族は向こう1000年姿を消すと付け加えよう、まぁ正確には北海道にあるダンジョンでひっそりと暮らすってことだが」
なんだ何か変だぞ、そんなのこちらにとって都合が良すぎる。
餌に食いつかせようと必死さを感じるな。
やっぱりきっとこれは時間稼ぎだ、本命は核を集めることではない、俺たちに邪魔をされない時間を稼ぐ事だ。
ただ理由がわからない。
「うーん、これもしかしてだけど、魔王はもう復活してるんじゃないか?」
『……!?』
雛菊がポロッとそう言った。
雛菊の言葉を聞いてその場にいた全員がわかりやすく驚いている。
気持ちはわかる、だって普段の雛菊は馬鹿丸出しだもんな。
まぁでもなるほどそういう事か。
それなら核を集める必要はなくなる。
この提案にも合点がいく。
詰まるところこの提案には、魔王はもう復活したからあとは時間を下さい、それまでは大人しくしてますからっていう意味があったのか。
「……ま、待て落ち着け、その女の言った事に根拠はないぞ、そんなの信じるのかよ」
目に見えて狼狽始めたな、これは……。
「うーんこれは……雛菊の言った事を信じるとするのが良さそうだな、すまんルシファー君やっぱり死んでくれ」
祭さんは笑顔でそう言った。
「よっしゃあああ!」
祭さんの言葉を聞いて、神宮寺が勢いよく席を立った。
「お前ら、手ェ出すなよ、こいつは俺がやる」
「いや待て神宮寺、俺がやる」
神宮寺が席を立つと、それに制止するように東條さんも席を立った。
「んだよ東條、すっこんでろ」
「違うんだ神宮寺、お前は若織のとこへ行け」
「は?」
「この場で飛行能力があるのは、お前と俺だけだ、ただ俺は今そのアイテムを持っていない、故にすぐに救援に行けるのはお前だけだ、頼む」
「……くっそ、仕方ねぇな、全くお前ら感謝しろよ俺がいてな!」
『ガラッ』
そうして神宮寺は本部の窓を開けて空に飛び立っていった。
やけに素直だな。
まぁいい、さて魔族の討伐を始めるか。




