表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を追放した国の物語  作者: 猫野 にくきゅう
聖女暗殺事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/85

第54話 シーネの気苦労

 私は部隊の斥候として、先行して馬を走らせている。

 

 ダルフォルネ領から王都までの道のり――

 恐らく危険はないだろうが、魔物や賊との遭遇が無い訳ではない。


 万難を排して、安全を確保しなければならない。

 なにしろ、私達が護衛しているのは、この国の次期王妃となられるソフィ様だ。

 


 護衛を担当しているのは、昔からアレス様と魔物退治をしていた傭兵の戦士団だ。

 中型の魔物相手でも、後れを取ることは無い。


 私達には、それだけの実力がある。



 王都までの旅の間に、万一のことなどないだろう。

 

 だが、きな臭い動きも報告されている。

 なんでも、西の大国チャルズコートの神殿勢力の主流派が、不穏な動きを見せているのだとか――



 そして、今回の旅の発端は、王都にある神殿からの招待。


 神への感謝をささげて欲しいという名目で、『聖女』ソフィ様を神殿に招いた。

 ――彼らにも、ソフィ様は聖女ではないと、見当はついているはずなのに……。


 ――いやな予感がする。

 正直、招きに応じない方が、いいように思う。



 神殿では建前上、全ての神様をお祭りしている。


 だが、実際には目に見える恩恵の大きな、『女神ガイア』一強の状態だ。

 聖女が定期的に誕生していたこの国では、その傾向が特に強い。


 だがここ数年は、聖女による恩恵もなくなり、戦神の加護を与えられたアレス様の活躍もあり、神殿内の勢力図に変化が起こっているという。


 女神ガイア様を崇める勢力が、自分たちの権勢を保つために、アレス様の婚約者のソフィ様を偽聖女として糾弾して、恥をかかせる。


 ――そんな策略を巡らせてくるかもしれないと、懸念されている。



 しかし、アレス様はそれを踏まえて、ソフィ様に判断を委ねた。

 そして、ソフィ様は王都へ向かうことにした。




 ならば私たちは、全力でソフィ様をお守りするだけ――

 なのだが、部隊内にはソフィ様に対する不満も少なからずある。

 

 それも、私の不安要素だ。


 何しろ……

 今回の王都行きを決めた理由が――




「神殿からの招待で、王都へ……ですか?」


「ソフィ様! 王都には、美味しいお店屋さんがいっぱいありますよ。ライザさんが詳しいので、案内して貰いましょう!!」


「それは楽しみですね! リリム――たくさん食べれるように、お腹を空かせて参りましょう」




 ――こんな感じで決まったのである。


 慌ててライザさんが、フォローしていた。


 ソフィ様は、記憶を無くしている影響なのか、お世話をしているリリムとの相乗効果なのか、年齢の割にはどこか幼い印象を受ける。



 私の見立てでは、今のところ――

 同性からの評価、好き嫌いは丁度半々といったところだ。



 基本的に、同性から好かれるタイプではなく――

 アレス様の正妻としては、受けが悪いように思う。


 ただ、お姉さん気質な年上からは可愛がられていて、積極的に評価している人もいる。親しみやすいお人柄なので、年下や気の弱い子からも人気がある。


 そんな感じだ。




 より多くの人がアレス様の正妻として望むのは、リーズラグドの叡智と称されるあのお方や、親衛隊のゾポンドートの姫君、副団長のリスティーヌ様。


 頭脳や武勇に優れた方のほうが、同性からの受けがいい。

 


 アレス様はあれでも、戦士団の皆から好かれているから、正妻を見る目も自然と厳しくなる。





 ――最初の頃は、只の困ったエロガキだったのになぁ……。


 弓を教えて欲しいというから、手本を見せていたら後ろに回り込んでスカートをめくってきたクソガキだった。


 弓の練習も真面目にするから、すぐに上達して 叱るに叱れなかった。

 


 野営の訓練をしたいと言い出して、私の所属する傭兵団の野営訓練に加わったこともある。


 その時は、身分を隠して加わった。

 騎士団や傭兵団は、男女別に分かれて組織されている。



 貴族の三男坊くらいだと思われたアレス様は、皆からイケナイ悪戯をされる。


 そういうことが無いように傭兵団や騎士団は、男女別に分かれているのだから、女戦士の集団に、顔の整った男の子が入ればそうなる。


 アレス様は訓練の後で、年上のお姉さんたちに弄ばれてみたかったとか言って、満足げだった。 


 おスケベが過ぎます……。


 

 そんな手の付けられない困ったエロガキも、魔物を一緒に討伐するようになってから、徐々に見方が変わっていった。


 私以外の皆も、少しづつアレス様を好きになっていったと思う。

 


 そして反乱を武力で収めたり、邪竜王を倒したり、復活した破壊神を退治したりで、すっかりこの国の英雄になった。


 だからこそ、アレス様の正妻には、みんな厳しい目を向ける。

 相応しいかどうかを、見極めようとする。


 今のところソフィ様を、不合格とする者は多い。



 ――だが、ソフィ様はアレス王子が選んだお方だ。


 人を引き付ける魅力はきっとある。


 

 人と人は、すぐに分かり合えるものでもない。

 でも、分かり合える日もきっとくる。


 その時までに、及ばずながらこの私が、ソフィ様と戦士団の皆を取り持とう。



 私が決意を新たにした時に、王都が見えてきた。





 王都ではまず、国王夫妻へ挨拶に伺うことになる。



 私は謁見の間に向かう、ソフィ様を見送りながら――


 ソフィ様、ちゃんと出来るかしら?

 セリフを間違えないかな、マナーは大丈夫か、途中で転んじゃわないかしら?


 などど、心配していた――




 私の心配をよそにソフィ様は、何事もなく挨拶を終えた。

 慎ましやかでありながらも、堂々とした立ち居振る舞いだった。


 皆の見る目も、少し変わったように思う。



 次の日からは、四大貴族を筆頭に上位貴族の方々と、順に挨拶をして回った。


 そこでも私は心配し通しだったが、ソフィ様は立派に役目を終えられた。

 

「挨拶は、得意なのです」


 ――といって、ちょっと威張っていた。

 

 


 挨拶を済ませてからは観光がてら、ライザさんおすすめの美味しいお店巡りをして数日を過ごした。


 あいさつ回りの時とは違い、気を抜いているからなのか、何もないところでよく転びそうになっていた。

 その度に私やライザさんが抱きかかえて、転ぶのを未然に防いでいた。


「しっかりして下さい」

 

 と、苦言を呈するが――


 幸せそうにご飯を食べる姿を見ると、可愛らしいとつい思ってしまう。


 ――捉えどころのないお人だ。





 そして――

 最高司祭からの招待に応じて、神殿へと赴く。


 私達の護衛の任務もここまで……。

 神殿の中は、神殿騎士の領分だ。


 護衛の任務は、彼らが引き継ぐ。




 ――いやな予感がする。


 今からでも引き留めよう。

 神殿からの招待は、急病ということにして断りましょうと、ソフィ様に進言する。


 だが、ソフィ様は自信満々な顔で――



「大丈夫だから、心配しないで。お祈りは得意なの!」

 と言って、優しく微笑んだ。

 


 私はソフィ様が――

 何もないところで、何度も転びそうになったことを思い出す。


 ……まったく、安心できなかった。

 心配で仕方がない。


 私は神様に、ソフィ様の無事をお祈りした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ