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聖女を追放した国の物語  作者: 猫野 にくきゅう


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29/40

 ネタバレ

 ここはリーズラグド王国の東の僻地。

 聖女である私が何故こんな田舎まで出向いているのかというと、あの阿呆王子を捕獲する為だ。

 『聖(笑)』の展開通りに、物語を進めるために……。


 そのためには阿呆王子の軍と戦って、やっつけなければならない。






 これからこの私の物語は、こう進行することになる。


 ~ネタバレ注意よ(^_-)-☆~


 

 まずは阿呆王子を捕らえて連行し、牢屋に入れる。

 その後、わざと脱走させ悪魔召喚の魔術書が置いてある部屋へと誘導する。


 阿呆王子は事態を打開する為に、悪魔に助力を乞うだろう。

 悪魔は偽聖女を生贄として、要求するはずだ。


 公開処刑を行う予定の偽聖女の所まで、阿呆王子はやってくる。


 衆目にさらされる中で、悪魔を召喚させる。

 おぞましい悪魔を召喚した阿呆王子は国民から嫌われ、華麗に悪魔を退治する私は聖女としてさらなる名声をえる。


 私が最後に、この国を捨て去って『ざまぁ』完成。


 ピレンゾルに帰還した私は、ピレールと結婚式を挙げてハッピーエンドとなる。





 完璧な計画――

 文句なしの筋書き、最高の物語だ。 


 そのための第一段階としてダルフォルネに命じて、阿呆を挑発しておびき寄せた。


 戦争などという野蛮なことには知識が無いので、そっちは部下に任せている。

 私の役目は聖女の癒しを、決められたタイミングで発動するだけだ。


 たまに気分のいい時には、ボーナスで癒しを追加してあげたりもする。





 戦争というのはどういうものか、少しだけ興味があり初日は観戦していたが、思ったよりも地味で見応えが無かった。

 それ以降、戦場を見物したことは無い。


 勝ちが決まっている戦いだ。

 見ていてもつまらない。


 ……敵が降伏した後で、敵兵を処刑するのは楽しそうだが――


 そうだ! 

 阿呆王子に味方の首を斬らせてやろう――

 お前が、部下を処刑しろ。


 それを降伏の条件にするのだ。  


 早く降伏してこないかしら――





 ――あら?


「なんだか、外が騒がしいわね?」


 専用の豪華な天幕で朝食を取りながら、外の様子がおかしいことに気付いた。



 聖女十字軍が阿呆王子を懲らしめる為の、聖戦を行っている最中だ。

 

 戦場に近いこの天幕にも戦いの騒音は響いてくるが、こんなに近くで騒がしくなったことなどない。ひょっとして阿呆王子を捕らえた部隊が戻ってきたのだろうか?


 捕らわれの阿呆王子の顔を拝もうと立ち上がると、天幕に険しい形相をしたシュドナイが入ってきた。

 シュドナイは聖女十字軍の副団長で、私の頼れる側近だ。


「聖女様! 緊急事態です!! ご無礼を、お許しください――」


「ええっ??」


 シュドナイは私を抱き上げると、外に連れて行き馬に乗せる。

 私の後ろにシュドナイも飛び乗り、馬を走らせる。



 私達の後ろには、聖女親衛隊が数人追従してくる。


「ちょ、ちょっと待ちなさいシュドナイ。戻って、阿呆王子を懲らしめないと――」


「聖女様、それどころではありません!! 反乱です。軍の大半が聖女様に反旗を翻しました!!」


「は? 何よそれ? 反乱? なんで?? 私は聖女なのよ!!」


「おそらく、食料が無くなったのが原因かと。一般兵への支給が昨日から滞っておりましたので――」


「は、はぁ? なによそれ、そんな馬鹿みたいな理由で反乱ですって? 食料なんてその辺の住人に提供させればいいのよ!! パンが無ければ略奪すればいいのッ!

そうよっ、聖女への寄進よ。ありがたがって差し出すわ」


「それが、この辺りの農村は、部下たちが遊び半分に燃やしてしまっていて、略奪した分以外は燃えているでしょう。そうでなくとも、千人規模の兵士を賄う量は調達出来なかったと存じます」


「千人? 一般兵は二千は居るでしょ?」


「いえ、敵軍との戦闘で、半分ほどに減っております」



 そんな馬鹿な。

 なぜそんなに、兵士が減っているの?


 聖(笑)では聖女のいるピレンゾル軍は、阿呆王子の軍隊を打ち破るのだ。


 負けるはずがない。


 では、なぜこんな状況に陥っているのだ?


 もしやダルフォルネの奴が、裏切ったのか?

 いや、あの馬鹿に私を出し抜く芸当が出来るとは思えない――


 ……ではなぜ?


 





 考えても解らなかったが、とりあえず状況を確認する。


 あの戦場から一日かけて馬を走らせ、野宿をしている。


 野宿など御免だったが、シュドナイが私の身の安全のためだと言って聞かなかった。民家の住人を追い出して寝床を確保すればいいのに――


 ひょっとしたらシュドナイは、野宿の方が私と密着できると考えて、こんな提案をしたのかもしれない。

 

 私はシュドナイの逞しい胸にこの身を預け、これからどうするかを考える。






 聖女十字軍に反乱が起こり、その混乱からここまで逃げてきた。

 逃げることが出来たのは、私とシュドナイの他は親衛隊が五人だけ。


 この数では流石に、阿呆王子を捕らえるのは無理だろう。

 それどころかここに敵の軍勢が来れば、私の方が捕らえられてしまうではないか。


 まずは戦力を確保しなくては――

 とりあえずは、ダルフォルネを利用する。


 あいつの持つ軍事力で、私を守らせればいい。


 

 そして、阿呆王子を捕らえてからの計画を大幅に変えなくては……。


 阿呆王子の捕獲に失敗した以上は、計画の変更はやむを得ない。



 偽聖女の公開処刑を早めよう。

 中央の大広場に、処刑場はすでに完成している。



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