第20話
「貴様の様な女に・・・」
何かブツブツ声が聞こえますが、私は空腹を満たす為に懸命に食べ物を摂取しております。
昨日から酒しか飲んでませんから非常に空腹です!
気まずい空気の中、空気の読めない男ザリチュさんが生き生きと私に食事を用意してくれた。
それはもう鼻歌が出そうなほどご機嫌で。
私はそれを有難く頂いております。
「ザリチュに何を言ったのかと聞いている!さっさと答えんか!!!」
スルッと無視しながら食事を進めていたら、予想していたよりも早くアエーシュマさんが切れた。
額に血管が浮いている。
「茶色は黒と赤の間の色。混ざった色って言いました。」
予想通りアエーシュマさんは固まった。
ここの人たちは、茶色は忌色で尊い色は黒と赤。
尊い色である黒と赤を混ぜたら茶色とか言ったら混乱するのは当然だろう。
これでしばらく、ゆっくりと食事が摂れる。
そして、この考えが出来る事が数少ない私の武器だ。
アエーシュマさんを忌色と思わない私。
きっと彼は私を嫌いになれない。好きになってもらう必要なんてない。
嫌われなければいい。
そうすれば私の命は重さを増す。
私は死にたくない。生きていたい。
それがたとえ駒としてでも。
桜子の様に使命なんていらない。宗佑みたいに誰かの大事な人になる必要もない。
私は死にたくない。
アエーシュマさんは私を何かに利用しようとしている。イヤもう利用されているのかもしれない。
でも、そんな事は別にかまわない。
私の命が重さを増すなら、利用すればいい。
私も生きる為に『アンタ』を利用させてもらう。
誰が後継者だか王様だかになろうと関係ない。
私を殺さなければ誰がなっても構わない。
私は死にたくない。
ただそれだけ。