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46.会社見学


 ……顔が生暖かい。

 シロコによる朝の恒例、目覚ましペロペロだ。今日も早起きで勝てなかったか。


「おはよう、シロ…コ……」


「わん!」


「おっ、おま! なんではだっゲホっ! ゴホッゴハっ!!」


 シロコ(人)が全裸で俺に馬乗りになっている。あまりの光景にむせてしまった。


『何を言っておる、シロコは寝る時いつも全裸であろう?』


「それはサモエモードの時だろう!」


『なんじゃそれは?』


 このドラゴン絶対確信犯だ!

 おかしいと思ったんだ、昨日タマちゃんが俺を気遣うよう「ガチャッ」…がちゃ?


「お兄さんどうしましたか!? 廊下を掃除してたらたまたまお兄さんの叫び声が聞こえたので私が持っている鍵でドアを開けて助けに来ました!! 決して覗こうだな…ん……て……」


 部屋の扉が開き、ティナちゃんが突撃して来た。なんか色々と宿の娘としてあかん事を言ってる気もするが、それよりバッチリと裸シロコに馬乗りにされている姿を見られてしまった。


「ひっ」


「ひ?」


「ヒャッホーウ!!」


 年頃の女の子が出してはいけない声で歓声を上げるティナちゃん。


「いやー、私てっきりお兄さん→シロコさんだと思ってたんですけどお兄さん←シロコさんだったんですね!! あっ! それともこの前のご褒美とか!?」


「な、何を言っているのかな?」


「もう種族を越えた恋人ってだけでもキャーなのにそれがお兄さん←シロコさんだったなんてもうどれだけ私をキャーさせるんですか!?」


 駄目だ、もうこの子が何を言っているのかさっぱり分からない。


「うぇっへっへ……朝からこんな事になってるなんて、わたし…わたしはもう!」


 今度はどこぞのおっさんの様に……指の間からチラチラ窺ってた乙女はどこにいった?


「あ、いけない、仕事に戻らないと! それじゃあ失礼しますね!!」


 キャー、って言いながらティナちゃんは部屋から出て行ってしまった。


「言うだけ言って投げっぱなしか……」


 嵐のような娘だ。


 なんか朝からドッと疲れた……シロコ、俺の頭を撫でるな。


「はぁ……シロコ、いい加減服を着ろ」


「わん……ふむ、仕方ないの」


 着替えろと言われ、すかさずタマちゃんにチェンジ。着替えの時はいつもこうだ。

 そして俺は紳士の嗜みとして後ろを向く。


「シロコも服を着れる様になれよ」


「そこは追々じゃな。どうせすぐ朝飯になるのじゃ、かまわんじゃろ」


「タマちゃんがシロコに甘すぎる……」


 もう駄目な子を甲斐甲斐しく世話する母親の様だ。




 …

 ……

「やっぱり護衛の依頼が多いんだなあ……」


 今日は冒険者ギルドを見学しに来た。そして依頼が張り出されている掲示板を見ている。

 ほとんど読めないが、俺にはタマちゃん翻訳が付いている。

 でも所々に日本語がある……これはきっと爺さんのせいだな、どうせやるなら全部やってくれ。


「…おい、アイツだろ? この間の……」

「なんで獣人の女が人族に……」

「しっ! 目を合わせるな」

「……熊?」


 やっぱり1日開けたくらいじゃ噂も沈静化しないよなぁ……。

 大体こう言うところは「おいおい、ここはいつからこんなヒョロがきが出入りする様になったんだ? お、いい女連れてんじゃねえか」みたいな事が起きるはずなんだが…あっ、それは茶耳で消化されたのか。


「おお! 登録してくれる気になったのか!?」


 奥の扉から出てきたムキムキマンが、俺を見つけて声をかけてきた。


「こんにちはマックさん、どんな依頼があるのか見ているだけですよ」


「職場見学みたいなもんだろ? いいぞ、なんでも聞いてくれ!」


 登録させたいのもあるのだろうが、このムキムキさんも親切だな。ゴドルさんと被りまくってる。

 丁度いい、色々と聞いてしまおう。


「結構他の国にも商人が行ってるんですね、戦争中なのに危なくないんですか?」


「あん? 知らないのか? 確かに戦争中っちゃあ戦争中だが、ほとんど戦いなんて起きてないぞ。下手に争って1度勝っても、疲弊した状態でもう一つの国と戦わなきゃならんからな」


「あー…なるほど」


 ずっと三竦み状態なのか。


「あっても小競り合い程度だな、だから護衛は魔物や野盗の対策が主だ」


「やっぱり野盗とかいるんだ」


「ああいるぞ、だから他所の国に行く時はその国の護館から人を借りなきゃいけない、これが結構高くつくんだよなあ」


 マジか、茶耳とかだったら道中の空気が最悪になりそうだな。


「獣人や魔族の野盗がいるんですか?」


「エルフの野盗もいるし、寧ろそっちの方が多いぞ? 人族だったら護館から借りる必要無いだろ」


「はぁ…」


 エルフ野盗とかイメージぶち壊しだな。


 でも他の国に行くとしたら登録するのもありかもしれない。多分冒険者としてなら他国にも入りやすいだろう。


「もし俺が登録するとして、シロコも登録出来るんですか?」


「おお! 大丈夫……だよな?」


「俺に聞かれても……」


「いや、人族の冒険者ギルドに獣人族が登録したなんて前例が無いからな。ちょっと聞いてくるわ!」


 あっ、……行ってしまった。これはもう登録する流れっぽい。


「……おい、あいつギルドに入るのか?」

「獣人族が人族のギルドに?」


 そらこんな感じで残されると注目も浴びるわ。


「シロコ、そこの酒場は食事も出してるみたいだ。早めの昼御飯とするか」


「ごはん!」


 掲示板に貼られている依頼書をピラピラして遊んでいたシロコを連れて酒場に向かう。この場は撤退させていただこう、ここで待つには視線が痛ス。



読んでいただいてありがとうございます。

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