1ノ11
半年以上経ってますが生きています。お待ちになっていた方々、大変長くなりましたがエターにするつもりはございませんので、長い目で見ていただきたく思います。では、本編をどうぞ。
キョウ達が輸送機に乗ってノーザン山脈に向かっていた頃、ケンジはエッジ達を引き連れてシュヴァーンへ戻る道を進んでいる最中、ケンジはふと振り向くと、エッジ達に注意を促した。
「とりあえずそろそろ俺の船に着くが、あまりのすごさに驚くなよ?」
「そもそも…こんな森の中に船がある。なんて言われても半信半疑だがな。さっきのアレを見なきゃ、だけどな。」
「ハハ、そらそうだ。っと、見えてきたぜ」
エッジの言葉に朗らかに笑いながら肯定するケンジは、そのまま前方を指を指す。
そこには自然あふれる森の中に似つかわしくない白銀の輝きを持つ巨大な船がそこにいた。
「すっ………げぇ………っ!!」
目の前に広がる光景に思わず言葉が出てしまう。
深緑の森の中にて輝く銀の箱舟、シュヴァーンの姿に目を奪われるエッジ達の姿にニヤリと笑みを浮かべる。
自分の船だ、褒められたり、このような輝くような瞳で見てもらえるのは嬉しいものだと、ケンジは思いながらハッチへと進もうとした瞬間、ハッチが開いた。
「あん?オルロ、まだそこまで付いてないのになんでハッチを?」
『ごめんなさいねぇ、艦長。ま、ある意味自業自得ね。』
「は?」
次の瞬間、ケンジの頭に衝撃が走る。
オルロの返答に疑問符を浮かべたケンジだが、すぐさま頭にぶつかる衝撃で後ろに倒れこんでしまう。
頭にぶつかったのはなんらかの部品であり、投げて来たのが誰であるのか痛む頭を押さえながらケンジは確信した。
あ、これいかんやつや、と……
ハッチから現れたのはグレーをツナギを着たポニーテールの女性、リョーコが一目で「怒っています」とわかるほどケンジを睨みながらズンズン近づいており、そんな形相に思わず身構えるエッジとクーゴはモミジを守るように立つ。女性はそんなエッジ達を気にせずにケンジに近づくと胸倉を掴んだ。
「あーんーたーはー!!何を勝手に売り物を使ってんのかしらぁ!?いっぺん反省しなさぁいっ!!」
「あばばばば……」
胸倉を掴まれ、思い切り揺さぶられているからか何を言っているのか分からず、リョーコの鬼の形相が余りにも恐ろしくて、ケンジの顔色が悪くなっていくのをエッジ達はただ見ているだけしか出来なかった。
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「あぁ…死ぬかと思った」
「私に話さないで勝手に売り物を持っていくからでしょ?まあ、話す時間がなかった事を聞かずに問い詰めたのは悪かったわ。ごめんね?」
襟を正しながら皮肉を言うケンジに申し訳なさそうに軽く頭を下げているツナギを着た女性、リョーコ。
そして話についていけないエッジ達三人にまたも聴きなれぬ声が聞こえてくる。
『何も言わないキャプテンも悪いわよ。喧嘩両成敗ね!』
「っ!?何者だ!どこから声が……!?」
「身構えなくて大丈夫よ。話しかけてるのは【この船】だから。」
「えっ?」
何度驚いたかわからないが、虚空からの声に身構えるクーゴ達に軽い調子で答えるリョーコに思わず振り向く。そこにはリョーコとケンジ、2人の隣にふよふよと宙を浮いている手のひら大の中心にレンズを持つ球体。そして落ち着いてきたのか、ケンジが補足するように口を開いた。
「紹介しよう!これが俺たちの艦であるシュヴァーンと、その頭脳であるオルロだ!」
『はーい!ご紹介に預かりました。私がこの艦のメインコンピュータ、オルロでーすっ!!」
球体のレンズ部分から光が放たれ、光が交差した地点から白いワンピースを着た少女がダブルピースをしながら現れる。
そのあまりの突拍子の無いことにクーゴは開いた口が塞がらなくなり、モミジは目を丸くして、エッジは目眩がする頭を抑えるのであった。
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エッジ達が落ち着いてから船内を案内したのは談話室。いろいろと参っていたエッジ達が落ち着けるように配慮しての事であった。
見慣れぬ物が置かれた談話室におっかなびっくりながらも興味が惹かれるモミジ、興味よりも警戒の方が強く出ているクーゴ、興味津々にあたりを見回すエッジと三者三様の反応を見せている。そんな三人に苦笑しながらケンジは口火を切った。
「ようこそ、俺の船へ。どうだ?驚いたろう?」
「あ、ああ……見慣れない魔道具を持っていたから他にもあると思ったが……まさかここまでとは」
感嘆するクーゴの言葉が嬉しいのかケンジは笑みを浮かべながらテーブルに置かれたカップに口をつける。
シュヴァーン内にある栽培プラント、そこで育てられている茶葉を使った緑茶を飲みながら話を続ける。
「ありがとよ。っと、早速本題に入るか。クーゴ達は傭兵団って聞いたからな。単刀直入に言うぜ?」
緑茶を飲みきり、佇まいを整えて真剣な表情でクーゴに尋ねる。
「これまでで俺たちみたいな奴らが来た事があるのって初めてなのか?アンタ達に見せたデバイス……魔道具って呼んだ奴を持った人間を見たのは」
「ああ、人間はかつてこの辺りにも存在していた……らしいが、いつの間にか居なくなっていた。と」
「村長のところで聞いた話と同じか……こりゃもうちょっと手を広げるしかねぇな」
クーゴの話を聞いて思うところがあったのか思案を始めるケンジ、そんなケンジをよそ目にリョーコとオルロはモミジに話しかける
『ああなったら、しばらく戻って来ないわよ?ところで、モミジちゃん達ってここの生まれなの?キョウ達から聞いたラビ族って人達の特徴とは違うみたいだし……』
「だけど、とっても可愛い!ねぇねぇ、他にはどんなビースティアンがいるの?」
「えっ、えっと…私達はここよりもずっと西からここまで旅をして来たんです。私やエッジは旅の途中で生まれて、それからずっとこうして旅をして生きて来ました。」
『あら、それだと二人のご両親は?』
オルロ の何気ない一言に伏し目がちに俯くモミジに少し機嫌が悪くなるエッジ。そんな二人に気まずそうなクーゴが疑問について答える
「モミジの両親はモミジが生まれてすぐに流行病で亡くなっているんだ。それからは、エッジの母親が親代わりだったんだが……」
「俺の親父は俺が産まれる前に死んだ。お袋一人残してな、そのお袋も三年前に亡くなった。んで、こうして今はクーゴとモミジと三人で傭兵やりながら旅してたが、今はあそこで滞留して次の目的地を決めてたんだ……この飲み物、なかなかイケるな。まだあるのか?」
クーゴの言葉を遮り、まくし立てるように続きを語るエッジはそれで話が終わりかと言わんばかりに出された茶を飲み、気に入ったのかお代わりを頼むと、オルロ達も聞かれたくない事を突く趣味はないからか給仕用ドロイドを使ってお茶を注ぎ、何かを察知したのかケンジに話しかけて、タブレットのようなものを渡して来る
「はい、おまたせ。ああ、キャプテン、あの二人から連絡が来てるわよ?とりあえず繋ぐわねー」
軽い調子でそういうとタブレット枠が出来るとそこにハコマルとキョウの顔が映し出される。
キョウはいつも通りの無表情だが、ハコマルの顔面ディスプレイには少し曇ったような表情が浮かび上がっている。そんなハコマルにケンジが労をねぎらう。
「おう、その様子だと成功したみたいだな」
『キャプテン、任務完了ですぞ。首尾は上々。自分達の大勝利ですぞ』
「それにしちゃぁ、随分と難しい顔してるじゃねぇか。なんか問題があったのか?」
『問題と言うべきなのか、こちらでも判断がつかないのですぞ。そこにクーゴ殿はおられますか?』
そんなハコマルの言葉に疑問符を浮かべるクーゴだが、問いに答えるべくディスプレイの前に立った。
「ここでいいのか?あー、ハコマル殿?聞こえるか?」
『感度良好、バッチリはっきり聴こえてますぞ。と言うか、船に来ていたのですな?いかがですかな?自分達のホームは。』
「正直、ここまでとは思ってもいなかった。かなり驚いているが……ハコマル殿、話とは一体……?」
『その事ですが、実は……』
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ハコマルはノーザン山脈に蔓延っていたゴブリン軍団の異質差を説明すると、話を聞いていたクーゴの眉間の皺も深くなっていく。
「………自己増殖だって?そんな話、見たことも聞いたことも無い。そもそも、あの山脈にゴブリンが……しかも君達が言うには軍団規模なんて普通有り得ないぞ。本当にそれはゴブリンだったのか……いや、君達を疑っている訳では無いしここまで来たら俺たちの範疇を超えているな」
「だったらどうする?明らかに異常事態なんだろ?俺たちじゃどこまで力になれるかは知らんぞ?」
「それについては、この件を皇都にあるギルドに伝えるべきだと思っている。あそこなら人材も豊富だし、俺たちよりも強い冒険者達もいることだしな。」
「ほほう?」
新たに出た「ギルド」、「冒険者」という単語にケンジは目をキラキラさせながら反応する。彼の中で何かに触れたのか、矢継ぎ早に質問しようとする所をリョーコが頭を叩いて止めていた。だが、ケンジの顔にはありありと「見てみたい」と書かれているように見えて、思わずクーゴはため息をつきながら訪ねるのだった
「案内はするから、よければ共に来てくれないだろうか?」
「是非っ!!」
「是非じゃないでしょーが。」
即答するケンジの頭をリョーコがどこから取り出したのかハリセンで思い切り叩く。ハリセン特有のいい音が響き、結構な力を込めたのか勢いよくケンジは机に突っ伏する。が、慣れているのかケンジは苦笑いを浮かべながら顔を上げる。
「キャプテン……どうせキャプテンの事だからシュヴァーンを使ってすぐに行こうーとか考えてるでしょうけど、そんなことしたら大混乱が起こるわよ?」
「確かに、流石にこの巨体が動けば目立ちすぎる。混乱を起こすのはやめてほしいが……」
「まぁ、そりゃそうだわな。かと言って、そんじゃ、コイツじゃなきゃいいんだろ?」
リョーコとクーゴの言葉に納得しながらも、他に案があるのか何か閃いたような-あるいは悪巧みをしているような-顔をしてそう言うのだった。
『これはまた、懐かしい物が出ておりますぞ?』
シュヴァーンへと戻ってきたハコマルとキョウが見たのは、なにやらカタパルトで整備を行なっているリョーコと、彼女が整備をしているものだ。
つるりとした卵型のボディに、側面には金色の羽の意匠のついた白い機体。シュヴァーンに搭載されている有人探査機だ。
「おう、キョウにハコマル。お疲れさん。で、お疲れの所悪いが早速次の仕事だ。」
遅れてカタパルトへとやってきたケンジ。後ろにはクーゴ達もついてきており、手を挙げてキョウ達を労うと早速本題へと入るのだった。
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『皇都……この辺り一帯の中心部の事ですぞ?』
「そうだ。で、今からそこに向かう。こいつを使ってな」
「まぁ、運転はハコマルにしてもらってキョウはお留守番だけどね?」
『お任せをですぞ!』
「おっしゃ、それじゃあ旦那達の準備が出来たらすぐに行くぜ?案内よろしくな!」
探査車両の車体を軽く叩きながら、これからの予定を伝える。ハコマルは二つ返事で答え、キョウも首を縦に振って肯定する。それを見たケンジはエッジ達へと振り向くと確認を取るのだった。
今日はここまで




