1ノ⑩
久々すぎですが生きてます。なんとか
一面雪で白一色に染まり極寒の吹雪が舞うノールド山脈、その白銀の世界を空から見下ろす大きな影が一つ
キョウ達が乗っている輸送機がノールド山脈の真上を滞空しながら何かを探している場面であった。
『いやぁ、一面白白白!!ここまで雪だらけな山を見るのは久々ですぞ』
「……元気」
機械の癖に雪景色に目を輝かせながらも輸送機を操縦するハコマルを見て呆れたようにつぶやくキョウだが、視線はまっすぐ前を見据えている。
今はまだ見えないが、ゴブリンロード達がそろそろ視界の端に入る距離まで近づいているのを察知し、キョウは装備を整えている。
耐寒スーツを纏い、その上から耐衝撃アーマーを装着しながら腰に光剣の柄を差し込むとハコマルに声をかける。
「……準備、オッケー……」
『了解ですぞ!そして目標も確認しましたぞ!!』
「ん………ん?」
『キョウ殿?何かおかしなことでも?』
ハコマルの言葉に視線をモニターに移すと、そこには遠目だがゴブリンロード達の一群が見え始める。
しかし白一色の世界の中で蠢く黒い物体が、データより多い。
もしもあれら全てがゴブリンロードが率いているのなら、オルロが渡してきたデータよりもかなり数が多い事になる。
「……データより……増えている?」
『なんと!?そんな事があり得るのですぞ!?』
キョウの呟きに慌ててレーダーの確認をするハコマル、そしてキョウの言う通りゴブリン達は現在進行形で増えて来ている。
確かに、魔物と言えど生物である為、交配による繁殖は可能かもしれないが、こんな状態で増え続ける事はあり得ないだろう。
「………ハコマル……操縦」
『はっ!手筈通りに行くのですぞ!!』
キョウが操縦桿を握り、ハコマルが操縦席から離れ上部ハッチへと向かって行く。
キョウはそれを見届けてから操縦桿にあるコンソールを操作するとハッチの開く音が聞こえる。それを確認すると上部に行ったハコマルに向けて連絡を入れる。
「上部ハッチ……展開。」
『ミッションスタート!ですぞ!!』
上部ハッチから身を乗り出して外に出たハコマルは下で蠢くゴブリンの軍団に自分の目で見据える。
『おお、何という迫力!!ですが、これ以上進まれると困るのですぞ!行きますぞ、武装展開!食らうのですぞっ!』
ハコマルがそう叫ぶと、体の各部からマシンガンなどの銃器が展開され、ゴブリン達へと放たれていく。
弾丸は真っ直ぐゴブリン達の肉体を貫き、倒していく。が、後続はそんなことを気にせずに仲間の死骸を踏みつけ先へと進んでいく。
そして踏みつけられてぐちゃぐちゃになった死骸から、また新たなゴブリン達が生まれて軍列に加わって行く。
常軌を逸したその姿に、機械であるハコマルですら混乱してしまいそうになる。
『ホアッ!?ななな、なんですぞーーー!?」
思わず叫んでしまうハコマルを気にせずにキョウはゴブリンの軍団を見つめる。どこかにこの異様な現象を引き起こしている何かが存在する。それが何かはわからない。だが、予想はできる。こう行った時の大元は、大抵決まっている。
モニターを拡大してこの軍団のリーダーであるゴブリンロードを探しだす。
「……見つけた。」
モニターに映し出されたのは、豪奢な鎧をまとった他のゴブリン達とは違うゴブリン、そしてその手に持つ杖のような物から妖しく輝く紫の光を放っている。見るからに怪しいのはそれだと判断したキョウは外にいるハコマルに通信を繋ぐ。
「……ハコマル、聞こえる?」
『拉致があかないですぞぉぉぉ!?って、キョウ殿?どうしたのですぞ?』
どうやら、少しでも進行を止めるためにひたすら弾幕を張っていたようだ。銃声が鳴り響いている。
キョウはそれも気にせずに伝えるべき事を伝えるべく口を開く。
「……今から送る座標、頭がいる。」
『頭?……はっ!そういう事ですぞ!!』
キョウの言いたい事が分かり、送られてきたデータ。距離はかなり離れているが、ハコマルにすれば距離など問題では無い。
『キタキタキター!この距離なら充分狙撃可能ですぞ!!』
データが送られ、今まで放ち続けていたマシンガンが折り畳まれて元に戻ると、今度は背中の部分が展開され、そこから複数の筒のような物が現れた。
それらが一つになっていくと、それはスナイパーライフルと呼ばれるものとなり、ハコマルのモニターにシャッターがかかる。
機械であるハコマルはデータにある座標に照準を合わせ、引き金を引くのだった。
ゴブリンロードは己の部下であり、自分の一部でもあるゴブリン達を見据えながら、生まれた瞬間から己の頭に刻まれた命令の為だけにこの大軍勢を率いている。
その命令とは、「ビースティアンを一匹でも多く滅ぼす」一点のみ。
その為にゴブリンロードは生まれ、その身に宿った力-無限増殖と呼ばれる能力で、文字通り自分の種族を無限に生み出す-を使ってビースティアン達が住む村へと進撃していた。
だが、そんなゴブリンロードには、二つの誤算があった。一つは本来ビースティアン達に気づかれるのはこの山脈を降りる直前だった筈と、もう一つはそれに気づいたのが、とんでもない奴らだったという事だった。
弓矢も魔術も届かない高度からの蹂躙を行う、見たことのない鉄の塊。
しかし、例え我が手足を百潰そうがこちらはその倍を生み出せばいい。そんな時である。鉄の塊からの攻撃が止んだと思った瞬間、額に衝撃が走ると同時にゴブリンロードの意識は永遠に目覚めることは無かった
機械であるがゆえに放たれた弾丸は正確無比に標的へと伸びて、その額を撃ち貫く。そして、ゴブリンロードの意識はあっけなく闇へと落ちると同時に増え続けていたゴブリン達の数も、これ以上増えなくなっていた。
『よっしっ!ど真ん中ですぞ!!』
「……….増えてない。叩くなら、今……」
キョウの言葉に答える代わりにハコマルは己に内蔵された兵器を展開する。
これから行われるのは戦いではなく蹂躙、気をつけるべきことはただ一つ
『雪崩を起こさない程度には加減するですぞ!』
その言葉と同時に引き金が引かれ、ハコマルの武装が火を吹いたのだった。
また次回




