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【三巡目】
「「「「じゃんけんぽん」」」」
今度は特に何もせず、純粋にじゃんけんを行った。
まぁ若干な心理戦はあったが割愛。
今回も俺が一番となった。
さて、と。
この傷があるってことは、これが王様の箸だな。
俺はまた迷いなく箸をとった。
──が。
「なんだと!?」
俺が引いたのは、最初に引いた一番の箸であった。
なんでだ、確かに木目は王様の箸と似てはいたが傷はついていなかったはず。
だから間違える筈が──
「ないって?それは油断しすぎじゃない」
また二番目だったマニが、王様の箸を持ちながら言った。
なぜマニがその箸を持っているんだ。
そう疑問に思ったが、すぐに解が出た。
「成る程、傷を付け足したんだな。やってくれるじゃあないか!」
そう、マニは傷を付け足したのだ。
二巡目の時に。
全く、本当にやってくれたよ!
「みんな引き終えたわね。じゃあ一番の箸、王に跪きなさい!
今度こそ堂々と俺を指しながら宣言したマニ。
驚いて本当の事を思考してしまったからな、ばれるのはしょうがない。
だが、素直に敗けは認めないぞ。
俺はマニの前に膝をつき、空いていた左手をこちらに寄せ、満面の笑み。
そして──
「なんで御座いましょう、我が麗しの君」
そう言って手の甲にキスをした。
いっよっしゃぁぁぁぁぁ!
これだったら間違いなく、マニは嫌悪感を示すはず。
この際恥ずかしさなどどうでもいい。
一矢報いる事が重要なのだ。
さぁ気持ち悪くなるがよい!
「何となく、だよ。何となく貴方が側にいて欲しくて……」
何っ、のってきただと!?
なら良いだろう、そっちが折れるまで付き合ってやろうじゃねぇか!
「それはそれは、私にとって誉れです。大切な方から頼られるなんて、ね」
「あら大切な方って……嬉しいわ。私もそう思っていたのだから」
「なら私たちは似た者同士なのかもしれませんね」
「きっとそうですわ」
──というやり取りを3分。
耐えきれなくなった俺は自暴自棄になって暴れ、テーブルの小皿を落としてしまった。
ミーシャさんの頭上の上に。
【四巡目】
「また私の勝ちね!三番、二番に水かけよ」
ミーシャが水まみれになった。
【五巡目】
「よし、俺だ!一番、二番の耳に息を吹き掛けだ」
ミーシャ大爆笑
【六巡目】
「まーた私が王よ。さて四番は熱々大根の刑ね!」
ミーシャ、舌やけど。
そして【七巡目】
先程から俺の負けが多くなってきている。
ええい、もうこの際最初の考えは捨ててやる。
何がなんでもマニを屈服させなければ気が済まない。
あらゆる知識を駆使してじゃんけんを──
「スペシャル王権使用。次の王様が私ね」
やろうと思ったらこれだよ畜生。
マニも口開けてぽかーんじゃないか。
「あ、あの皇女様?」
変な空気と化す中、宇佐美様が真意を確かめようとエイレに声をかけた。
とてもありがたいけど、流石に今聞いたら、これなんかされるのでは?
エイレの性格を考えるに。
子孫壊滅キックとか、人体急所五段突きとか。
もしそうなってしまう場合1ファンとして助けねば。
俺は何が起こってもいいように立ち上がり、エイレの行動を警戒する。
だが反応は思ってもみなかったものだった。
頬を膨らませ、涙目、そしてプルプル震える。
まるで駄々をこねる子どものよう。
何だこの反応と思っていたら、俺氏ふと気づいた。
エイレ、幼女やんけ……
それを思い出した時にはもう遅かった。
「わたしも、王様やりたかったのに。ワイワイしたかったのに!いっかいもかてないんだもん!!」
もう大泣きである。
……よく考えればそうなるわな。
子どものこと考えず、大人がムキになって本気でやってたらそうなるに決まってる。
これは素直に謝罪しよう。
そう思いつつマニの方見ると、同じように思っている様子。
俺らはエイレに謝罪をした。
許してもらえないかと思ったが案外すんなり。
ただ、後で何かをするとだけ言われた。
少し怖いが、非はこちらにある。
少しだけ大人な俺らはそれを受け入れてやるべきだ。
うん、そのとおりだマジで怖いけど。
「……さて、気をとりなおして。私が今回の王様になるわ!命令はただ一つ、四番になった人は一番を取り押さえなさい!!」
すっかり機嫌が戻ったエイレ、堂々と命令をおこなった。
しかし取り押さえるだけか。
てっきり俺とか何かされるのかと思ったが。
まぁ実害がないのであればいい。
何の策略もせず、何となく引くとしよう。
「って俺が四番かよ」
言ったその通り、押さえる役が俺であった。
エイレに仕組み何て出来ないだろうし、これはある意味天罰なのかもしれないな。
となったら受け入れる、それだけ。
……まぁ一番がマニじゃなかったら、俺が死ねる案件になってしまう訳なのだが。
さて誰なんだろう。
俺は周りを見るが誰も手をあげない。
あれ俺のこと嫌いなの、と心配し始めた頃、テーブルの下から震える手が弱々しくあがった。
「わ、私でございます」
床に倒れこんでいたミーシャさんだった。
そう言えば色々とツキに見放されていたな、ミーシャさん。
ことごとく対象に選ばれていたし、トラブルも絶えなかった。
そのせいかあちらこちらがもうボロボロだ。
特に顔が明らかやつれてるのがヤバイ。
「だ、大丈夫ですか?」
思わず声をかけ、手をかして起こす。
するとミーシャさんは泣き顔になり、俺の手を握って──
「はい、チェスト!」
頭を思いっきりエイレに蹴られた。
「あースッとした!」
再び床に倒れこむミーシャさん。
この幼女、やはり容赦ないな。
一体この後何が起こるのか、マニと一緒に怯えながら、鬼畜幼女の高笑いを聞くのであった……




