6-7[ショウサイド]
「まじか、まじかー」
激しい爆発音が会場に響く中、俺は一人入り口で立ち尽くしていた。
理由は言うまでもない。
物凄い早さで縦横無尽に敵を斬る厨二吸血鬼。
様々な武器を使いまくる守銭奴武器商人。
厨二魔法で撃滅する天然兎さん。
きのこジャンキーなきのこ中毒の人。
決戦兵器を持ち出してきたアンドロイド。
もう色々と状況が把握できず、頭が痛くなってくる。
「にしても、もうほぼいないなー」
俺はその場に腰を下ろし、体操座りをしながら呟いた。
何を隠そう、敵が僅か三分で全滅しかけている。
課金してる精鋭だろう敵達が。
俺らのパーティーの本気はこれほどまで凄かったのか、と実感。
あんなにあった憎しみが、今では哀れみに感じるほどだ。
「合掌くらいはしておくか……」
俺は座ったまま、今もなお消え逝く敵達に向けて手を合わせる。
今度は喧嘩する相手を考えようね、という念をこめながら。
「……あら?」
そんな最中、目の前に転移用の魔方陣が突然現れた。
どうやらまた増援のようだ。
さっきはスルーされてミーシャの餌食になってしまったのだが、今回はどうであろう。
もしまた気付かれなかったら、一足早くログアウトしようかな。
そう思いながら魔方陣を見ていると、その中から二つの影が現れた。
「全くもって情けない」
「全くだよマカオ。精鋭なのに少人数にやられるなんて」
俺は驚愕した。
勿論二人しか出てこなかったこともあるが、一番はキャラが濃すぎることである。
二人とももりもりマッチョのお尻顎。
一方はピッチピチの運動着を着、マカオと呼ばれた男性は、これまたピッチピチのワンピースを着ている。
これは視覚的に辛い。
と言うか汗の臭いもヤバイ。
と言うか全部ヤヴァイ。
「まぁ可哀想だから仇はとってやるとしよう」
「ツンデレだね、マカオ」
マカオと呼ばれる男は、手に太くて長いチェーンを持ちながら俺に近づいてくる。
「そこの敵よ、私はチェーン使いの男太マカオ。我が同胞の無念を晴らすため、いざ参らん!」
そう勝手に名乗りだすと、チェーンを高速回転させながら攻撃をしてきた。
チェーン故、只の直線攻撃と考えて行動をするが、何故か避けにくい。
目の前で伸びたように感じるのだが、仕掛けも見つからない。
魔法の類いか武器の性能なのか。
……気づけば俺は壁に追い込まれ、避ける手立てを失っていた。
「これで終わりだ!」
まるで蛇のように襲いかかるチェーン。
これは間違いなく終わった。
そう覚悟している中、何故か俺の体は無意識に動く。
不規則な武器の動きに合わせ、まるで絡みつくように。
攻撃という攻撃に反応し、動きという動きに反応し。
気が付けば全ての攻撃を防ぎきっていた。
「なんだと!?」
驚く敵。
だがそれは俺も同じだ。
何故こんな芸当ができたのか分からない。
頭がクエスチョンで一杯になっていると、目の前にナビ子さんテロップが出た。
【レベルアップで覚えた技のようですよ。一日一回限定で、即死級な技を受けるとき自動で発動する完全防御技。──“自動防御”】
ほう、それは強いな。
最弱種族にはとってもいい技だ。
まぁ一日一回ってのがデメリットだが。
ともかく、まだ動けるわけだ。
挽回のチャンスは残っている。
【更に言いますと、もう一つ新しい技を習得してます。これも一日一回のみですが身体強化される強力なものです】
「まじか!」
それは面白い事になってきた。
どのくらいの強化になるか分からないが、少しでも強くなるのであれば俺は勝てる。
敵が混乱して動いていない今、このチャンスしかない。
俺は技欄を確認してから、その覚えたばかりの技を叫んだ。
「行くぜ、“身体強化光主”!!」
──そう宣言すると、俺の体は光に包まれていった。
光は鎧となり、小手となり。
光は武器とコートを包み。
あっという間に光の剣を持ち、鎧を着けた聖騎士のような姿に変わった。
「ほう、これは凄い。ならばワタシも本気を出さねば」
敵さんは感化されてか、持っていたチェーンの他にもう一本出してきた。
回転する二本のチェーンはまるで嵐のよう。
普通の俺なら即死級の筈なのだが、今の俺はどうなのだろう。
さて、実験がてら敵を倒すとしよう。
「チェストォォォ!」
敵は素早い動きで間合いを詰め、渾身の力でチェーンを振り下ろした。
またもや蛇のような不可解な動きを見せるが、目で追うことが出来、全て剣で防いだ。
「なかなかやるな。ならばこれはどうだ!」
今度は腕を封じようと絡ませようとしてくるが──遅すぎる。
俺は剣で高速の鎖を断ち、目に見えぬ早さで相手の背後に立った。
「チェックメイトだ、マカオさんよ」
そう言って敵の首筋に刃を向けた。
この時勝ちを確信した俺だったが、相手は伊達じゃなかった。
「驚いたが、甘いな!!」
何と敵の背中から発射口のようなものが出て、高速でチェーンを発射。
超至近距離での一撃であったが、寸でのところで回避することが出来た。
「なんですってェ!?」
敵は確実に当たると思っていたようで、外れたのに驚きすぎて口調が変わっていた。
確かにそのくらい驚く事であろう。
本当に凄い早い攻撃が目と鼻の先から放たれたのに、回避されてしまったのだから。
……俺的には、こんなに強くなった事に吃驚仰天であったが。
まぁこれなら楽に倒せそうだ。
「マカオだけでは辛そうだ。俺もいくとしよう」
敵と間合いをとった時、マカオの背後からもう一人。
一見銛のような槍を持ちながらこちら側に来た。
「俺はイモホゲ。早速だが──殺りあおうじゃないか」
槍をクルクル回しながら言うイモホゲという人物。
ぱっと見強そうとは思えないのだが、武器の方に驚異を感じた。
神話に出てくる英雄が持つ、伝説の槍(のレプリカ)。
ゲイブルグと言えば誰でも分かるであろう。
投げれば三十の鏃となって降り注ぎ、突けば三十の棘となって破裂する。
レプリカ故、ある程度劣化してると思うが、それでも充分な威力を発揮するはずだ。
俺は警戒しつつ、イモホゲの死角に瞬時に移動し、渾身の力を込めて斬りつけた。
だが──俺の剣は空を斬る。
「いい斬撃だったぜ。俺を倒すほどではないがな」
敵の姿を探す中、突如後ろから敵の声がした。
勿論俺は振り返るが、敵の姿が無い。
「ほらほらこっちだぜ」
またしても背後から声がする。
……なるほどそーゆーことか。
敵の背後にまわれる、そんな感じの能力があるのだろう。
これは少しばかり面倒だが、対策できなくはない。
俺は剣を腰のところで構え、抜刀の体勢をとった。
「光牙天輪!」
その声と共に放たれた斬撃は、丁度俺を中心に光の円を描き──
「……?!」
イモホゲの胴を真っ二つにした。
「イモホゲちゃん!?」
「次はお前がこうなるぜ、マカオ!」
死亡判定となり、消え行くイモホゲを唖然と見ている敵をよそに、俺は剣にありったけの力を込める。
そして剣を振り上げ、構えた。
「真・光牙滅斬」
そう言って下ろした剣は、極大の輝く光の斬撃となり、敵ごと辺りを消滅しながら消えた。
「ちょ──」
……ごめん、訂正。
スタジアム半分ごと消滅させちゃいました。
ミーシャとシーメルをも巻き込みながら。
い、いやまさかこれ程高威力だと思わないじゃない?
強化されたとは言え、吸糖鬼の技だし。
だから僕には非が──
【そう言って大丈夫だと思うのですか?】
「思わないので素直に謝罪をしたいと思います」
俺の近くに来ながら、呆れ顔の様子を見せるナビ子さんに、俺は冷や汗をかきながら答えた。
仲間を巻き込んだ故、いったいどうなることやら。
特にシーメルはヤバイ。
幼馴染みだから、リアルの方で首絞められそうだし。
「みんな無事のようね。……二人やられたけど」
そうしている間にエイレと宇佐美さんもこちらに来ていた。
エイレの言い方が棘あるけど、反論できないのでスルーしよう。
「あの、一度ログアウトした方が良くないですか?皆さんいませんし……」
【その方が良いですね。運営からそうするよう呼び掛けていますので】
「よし、では早速しましょう。ショウは二人にちゃんと謝りなさいよ」
そうエイレは言い残し、宇佐美とエイレはすぐにログアウトした。
……俺もログアウトして謝罪文を作るか。
一応ナビ子さんに挨拶してからにしよう。
「ナビ子──」
【リティル】
「ぷぇ?」
【私はリティルです。そんなだっさい名前ではありません】
「……じゃあリティルさん、また」
【ええ】
──何で俺、ゲームキャラとフラグ立ててるの?
そう思いながらログアウトした。
因みに。
あの攻撃で、皆でぶちのめそうと誓った受付を倒しました。
やったぜ。




