5-1
「けん、けん、ぱ!つきましたよーエイレちゃん、ショウさん!!」
皆様、おはよう、こんにちは、こんばんわ。
ヘロヘロヘトヘトになっているショウでございます。
なぜ疲労困憊なのかは、前にも言った宇佐美さんの天然から。
乗り場間違えて、一人だけ真逆の方向行ったからね、宇佐美さん。
それを追いかけたり、抑止するのにあり得ないほどの時間を要した。
そんなお陰で体力限界、おまけに祭りの前々日に到着という素敵仕様。
あり得ないくらいの人の量に、俺の動悸は高くなるばかりだ。
空を見て気分転換をはかる中、エイレと宇佐美は歩きながら会話をしていた。
「一先ず大会にエントリーしてから、宿を探しましょう。馬車置き場あるみたいだし、それでいいわよね宇佐美さん?」
「そうですね。強いて言うなら軽食をとりたいところでしょうか。体力がちょっと減ってしまいましたので」
「じゃあサンドイッチとか食べながら行きましょうか」
そう言って彼女らは早足で行ってしまい、俺を置いていってしまった。
いや、俺に声かけろよ。
一声くらい何の労力にもならないよな。
最悪引っ張ってくれても良いじゃないか。
俺、ずっと空を虚ろに眺めている、危ない人みたいになってるけどさ。
そんなやつ仲間と思いたくないだろうけどさ!
と、そんな責任転嫁からの自暴自棄になっていた俺だったが、ここで正気に戻る。
そんなこと考える前に、何とか合流しないといけない事に気付いたから。
さてどうしよう。
動きたいが、前を見たら間違いなく動けなくなる。
上を見ながら歩くのも自殺行為だし。
あれこれ悩む内に、俺はあることを思い出した。
そう、俺には非リア充という縁で結ばれた、ナビ子さんがいるじゃないか!!
ナビ子さんがいれば、なんとかたどり着くことができるはずだ。
俺は早速小さな声で呼ぶ。
「ナビ子さーん」
「……あれ、ナビ子さん?」
「ナビ子さん、もしもーし」
あれ、いくら待っても何の返答もない。
何でか悩む内、俺は大事なことを忘れていたことに気付いた。
それはナビ子さん、お休みの件。
何やら大会の準備や防犯の為やらで、ナビ子がアップグレードするらしい。
それ故今は反応できないとのこと。
……うん、俺やばい。
ちょっと動悸が強くなりすぎて気持ち悪くなってきた。
俺は思わずしゃがみこんだ。
「おーい、大丈夫ー?」
そんな時、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
これはチャンス!
見知らぬ人ら駄目だが、知ってる人物ならまだ大丈夫なはず。
俺は全ての気力を振り絞り、顔をその声のする方に向けてみた。
「えっ?」
「やっぱ君か。コート着てたから最初は分からなかったわ」
「えっ?えーっ!?」
俺に声をかけてきた人物、それは──
一話の1-5に出てきて、ゲームの商品を現実の金で売りさばいたところを、ナビ子さんの通報で逮捕されて、犯罪臭香る言葉をを言い捨てた武器屋の女の人じゃないか!!
何故こんなところにいるんだろう。
というか逮捕されたんじゃなかったっけ?
そう考えた途端、武器屋の人はいきなり口を開いた。
「何でここに、しかも逮捕された筈なのにいるんだー!!……って考えてるわね?」
「よ、よく分かりましたね」
「商売者たるもの、人の表情から何を考えているか読まないといけないからね。それくらい分かるっての」
自信満々にいう武器屋の人。
凄いと思うけど、それを詐欺に使うなんてな。
なんか勿体ない。
「詐欺ではない、ただの金集めだ」
勿体ないを通り越して、宝の持ち腐れだ、これ。
というか毎回毎回読むのをやめてほしい。
会話パートしか続かなくなるじゃないか。
「メタ発言おつかれ。さて私が釈放されてる訳は、ただ単にちゃんと賠償金を払ったからよ。んで、それから別アカウントでこのキャラ引き継いで、祭りに出るためにここに来たからいるの。理解した?」
「把握したよ」
何故だろう、嘘を言っている気がする。
だが、取り合えずは良しとしよう。
ツッコミ入れた後が怖いし。
そう心に刻んでいると、相手が話題を変えて話してきた。
「ところで君も祭りに出るの?」
「まぁ、ね。仲間が2人いるから一緒に出ようって誘われていたんだ」
「ふーん……」
何やら明らかに考えてるようなポーズをし始める武器屋の人。
なんだろう、嫌な予感がする。
「じゃあ私が会場に案内してあげるわ。見た感じ君1人で行けなさそうだし」
それはありがたい。
ありがたいんだけど、裏がある気がしてならない。
多額の金を請求するとか、ぼったくりな値段で武器を買わされるとか。
でも俺1人で行けないのも事実。
「……ありがとう、よろしく頼む」
俺は武器屋の人の提案に同意した。
どうなるか怖いが、会場に行く事が先決だ。
何かあったら、最悪エイレに押し付ければいいだろうし。
お金の恨みは大きいのだ。
黒い笑みを浮かべる最中、武器屋の人は胸に手を当てて、改まった表情で口を開いた。
「折角だし自己紹介しようっか。私はヴァイオレント=シーメルネレット。長いからシーメルって呼んで頂戴。種族は人間で、職業は商人よ」
と、そう言って武器屋の人──もといシーメルが手を差し出した。
俺は立ち上がりながらその手を握り、後に続いて名乗った。
「俺はショウ。種族は吸糖鬼だ」
「ショウ、ね。じゃあ早速案内するから、ちゃんと遅れずついてきてよ?」
「了解だ」
それを聞いたシーメルは少し口角を上げ、直ぐ様前を見据え歩いていく。
俺は遅れないよう深呼吸しながら、シーメルについていった。




