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それから暫く経ち、現在泊まっている宿屋の一室に全員が集まった。
ここで各々の様子を確認しよう。
まず俺。
俺は普通に椅子に座っている。
だが腕を組んで、右足で貧乏ゆすりをしていた。
極度のイライラから。
表情も、もしかしたら怒っているものかもしれない。
けれど自分では確かめられないため、どうなっているか確証できなかった。
俺の中では顔に出さないよう頑張ってるつもりだし。
おっと、長くなった。
さて次はエイレだ。
エイレは明らかに不機嫌な表情をしていた。
というか殺気立っている。
下手したら人を殺してしまいそうなくらいに。
ずっと右手にナイフを握ったままだし。
そんなエイレの目線の先にいる、仲間の一人宇佐美。
宇佐美さんは床に正座をして、頭を上げず項垂れている。
そして頭に「反省中」と書いてある紙が貼られてあった。
「さて、どうしてくれようか……」
エイレがナイフを宇佐美に見せつけながら、鬼の様な形相で呟く。
勿論宇佐美はそれに恐怖し、微弱ながら震えていた。
流石に可哀想になった俺は、エイレに制止を促すが、やっぱり無理でした。
「まさか貴女の天然のせいで、今日稼いだバイト代が消えるなんて夢にも思わなかったわ!」
「うう……ごめんない……」
だがそれでも止まらないエイレ。
あらゆる言葉の暴力を向けていった。
俺はそれに若干引きつつ、改めて請求書を見た。
そうこの請求書。
これは宇佐美がバイト中に割った皿やら壊した機械やらの物であった。
幸い二万ちょっとの請求で済んだが、今の俺らには大打撃なわけで。
仕事終わった瞬間からこんな風にエイレが怒りを爆発させている。
「どうしましょうね」
一通り言い終えたエイレが俺の方を向きながら言った。
どうしようも何もなんだが。
「元はと言えば、エイレ達がカジノで金をとかしたせいだからね?協力はするけど、方法は考えなさいな」
そう言うと「うっ」と言う言葉と共に、エイレも項垂れた。
しかし、考えろとは言ったものの、このままでいるのは流石にまずいな。
今でこんな有り様じゃ、エントリーどころか大陸間の移動が出来るかさえ怪しい。
コミュ障の俺とて大会には参加したい。
……しゃあない、ここは俺が一肌脱ぐとしよう。
「ナビ子、いるよな?」
【はい居ますが】
「ここら周辺に以下のアイテムがあるか検索してもらって良い?」
【了解です】
この会話を聞いていた二人は顔を上げ、不思議だと思わんばかりの表情を向ける。
いったい何を始めるのか、何を行うのか。
彼女らがその疑問を言葉で紡ぎだそうとした時、ナビ子のテロップが大々的に表示された。
【検索にかけたアイテムは、この町から半径5キロ圏内に三ヶ所反応がありました】
「よし、それはよかった」
俺はまず一安心し、胸を撫で下ろす。
そして聞くタイミングを完全逃してしまった二人の為に、この行動理由を説明することにした。
出来るだけ簡単に伝えられればいいのだが、俺にそんなトーク能力は無い。
伝わらなかったら最悪そこは擬音も使ってやるか。
俺は二人に声をかけてから説明し始めた。
「今ナビ子に検索かけてもらったのはあるアイテムなんだ。それは売れば一万以上になるから、あっという間に目標額到達だ」
「そんなアイテム本当にあるのかしら。聞いたことないわよ」
と、エイレが口を挟む。
確かに以前にも言ったが、序盤でレア度の高いものは手に入らないと言って過言じゃない。
しかもそんなアイテムならクエスト依頼が来てそうな筈でもある。
では何故それが入手できそうなのかと言うと、答えはアイテムの種類にあった。
その種類とは──
「食材。今検索かけてもらったのはとある食材なんだ」
「食材って、そんなに高いですっけ」
宇佐美が疑問を投げ掛けると、すかさずナビ子がテロップで返答をする。
【現実でも松茸やキャビアがあるように、この世界でも高級食材はあるのですよ。本来は入手が難しいのですが、ショウさんが手に入れようとしてるのは、殆ど存在が知られてない物です。なので高確率でゲット出来るでしょう】
「……と、まぁそんなとこだ」
少々文が長いせいか、少し読み終えるのに時間がかかった二人だが、全て見終えたとき各々感心しているようだった。
なんでそれを知っているのか、そんなものがあったのか等。
良くは分からないが、期待を込めた眼差しなのは間違いない。
そんな表情でエイレは俺に訊ねてきた。
「色々聞きたいけどその前に、その食材の名前は何なの?」
「それはだな……な・い・しょ!」
殴られた。




