第62話 ついきゅう
この作品は全三章で構成するつもりです。話の更新される日が不安定なことがあります。一応週一以上の頻度で更新するつもりですが、できなかった場合はどうかご容赦ください。
また、主人公を決めつけてこの作品を読み進めると、その主人公と決めつけたキャラに対して落胆の感情を抱く可能性があるので、この作品に主人公はいないと思いながら読むことをおすすめします。
桂唯賀「さぁ、、残るは一人だ。」
佐藤要(まずい、どうする?木崎は桂の首に結構な時間触れていたからある程度、あいつについての情報は獲得できたはず。そのなかに、勝ち筋があるのかもしれないが…)
木崎印「つ、、くぅぅぅ、、あ、」
毒の蝕みに悶え苦しま、うずくまる姿がそこにはあった。
佐藤要(どうする?まともに聞き出す時間も余裕もない。)
しかし、迷っている間にも敵は動き出してしまう。この絶望的な状況に頭を悩ませ、意識を自身の脳に集中させたいたため、桂唯賀が近づいてきていることに気づくのが遅れる。気づいたときにはもう目の前に彼はいたのだ。桂唯賀の右手が佐藤要の頭に狙いを定め、徐々にその距離が近づいてゆく。
佐藤要「くっ!!」
慌てて距離を取ろうにも佐藤要に桂唯賀の右手から逃れることはもうできなかった。
佐藤要(まずい!!やられる!?)
桂唯賀(もらった!!)
そう確信した瞬間、桂唯賀の右腕は静止した。何者かに制止させられたからである。桂唯賀の右腕は掴まれ、寸前のところでその右手が佐藤要の頭に触れることはなかった。
桂唯賀「しぶといですね…原田さん。」
嫌悪と困惑の感情が入り乱った表情を浮かべ、さぞ不満にしている。
原田九老「そう簡単にくたばると思うなよ。」
桂唯賀(おかしいな。もう全身に毒が回って喋るのも困難なはずなのに。)
桂唯賀「原田さん、、何があなたをそこまてさせるんですか?」
原田九老「さぁな、、ただ、私はここで犬死にするのだけはどうにも我慢ならないらしい。」
桂唯賀は自身の原田九老に掴まれている右腕を無理やり振りほどき、距離を取る。原田九老はその距離を好機だと感じた。
原田九老「佐藤、ファーストでいい。武召喚をしろ。」
佐藤要「え、あ、あ、あぁ。ファースト」
つべこべ言っている暇はないと感じたのか、困惑しながらも武召喚を行う。右手には巨剣が投影される。そして原田九老は右手に剣を持った状態である佐藤要に一歩一歩近づいてゆく。佐藤はその行動に戸惑いを隠せず、しばらくただ突っ伏しているだけだった。目の前まで近づいてきた老人が次に取った行動はこの場の誰も予想しなかったことだった。
目の前で少し笑みを見せ、佐藤要の右腕を掴む。掴まれたことに驚き、そのあとに何をしようか察されたため、掴まれた手を振りほどこうとするが、それよりも早くに佐藤要の右腕を自身に近づける。その腕の先にある巨剣が行き着く先は自身の腹部であった。腹部は巨剣によって貫かれ、大量の血が放出される。
原田九老「フフフフフ、、さぁ最後の戦いだ。【ソイーブル】!!」
桂唯賀「!?」
武召喚数値が10消費される。身体能力は飛躍的に上昇し、体は全盛期のように軽く、俊敏に動ける。
原田九老(いい感じに命を消耗できそうだ。)
そう心の中でひそかに喜び、音速にも近いスピードで桂唯賀のもとへ近づく。
桂唯賀(やられた…!!)
原田九老「ファースト!!」
武召喚を行い、彼の右手に鉄パイプが投影される。その鉄パイプを桂唯賀に目掛けて振り下ろす。
桂唯賀「くっ!フォースデバイド!!」
振り下ろされる鉄パイプを武召喚で生成した二つ分の数値が織り込まれている剣を両手に投影し、その二つの剣で受け止める。その直後、受け止めた衝撃でその剣はどちらも粉々に砕け散る。丸腰になったことを確認したのち、鉄パイプを改めて振り直す。鉄パイプと桂唯賀の腕が激突し、その鉄パイプの威力に体は耐えきれず、衝撃で後ろへ吹き飛ばされる。足が地面との摩擦を繰り広げ、何十メートルか強制後退させられる。
桂唯賀(さて、どうしたものか。まさか原田さんがこんな行動に出るとは。)
本来であれば、原田九老は桂唯賀によって受けたポイズンにより、自身に巡る毒に侵され脱落するはずだった。だが、佐藤要に剣を投影させ、それを無理やり自身の腹部に刺させることによって状況が変わった。原田九老が毒で脱落した場合は、桂唯賀に数値が渡る。だが、剣を刺させれば、その刺し傷が致命傷と判定され、原田九老が脱落した際に佐藤要に数値が行き渡る。福山幸多とともに、参加者狩りを行っていたから潤沢な数値を保有しているはず。そして、佐藤要はクラッシャーであり、20の数値でクラインドを放つことができる。【ワンイーター】という必中の攻撃を桂唯賀に与えることができる。つまり、もしこのまま原田九老が脱落すれば佐藤要がさらに驚異的な存在となるのだ。それを回避させようと思えば、原田九老に追加で攻撃を与え、大量出血による消滅より、早くに消さないといけない。
桂唯賀(だけど、私に攻撃の隙を与えないためにソイーブルをした。そしてもし、私がさっき毒を仕込んだ人の種性核がアナリストなら…)
佐藤要「木崎!!」
毒のダメージにうずくまっている木崎に駆け寄り、しゃがみこむ。原田と桂は交戦中でこちらへ来る様子はない。木崎印はアナリストで桂唯賀に一定時間触れていた。彼を倒せるのはもう自分しかない。そのために情報がほしい。そんな思いで駆け寄ってきた。ひかし、駆け寄ってきたのはいいものの、今の木崎印は喋られる状態なのかと気づきどうしようかと頭を悩ませるのも束の間。木崎印は自身の頭に手を触れてきた。一瞬疑問に感じた後、すぐに脳内に言葉が流れてきた。
木崎印(聞こえるか?)
佐藤要(え?お、おぉ。これどうなってるの?)
木崎印(アナリストの種性の一つだ。相手に触れる際にその対象の脳内を探ることから始まる。脳内から情報をもらうこともできればその逆もできる。)
佐藤要(だからこんなテレパシーみたいなこともできるのか。それで、桂唯賀について何かわかったことは。)
木崎印(あいつの所有する数値は少ない。だが、そんな少ない数値でも強力な武召喚ができたのは【創造のバランス】をとっていたからだ。)
佐藤要(……何それ?)
木崎印(武召喚をする際、俺たちは想像することで武器を作り出したり、身体能力を強化させることができる。サモンやデバイドのように重ねがけや振り分けて強化することも全て脳の決断によって決めている。それと同じように、武器の威力や特性、弱点などを精細に想像することでファーストでも強力な武召喚となるんだ。例えば、この剣は一度使えばすぐに消滅するが、当てることができれば一撃で倒せる。そんな風に、武器の強み、弱みを想像する。ファーストでできる強化の範囲を全体ではなく、一部に集中させることでその一部の強化量は普通のフィフスサモンとほぼ同じになる。)
佐藤要(つまり、あいつを倒すにはあいつが設定した弱点を見つけ出してそこを突くしかないのか?)
木崎印(あぁ、だがやつは想像以上に頭がきれる。少なくともクラインドに関しては対策を練っているはずだ。)
佐藤要(そもそも武召喚すること自体警戒されるはず。でも、原田が作ったこのチャンスを逃すわけにはいかない。)
原田九老(なぜこいつらのために自分の全てを捧げたのか…?)
桂唯賀との戦闘を繰り広げながら、そんなことを考え振り返る。
原田九老(私は何がしたかったのだろう?)
今から10年前、原田九老は日本で産まれ日本で育った。成人になる頃には自衛隊を志し、彼が24になる頃にその志は叶った。そこで銃火器の扱い、身体の育成、サバイバル技術を学び身につけた。過酷な仕事であるのはいうまでもないが、その仕事に誇りとやりがいを感じていた。彼が47のときだ。とある国で戦争が起きた。日本とは全く関係のない、遠くにある国同士のいざこざだった。その片方の国に原田九老の友人が在籍している。その友人は中学校からの友人であり、名は頂川一子という。頂川と原田が最後に音声での通話をしたときに、最後に頂川が放った一言、【助けてくれ】と。その一言だけで原田九老は決意を固め、単独で戦場へと赴いた。兵役させられている頂川を死なせないため、頂川の妻と子供を悲しませないために。その思いで死線をくぐり抜け多くの兵士を殺害した。
神楽士郎「ただ残念なことに、、頂川一子は兵役していたわけではなかった。」
無駄な赴きであったのだ。そもそも可能性があまりにも薄い。兵役している友人を助けるなんてのができるわけがない。だが、それでもやってみせると意気込み戦場へと足を運んだ結果は助ける対象がいないだ。おまけに、頂川のいた国が戦争を行った理由は自国の圧倒的な利益の追求。
原田九老(だが、私はそのことに対して特に怒りを感じていない。なぜなら、、、思ってしまったのだ。【人を殺すのが楽しいということを】。)
戦争は終わり、無事日本へ帰還し、そのあとは平穏に暮らしていたが、冥界ではその平穏は許されなかった。奴隷のように働き、圧倒的な力によって監視員に逆らうことは許されない。何もかもが支配されて世界に何か別の希望を求めたのか気づいたら幸奪戦争の招待に応じていた。福山と手を組んだのも長年隠していた趣味の殺傷行為を存分に行えるからだ。そんな中、少しだけ自分についてわかったことがあった。自分はただ、殺戮が好きなわけじゃない。意味のある殺し、本当の強者との戦いが好きなんだと。
原田九老「フッ、、この幸奪戦争について興味が湧いたから調べてみようと思ったがやはりやめだ。」
桂唯賀「は?ん!?」
原田九老の持つ剣は横に桂唯賀の顔面へ向かう。その寸前で頭を後ろに下げ、ギリギリのところで回避する。原田九老の動きはさらに勢いを増していた。これがフィナーレだと、これが最後であると表しているかのような。
原田九老「フハハハ!!!!」
原田九老(なぜこいつらのために自身の全てを捧げたのか?答えは私が追究することを諦めたものを代わりにやってもらうためだ。)
原田九老「老害は若者にそっと道を譲るものだからな!!」
桂唯賀「まじで急になんなんですか!?」
豹変しまくっている原田九老の姿に戸惑いを隠せない。その戸惑いが枷となり、反撃ができない。
原田九老「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
桂唯賀「くっ!!!」
原田九老の振り回す鉄パイプが桂唯賀を飛ばした。防御の姿勢をとりつつ、なんとか吹き飛ばされることだけは回避する。
桂唯賀(武召喚する隙もないとは。)
だが、その瞬間、原田九老の動きは止まった。もう、時間切れである。立ち尽くしたまま全身から大量の血を流し落とす。
原田九老「ふっ、ここまでか。」
さっきの豹変ぶりからまた落ち着きを取り戻し、いつもの調子で少し笑みをこぼす。その笑みとともに、黒くその老人は消えてゆく。
脱落
ゲーム開始から六日と五時間
残り参加者9人
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。




