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第18話 アビス姫が俺に惚れた理由

オーシャンの演出によって、俺とアビス姫は謎の宣伝をさせられていた。


「我々は、地球と全く違った環境になった星に住む宇宙人です。

女性は貴重な存在であり、男達がこぞって求婚をしてきます。


そんな中、一人のお姫様が一般の男性に恋をしました。

果たして、その恋は無事に実るのでしょうか?」


「主人公とヒロインのおかしな戦いを引き続きご覧ください!」


こうして、料理対決の後半戦が始まった。


「はい、美味しかったのは、アビス姫の和食です!

スカイは、ただシリアルに牛乳をかけただけですからね。


かなりの愛情の差と、食生活の差が出ていました。

よって、アビス姫の勝利です!」


「全く勝負にならなかったわね!」


オーシャンの審査により、アビス姫が圧勝していた事が判明した。

俺は、今まで食べていた料理が否定されて、絶望の淵をさまよう。

俺の最高だと思った朝食が否定された瞬間だった。


「バカな……。

俺のシリアルが、完敗しただと……。

栄養分では互角だったはずなのに……」


うなだれている俺に、2人は同情する。


「うーん、あれで勝てると思う方がどうかしているわ。

そういえば、スカイの食事って気にした事がなかったけど、相当ヤバイんじゃないかしら?


ああ、アビス姫がトラッシュだと悟ってくれれば作りに行ってあげるのに……。

まあ、私の本来の高貴さを発揮すれば、顔も性格も違うように見えるのは仕方ない。

それほど魅力的だということね!」


「それは分かりませんが、早く良い食事を摂って欲しいものですね。

なんか、昼食と夕食も確認したほうが良い空気になってきましたよ?

昼はビスケット、夜はカップ麺とかが容易に想像されます……」


「それ、確かにヤバイわ!

忙しいからと手抜き料理をしているかも……。


どうする?

結果は分かっているけど、昼食と夕食の料理勝負もする?」


「うーん、やっぱり他の対決にしましょう!

勝負に勝てば、スカイの栄養分は保障されますから……。

むしろ、男性の食事事情なんて知りたくありませんよ!」


「そうですね……」


こうして、俺とアビス姫の料理対決は終了した。

この後は、飛行艇に乗って、植物園を見に行く予定だ。

飛行艇に乗り込み、オーシャンが運転する。


「はあ、はあ、はあ、空を、飛んでる……。

怖い、怖い、怖い、早く、適当な所で降りよう!


ゴーグルがない俺は、飛行艇に乗るのも1時間が限界なんだ。

それ以上は、緊張し過ぎておかしくなってしまう!」


俺は、飛行艇の手すりにしがみ付き、飛行艇が揺れるたびに震えていた。

ある時など、飛行艇が大きく揺れて、俺は気絶しそうなほどヤバイ状況に陥っていた。


「なんか、ごめん……。

まさか、ここまで自信がないとは……。

とりあえず酢昆布でも食べて元気を出して!」


アビス姫は、歯がカチカチとさせている俺に酢昆布を咥えさせていた。

その旨味によって、俺の気分を紛らわそうという作戦だ。


俺は、アビス姫を見て、トラッシュの事を思い出していた。

そして、勝負方法を思いつき、こう挑戦状を叩きつけた。


「アビス姫、勝負だ……。

次行くところは、植物園。

果物を使ったフレッシュなジュース対決だ!


それで、美味しいジュースを作り出した方が勝ちだ!

必ず、トラッシュを助け出してみせる!

俺は、負けない!」


アビスは驚いた顔をするも、笑顔になって言う。


「ふう、頑張ってね!

私も手加減しないわ!

全力で叩き潰してあげる♡」


俺が彼女の正体に気付いていない事は残念だが、俺がヤル気を出した姿を見て嬉しそうにしていた。

後は、俺が彼女を倒せるだけの実力を、ゴーグル無しでも発揮するだけだ。


俺達は植物園まで行き、様々な果物を見て回る。

俺は、リンゴを集めて行き、その材料でジュースを作る事にした。


アビスはオレンジを集め初めて気が付いた。

自分が、この勝負が負ける可能性が高い事を……。


(しまった!

料理勝負で圧倒的だったから油断したのかしら?


この勝負、オーシャンさんがどの果物を好きかで勝敗が決まるといっても過言ではない。


ジュースをミックスする方法もあるけど、素人だから変にアレンジしない方が美味しいのは決まっている。


これならば、私とスカイの腕の差はほとんどあり得ない。

やるわね、スカイ、私をのるかそるかの接戦に引き込むとは……)


アビスはそう思いながらも、顔は笑っていた。

手加減はせずに、良い果実を選ぶ。


それでも、オーシャンの好みによっては敗北してしまうのだ。

数分間の時間を使い、俺とアビスのジュースが完成していた。


「さてと、今回はジュース対決か……。

健康的なジュースもあるのだろうが、今回は味で選ぶ事にするよ。


どっちのジュースが飲んで美味しいかで勝敗を決める。

2人とも、覚悟は良いね?」


「はい!」


「はあ?」


覚悟を決めたアビスの声と、疑問を感じた俺の声が同時に発声された。

この時、アビスとオーシャンは悟った。

俺が再び敗北の道に足を踏み出している事を……。


「じゃあ、まずはアビス姫のジュースから飲んでみようか?

オレンジ色の美しい飲み物だ。

半分だけ飲み、後半分はスカイのジュースを飲んだ後で飲む事にしよう!


最悪、どっちのジュースも不味い場合があるからね。

まあ、大方の予想はついているが……」


「ぐぐっとお飲みください!」


オーシャンは、一気にジュースを半分飲んだ。

そして、俺のジュースに手をかける。

今度は、一気に飲み干す気のようだ。


緑色をした謎の液体が、彼女の胃袋へ流れ込んでいった。

彼女は途中で止める事もなく、一気にコップを空にしていた。

そして、女性らしからぬゲップを一声漏らす。


「うーん、勝者はスカイだ!

思ったよりも苦味がなく、毎日でも飲む事ができる。

対してアビス姫のは、ちょっと飲み難いと判断した。

よって、勝者はスカイだ!」


アビスは、多少驚きを感じるも、自分の敗北を悟って微笑む。

俺の前に手を突き出し、手袋を外すように指示していた。

白い手袋が包んでいる手は、指がシュッと伸びていて美しく感じる。


「おめでとう、スカイ。

さあ、私の手袋をゆっくりと外しなさい。

そうすれば、真実を知る事ができるようになるわ!」


俺は緊張して、アビス姫の手袋を徐々に外していった。

長い手袋を上から徐々に下へ脱がしていく。

アビス姫も緊張して顔が赤くなり始めていた。


「まあ、絵図ら的になんかエロいですね。

まあ、スカイにとっては、アビス姫の秘密を知る事ですからね。

ほぼ全裸にするのと同じ感覚ですよね?」


「さすがに、そこまでは……」


俺は、アビス姫の手袋を外していくと、次第にある事に気付き出した。

お姫様という割には、指先にマメができ、所々で血が滲んでいる。

まるで、トラッシュの手のようだと感じていた。


「これは……」


「さすがに、もう分かったでしょう?

この手は、数年かけて農業をして初めてできる手よ。

納得できないかもしれないけど、私がトラッシュなの。


元々、トラッシュという人間は、私が作り出した架空の人物よ!

そして、この前見たトラッシュの剥製は、私を真似して作った蝋人形だったわけ。

ずっとずっとあなたの事が好きでした!


私は、殺されていくトラッシュ達を救いたいと思い、私自らがトラッシュを演じる事で農業の厳しさや、トラッシュ達が生きていけるかを計画していたんです。

自分をトラッシュと偽り、農園にトラッシュが仕事をできる状況を整えました。


そんな時に、トラッシュの事を愛してくれるスカイに出会ったの。

でも、私は元々王女だった。

そのままでは、スカイと結婚できません。


それで、スカイが私と結婚できる地位になるように応援していたんです。

そして、最初の仕事で、王女である私と出会い、恋人にする計画でした。

でも、あなたは本来の私ではなく、トラッシュの方を愛していた。


トラッシュを消すのも計画の内でした。

そこで、私がトラッシュ達の大切さを知って、全面的に保護する事が狙いでした。


その計画をするにあたり、恋人のスカイを射止める為にトラッシュを大切に扱う事が自然と判断して、そのままスカイを利用してしまいました。


スカイはトラッシュが死んだと思っていたようですけど、実際には私だったのです。

しかし、真実を知った今、スカイが私に惚れてくれるかどうか……」


アビス姫は、俺を見つめていたが、徐々に自信をなくして、俺から目をそらす。

最後は、振られる恐怖で震えていた。

俺は、しばらく黙ったままでいる為、アビス姫は不安が大きくなる。


「あの、やっぱり許せませんよね。

ずっと小さい時から騙していたようなものですから……。

もちろん、スカイのゴーグルを渡したのも私ですよ……」


俺は、思わずアビス姫を抱きしめていた。


「あん……」


「子供ができない体と言うのは、嘘なの?」


「あれは、スカイがトラッシュとの結婚を諦めて、本来の私と結婚するように仕向けるつもりでした。


トラッシュが子供を産めないなら、スカイと子供を作れるのはアビス姫だけですから。


でも、オーシャンさんが現れて、かなり不安になりました。

なので、ムリやり結婚という強行策に出たんです」


「良い匂いだ……。

アビス姫、ゴーグルがないと何もできない俺でも良いのか?

この星には、まだまだ良い男がいるかもしれないんだぞ……」


「トラッシュとして、初めて見た時から決めていました。

将来、この人と一緒に生きていこうと……」


「分かった!

結婚しよう、アビス。

そして、幸せな星を作っていこう!」


「はい!」


こうして、俺とアビスは正式な恋人になった。

数日後には、2人で結婚式を挙げる事になる。

俺達は、しばらく見つめ合ったままでいた。

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