表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/25

第16話 俺とアビス姫の結婚!?

 俺は焚き火をして、調理し易いように場所を整えていた。

 アビスが魚を包丁で調理して、オーシャンがカニを茹でる準備をしている。

 飛行艇には、飲み水が完備されており、その水を使って調理をする。


「ふう、スカイは相変わらずの状態みたいだけど、とりあえず火は起こせるわよね。

 薪を拾って、火を点けるだけだもの……。

 まあ、コツがいるとは思うけど……」


「大丈夫だろう。

 ついでに、お湯を沸かして、コーヒーでも淹れてもらおうか?

 あいつの淹れるコーヒーは、抜群に美味いぜ!」


「うふふ、知ってる♡」


「愚問だったか。

 じゃあ、お願いして来るよ。

 あんたは魚の血でベトベトの状態だし……」


「もうすぐ終わるわ。

 後は、水で洗って完成よ!

 カニは、コーヒーと一緒にできるくらいかしら?」


「ああ、調理とかした事なくてな。

 特に、生き物は……」


「うんん、大丈夫ですよ!」


 オーシャンは、俺にコーヒーを淹れるように要求して来た。

 ついでに、カニを茹でるお湯も準備してくれと言う。

 俺は、焚き火が出て来た後で、お湯を沸かせるように工夫をしていた。


「できたぞ……。

 できたてのコーヒーだ。

 カニももうすぐ茹る」


「わー、ありがとう!

 やっぱりスカイは優しいね。

 実は、相談があるんだけど……」


 アビスがそう言うと、俺はトラッシュだったかと思って彼女の顔を確認する。

 顔は同じだが、オッパイの大きさによって彼女が別人である事を再確認し、再び落ち込んだ表情になっていた。


「ああ、俺もあなたに聞きたい事があったんです。

 トラッシュがどこにいるか知ってますよね?

 会いたいんです、会わせてください!」


 アビスはさっきまで美味しそうにコーヒーを飲んでいたが、突然に顔が曇り始めた。


「そういえば聞いた事がなかったわね。

 その答えを聞いたら、彼女がどこにいるかも教えてあげるわ。

 スカイは、トラッシュのどこに惚れているの?


 見た目は、私と全く一緒だし、オッパイは私の方が大きいわ。

 違いなんてあるのかしら?

 そこを指摘してくれたら、真実を教えてあげるわ!」


「やっぱりトラッシュは生きているんだな!

 どこにいる、教えてくれ!」


 俺は、トラッシュが生きていると知り、アビスの胸ぐらを掴む。

 アビスの顔が、女王の表情に早変わりした。

 手で俺の両手を払いのけ、服装の乱れを直してこう言う。


「先に、私の質問に答えなさい!」


 俺は、彼女の冷酷な目を見て怯んでいた。

 トラッシュと似ていると思った表情は、俺の一言によって冷酷な女王へと変化したのだ。

 ドライアイスが冷気を出しているような圧倒的なプレッシャーを感じている。


「俺は、トラッシュの助けで郵便配達員になる事ができたんだ!

 もしも、このゴーグルが無ければ、俺は空を飛ぶ事も、戦闘で勝つ事もできなかった。


 だから、トラッシュを幸せにして恩返しがしたいんだ!

 それだけじゃない。

 俺は、トラッシュを愛しているんだ!」


「ふーん、じゃあ、真実を教えてあげるわ、スカイ。

 トラッシュはね、そんな歩行器(緊張しないようになる気休めのゴーグルの事)を付けているようなヘタレな男は嫌いって言ってたわよ!」


 アビスは、俺のゴーグルを弾き飛ばし、海の中へ投げ込んだ。

 ちゃっぷんと音がした後で、俺はゴーグルが無くなったことに気が付いた。

 慌てて海に拾いに行こうとするが、アビスがそれを止める。


「どこへ行くの?

 海へ入りたくないんでしょう?

 まあ、私を押し退けて取りに行っても良いけど……」


「この、退けよ!」


 俺は、アビスを殴ろうとするが、ヨロけて目標が定まらない。

 逆に、アビスの反撃のカウンターを食らって、砂浜に倒れ込んだ。

 そのまま抵抗もマトモに出来ず、アビスの攻撃を受け続ける。


「ぐお、がっ!」


「ふう、つまらないわ……。

 スカイ、最後にチャンスをあげる。

 1週間後に私とあなたの結婚式を執り行うわ。


 それまでに歩行器無しで歩けるレベルになりなさい。

 それが、あなたが好きな子を手に入れれるラストチャンスよ。

 それができないなら、あなたは大した男じゃないという事ね……」


 アビスが俺から離れると、俺は一目散に海へ入って、ゴーグルを探し始めた。

 薄暗い天気によって海面の温度が冷たくなり、俺の捜索を難行させていた。

 俺は、びしょ濡れになっても構わず捜索する。


「オーシャン、コテージに行きましょう。

 私達は、お風呂に入って寝るわ。

 ときどきスカイが生きているかどうかを確認するくらいで良いわ。


 王になる男なら、あんな歩行器は卒業しなければいけないのよ。

 それが出来ないなら、スカイに私を愛する資格なんてないわ!

 農場でトラッシュに慰めてもらうだけのつまらない男だったのよ……」


「スカイが立ち直るまで、私があんたを守るよ!

 しばらくは安心してな。

 あんた、命の危険も大きいんだろう?」


「まあ、色々とね……」


 こうして、2人は俺を海に残してコテージへ向かう。

 2人で温泉に浸かったり、体を洗い合ったりしていた。

 風呂上がりのシャンプーの匂いをさせながら、たびたび俺の捜索を見に来ていた。


「やっぱり心配かい?

 スカイなら、この試練を乗り越えられるはずだろう?

 あんたが惚れた男なんだからさ!」


「ふふ、本当に姉ができたみたい。

 もしもオーシャンさんに妹がいたら、好きな男を獲得するために殺したりとかするのかな?」


「うーん、惚れた男がいないからね……。

 惚れた女の子なら、隣にいるんだけど……。

 この娘が王女様ならきっと大丈夫っていう感じにね!」


「あらあら、私、レズっ気はないですよ?」


「私も、結婚するなら男が良いさ。

 でも、あんたの仕事をサポートする為に、一緒にいたいとは思うよ!

 あんたの隣に立つ男性は、スカイしかいないと信じてる!」


「そのカッコイイ男の子は、今海でゴーグルを探していますね。

 全く、何やってんだか……」


「まあ、そう悲観的にならない方が良いよ!

 好きだった女の子の初めてのプレゼントだったんだ。

 そりゃあ、どんな事をしても手に入れたいだろうね……」


「全く、そんな物、海には無いのにね!」


 アビスは、手に俺のゴーグルを持っていた。

 俺には遠過ぎて確認できないが、それは確かに俺のゴーグルだった。

 オーシャンでさえ、驚いて言葉を失う。


「海に、弾き飛ばしたんじゃないの?

 どうしてあんたが持っているのさ?」


「ふふ、ゴーグルのゴムに指を引っ掛けて、海に落としたように小石を投げ込んだだけだよ。

 スカイにとってだけじゃなく、私にとっても大切な物だからね。


 ポケットにしまっておいて、スカイが緊張を克服した時に返そうと思って……。

 まあ、超簡単な手品みたいなものだよ。

 明日の朝まで探していたら、無理やりにでも海から上がってもらうわ!」


「末恐ろしい娘だね、あんた!」


 俺は、体温が低下して、体が震え始めていた。

 オーシャンは、俺にタオルを投げて体の冷えを抑えようとする。

 アビスも俺にこう警告して来た。


「後1時間だけ一緒に居てあげるわ!

 それで諦めて帰って来なさい。

 これ以上は、スカイの健康も危険な状態になり得るからね。


 一応、私とのデートなんだから、私をエスコートする体力くらい残していなさい。

 朝になれば、海の中も見やすくなると思うし……。

 それで見つからなければ、諦めるしかないわね……」


 そう言って、アビスは花火をしながら俺が上がるのを待ち始めた。

 手で持つ花火だったようだが、この星では高級品だ。

 火薬や石油などの化学によって火花を演出する。


「ふう、温泉に入ったのに、また花火の匂いが付いちゃったわ。

 スカイ、女王様命令よ!

 私と一緒に温泉に入って、体を温めなさい。


 このままいったら、あなた風邪ひくどころか、死ぬわよ?

 特別サービスとして、私が背中を洗ってあげるわ!

 それと、オーシャンさんはお酒の追加を飲むでしょう?」


「ああ、そろそろ冷えて来たところだ。

 スカイをムリやり温泉まで連れて行こう!

 ドクターストップという奴だ!」


 アビスとオーシャンは、抵抗する俺をムリやり温泉まで連行する。

 2人ともタオルを巻いて、俺とともに温泉に浸かり始めた。

 俺は、縄で縛られて、ムリやり温泉で温められていた。


「くっそう、俺はこんな所で時間を潰している暇はないんだ!

 早く、ゴーグルを見付けなければならないんだ……」


「その必要はありませんよ!

 ゴーグルは、もはや海の藻屑となり、あなたの手の届かない場所にありますから。

 それをサルベージ(潜水して探し出す事)できるのは、王女である私だけです。


 つまり、スカイがあのゴーグルを手に入れる一番の近道は、私を納得させて結婚する事です。

 それが嫌なら、私を腕っ節で屈服させて、王宮を乗っ取る事ですね。


 私にいう事を聞かせられるくらい強い本来のスカイならば、楽勝でしょう。

 実際、スカイがこの『島(二スィ)』では最強です。

 スカイが単独で乗り込んで来た場合には、私に止める術など存在しません」


 アビスは、俺にタオルを巻いた状態で近づいて来る。

 温泉の水が滴り、妖艶な美しさを醸し出していた。

 俺が見つめていると、彼女の蹴りが飛んで来た。


 俺はヨロけて転びかけると、アビスが体重をかけてアッタクして来る。

 彼女は押し倒すような形で俺に倒れ込み、護身用のナイフを首に突き付けて来た。

 顔を息がかかる程度まで近づけて、俺を挑発する。


「もっとも、今のあなたでは、小娘の私にすら勝てません!

 ゴーグルも、トラッシュも欲しいのでしょう?

 少しは自分で歩き始めて、私を逆に押し倒してはどうですか?」


 俺は、自信なさげに地面を見つめていた。

 アビスは、怒ったように俺から離れて、温泉に浸かる。

 俺は、その場で倒されたままになっていた。


「ふん、つまらないですね。

 私と互角の勝負をする事さえ敵いませんか?

 なら、ルールを変えましょう!


 どんな勝負でも良い。

 スカイが私に勝ちさえすれば、どんな願いも聞いてあげましょう!

 ゴーグルを探すでも良し、トラッシュと結婚するでも良いです!」


 アビス姫は、そう言って啖呵をきる。

 ちなみに、彼女は温泉でも海でもずっと専用の手袋を付けて、自分がトラッシュである事がバレないようにしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ