第10話:静寂の後の告白と、温もりの手
――ガシャアアンッ!
蓮さんの放った一撃により、敵のボスは床に崩れ落ち、残りの男たちも一斉に武器を捨てて両手を挙げた。
荒れ果てた倉庫街に、再び静寂が戻ってくる。
雨の音だけが響く中、蓮さんはゆっくりと立ち上がり、乱れた前髪をかき上げた。
彼の肩にはかすり傷があったけれど、その瞳にはどこか安堵の色が浮かんでいる。
「……怪我はねぇか、お嬢」
「はい、私は大丈夫です。蓮さん、その傷は……」
私が近づいて彼の肩に手を伸ばそうとすると、蓮さんは私の手をそっと握り返した。その大きな手は、火薬や雨に濡れていても、とても温かかった。
「……俺は大丈夫だと何度も言ってるだろ。それより、お前が無茶しやがって。本当に心臓が止まるかと思ったぞ」
彼はそう言って、普段の強面からは想像もつかないほど、切なげで、けれど強い眼差しで私を見つめた。
「怖かったか?」
「少しだけ……。でも、蓮さんが一緒にいてくれたから、怖くありませんでした」
私の言葉に、蓮さんはため息をつきながらも、私の身体を自分の胸に強く引き寄せた。
タバコと香水の匂い、そして彼の体温が全身を包み込む。
「二度と、あんな危ない真似はするな。お嬢が傷つくくらいなら、俺はどんな敵だろうと全部潰す」
「蓮さん……」
極道の若頭として、裏社会の頂点に立つ彼が、こんなにも私のことを想ってくれている。この同居生活が始まってからの数日間は、私にとって決して忘れることのできない大切な宝物になっていた。
「帰るぞ。涼風組には、俺から父親に言っておく。もうお前を縛るようなことはさせねぇ」
「え……?」
「お前は、俺の隣にいればいい。俺がお前を、一生かけて守る」
それは偽りのない、彼の本当の想いだった。
冷たくて不器用な彼の、どこよりも甘い愛の告白。私は彼の背中にそっと腕を回し、小さく頷いた。
「はい。よろしくお願いします」
冷たい雨も上がり、雲の隙間から柔らかな月明かりが差し込んでいる。
二人の未来が、少しずつ動き出した夜だった。
第10話・完
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