表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奥野、細道へ  作者: 白い黒猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/25

みんなの孫

 俺たちはアパートにも戻らず、二木荘を訪れている。

 ここは以前来た時と変わらず、縁側で談笑している人、集まって編み物をしている人、将棋や囲碁を打っている人――それぞれ自由な時間を楽しんでいるようで、何ともゆったりとした時間が流れている。


「あら、松尾くんこんにちは。どうしたの?」


 祖母の旅立ちの連絡をくれた河合さんが、俺たちを見て不思議そうな顔をする。


「春立さんを、お風呂に入れさせてもらいたくて」


 そう言いながら、俺と百代に両手を繋がれている春立さんに視線を向ける。


「春立霞です。誕生日は……」


 そんな春立さんに、河合さんは温かい笑みを返す。


「あら、初めまして。私は河合暮です。誕生日は今はヒ・ミ・ツね。

 かなりお転婆してしまったのね。びしょ濡れじゃない」


 一人でお風呂やシャワーができなさそうな春立さんを、男の俺たちが洗ってあげるのは少し悩ましい。相手が子供っぽいとはいえ、18歳の女性となると尚更である。


「あら、どうしたの。可愛い子」


「濡れちゃって、服が張り付いて気持ち悪いわよね?」


「綺麗、綺麗にしましょうね〜」


「そうだ! こないだカズちゃんが縫った浴衣、似合いそうじゃない!」


 俺たちが話をしていると、お婆ちゃんたちが集まってくる。


「河合さん、私たちがお風呂に入れるわよ」


 そう言って、あっという間に春立さんを連れて行ってしまった。

 その様子を河合さんは笑って見送る。


「助かった。あの子、一人でお風呂とか入れないみたいなんだ。

 着替えも一人ではちょっとな感じで」


 松尾の言葉に、ふーむと河合さんは声を出す。


「それはアパートでの生活はキツいかもね〜」


 春立さんは、一人暮らしには明らかに向いていない。


「とはいえ、コロコロ環境を変えるのも春立さんには負担だし」


 松尾は春立さんの消えた方に視線を向ける。

 リモートで河合さんと松尾と杉風理事長が会議を始めたので、俺と百代は少し離れることにする。


「あら、笠緒ちゃんのお孫さんじゃない。髪染めたのね。若者はいいわね。かっこいいわ!」


 知らないお婆ちゃんたちが話しかけてくる。


「祖母がお世話になりました!」


「いえいえ、こっちがお世話になっていた方よ! 今日はどうしたの?」


「同じアパートの仲間が海ではしゃぎ過ぎてびしょ濡れになってしまったので、ここでお風呂を借りにきました」


 俺の言葉を聞いて楽しそうに笑う。


「海で! いいわね! 青春って感じで。波に向かって叫んだりしたの?」


 俺と百代は苦笑して首を横に振る。


「それはしていないけど、水切りをしていました」


 百代の言葉に、うんうんとお婆ちゃんは頷く。


「楽しそうね。明日私たちもしてみようかしら」


「コイツ、水切り上手いので、講師としてつけましょうか?」


 百代の言葉に、お婆ちゃんたちはきゃっきゃと喜ぶ。


「イケメン講師付きの海遊び、いいわね!」


 そんな他愛ない会話を楽しんでいたら、先ほど春立さんを連れて行った集団が戻ってくる。

 春立さんは青い大きな花模様の浴衣を着ていた。

 髪の毛は結構凝った三つ編みにされていて、可愛らしく整えられている。


「へぇ、似合ってるね。可愛いよ」


「馬子にも衣装だな! いいじゃん」


 俺と百代の言葉に、唇を少し突き出して照れた顔をする。


「カズちゃんがこないだ縫っていた浴衣ね! 素敵!」


「可愛いわ〜。お人形さんみたい!」


 一気にお婆ちゃんたちのアイドルとなっている。

 俺と百代はその熱気に押し出されてしまう。

 さっき最初に春立さんに近づいてきたお婆ちゃんが、話し合いをしている松尾たちのところへ行く。


「よかったら、だけど。あの子、此処で暮らした方がいいのでは?

 此処だと目も多くて、皆んなで面倒見られる

 それに男三人暮らしでは、なかなか大変なのでは?」


 松尾は悩む。


「しかし、アパートの仲間とも少し馴染んできたところではあるし……」


「それはそれで良いじゃない。交流は続ければ。

 此処には人生経験豊富な人たちがいるしね。任せて頂戴!

 それに、あの子をお風呂に入れていてなんか感じたの。若い子と触れ合うのって楽しくて」


 孫を構うみたいに春立さんを構うお婆ちゃんたち。

 その愛情に少し戸惑っているものの、恥ずかしそうにはにかんでいる春立さん。

 お婆ちゃんから何かお菓子を受け取り、春立さんはそれを食べて嬉しそうに笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ