友達になれるかな
食後は、三里さんが置いていったアイスクリームを三人で食べる。
「明日はどうするの?」
百代が少し首を傾げて聞いてくる。
百代がするこういった幼さを感じる仕草に、彼が17歳でまだまだ子供であることを痛感する。
「それが正解か分からないけど、また森に行ってみようかと思っている」
「そか」
そう言って、アイスをスプーンで掬って食べる。
「俺は、新入居者のお迎えがあるから、少しバタバタしているかも」
俺は視線を松尾に向ける。
「だったら、俺もお出迎えするべき?」
松尾は曖昧に微笑み、顔を横に振る。
「いや、初日はそっとしておいてあげた方がいいよ」
百代がポツリと言う。
「環境の変化に少し混乱もしているからね」
松尾の言葉に、自分はどうだったっけ? と思い返す。
松尾に案内されてアパートに来て、部屋を少し整えて……引っ越ししたばかりだからとスーパーに挨拶用のタオルを買って……。
「俺もそうだった?」
百代は片方の口角だけ上げて笑い、首を横に振る。
「いや、初日から普通だった。だから俺たちと、なんか違うんだと思ったんだ」
「そか」
普通に、大学進学のために引っ越してきたんだと思って過ごしていた。
でも、改めて思い返すと色々おかしい状況だったんだよなと思う。
もう、すでに俺は大学に通学していたはずなのに、新入生だと思っていたこと。
あと、新生活を始めたばかりだというのに、家族や友人に全く連絡を取ろうとしていなかったこと。
「確かに奥野は、すごく自然にこの世界を受け入れてくれたよね。
柔軟性と適応力が高いのかな〜」
松尾が俺を見てニッコリと笑う。
「え? それって、奥野が俺たちと違うパターンで来たからじゃないの?」
松尾は少し苦笑いをする。
「百代たちのような状況で来界した方よりも、もっと大騒ぎするパターンの方が多いよ」
「へぇ。そうなんだ。
まあ、そうか。
俺たちのような状況だと、もう自分の身体のことをある程度理解しているからか」
「そうかもしれないね〜」
なんか百代と松尾はナチュラルにこういった話をする。
「あのさ、この世界においてタブーな話題ってないの?
新しい人が入る前に聞いておいた方がいいかなと」
うーんと松尾は悩む。
「奥野だったら、何も問題ないと思うけど。社交性もあって優しい人だから。
他者に敬意を持って接すること。
他者を傷つけるような言葉を言わないでほしい、とかかな」
「それって、一般社会と同じだよね?」
俺の言葉に「そうだね」と笑う。
そして何かを思い出したように目を見開く。
「この世界への気づきは、その人のペースに任せてあげてほしい。
それぞれが向き合うべき問題だから」
聞かれたら答えてくれるけど、彼自身のことや、この世界の秘密などを積極的に発信することはなかった。
松尾だけではない。百代や三里さんも俺をそういうスタンスで見守ってくれていた。
俺は、どれだけ周りに助けられてきたのだろう。
ここだけじゃなく、現世でもか。
少し反省してしまう。
「どんな人物かな〜。友達になれるかな」
百代は少し心配そうにそんな声を出す。
そして俺と目を合わせると、少し恥ずかしそうに笑う。
「学校もオンライン授業だったし、病院でも他の子供は自分のことでいっぱいいっぱいで、友情を深めるという状況でもなかったから。
ここにきて、友達みたいな関係を楽しめているのが嬉しいんだ」
寂しそうに笑う百代。
「友達みたい、じゃなくて友達だろ? 俺たちは。
それにこうして向き合って話している。だからリアルの友達だ!
三里も、俺も、松尾も!」
松尾はどうなんだろう? とも思ったけど、俺はそう力説してしまった。
笑顔で松尾も頷いているから、松尾に関しては問題なかったようだ。
「そうか。俺たち……もう」
百代は、はにかんだように下を向く。
そしてしばらく噛み締めるように皿を見つめている。
その視線が上がり、俺に向けられる。
「ならさ、なら、マルコカートしよ! この後!」
百代の言葉に、俺は笑って頷いた。




