8.
お久しぶりです!
実は続きがあったので、更新してみました。
長らく続きを待っていた方には大変申し訳ありませんでした:( ;´꒳`;)
少しでも楽しんでいただけると幸いです。
また、話の流れ的にこの方が良いと思い8話に関しては大幅に話を書き換えておりますので、ご了承ください。
その日はマーリンと話しながら食事をとっていたこともあり何時もの時間よりも随分と遅くなってしまっていた。
特に待ち合わせをしている訳では無いが、マーリンに今日は行かないのか?と問われ慌てていつもの場所に向かって走っていったリーリアは彼の姿を探していた。
「えっと…あっ、いた!」
しかし、どうやらその日も彼はいつもの場所にいてくれたようだ。
何処かボンヤリと空を眺める彼の姿を視界に入れた瞬間、嬉しくなったリーリアは満面の笑みを浮かべて駆け寄っていた。
「ん?君は…」
「お菓子さん!」
「お菓子?」
いつもなら直ぐにリーリアのことを『猫』と呼び微笑んでくれるはずの彼は今は何故か眉間を寄せ首を傾げている。
その様子に何か変だな?と思いながらつられて首を傾げた。
そういえば…今日はいつもより顔が近い?ん?
なぜ?あ、あれ?待って待って…
私…今、猫じゃなくな、い…?
「…あれ?!」
「…っ」
彼は焦るリーリアの姿に口元に手を当てると眉間をグッと寄せていた。なんだか知らないけれど不機嫌そうな顔だ。
「あ、えと…あのあの、ひ、人違いだったみたいです…!」
「あ、おい。ね…まて!」
狼狽えながらもそれだけ言うと、慌てて踵を返し走り出そうとしたが…何かに手を取られ後ろに倒れそうになる。
突然の事に受け身も取れず、痛みに備えてギュッと目を瞑った。しかし、一向に痛みは訪れることはなくそれどころか何か暖かいものに包まれていた。
「わわっ!…?」
「すまない…大丈夫か?」
顔をあげて振り返ればそこには大好きな彼の顔が目の前にあった。こちらを見つめてくる瞳がゆらりといつもの優しげな灯りをともすのを見て思わず目が奪われた。
なんて、綺麗なんだろう…。
「…ぇ、あ!いえ、あのあのだだだ大丈夫です!!」
「そうか」
ふわりと微笑むその顔に動悸が激しくなる。
慌てて顔を逸らし咄嗟に逃げようとしたところで、彼の腕がリーリアの腹に周りガッチリと抑えられていることに気付いた。
「あの!あのあの」
「ん?」
「は、ははははなし離してくださいっ!」
「離す?なぜ?」
「なぜ?!いえ、だってあのあの」
「…ふっ、すまない。冗談だ」
「っ〜〜!!」
顔を真っ赤にして狼狽えるリーリアの姿を楽しそうに見つめながら彼は漸くリーリアを離してくれた。
少し、ほんの少しだけ名残惜しいと思いながらもすぐさま離れ…そうとしたのに、またしても手を取られた。
「まて…あぁ、そうだ。詫びと言ってはなんだがこれをやろう」
「え?」
そう言って彼が取り出したのは、お菓子だった。
「先程『お菓子』と言っていたろ?良ければ貰ってくれ」
「で、でも」
いや、確かにお菓子!って叫んだけども。
そこまで食いしん坊では無いよ!お菓子が好きなだけで!!
そ!それに、その…お菓子って叫んだのはお菓子が欲しいのもあったけど貴方のことを呼んだつもり、だったんだよねぇ。
いや、王子ってのはわかってるけど。
今更『殿下』ってのもなんか…寂しいから、でも名前なんて呼べないし…あだ名みたいな感じで『お菓子さん』って、内心呼んでたなんて言えないよねぇ!!無理!それこそ不敬罪?
「もともと『猫』に用意したものだ…君に貰って欲しい」
「で、でも」
「いや、か?」
「嫌じゃないです!」
「なら良かった」
「ぅ、あ、ありがとうございます…」
「せっかくだ。一緒に食べよう、おいで」
「ぅえ?!」
彼はそういうとリーリアの手を引いて、あれよあれよという間に近くのベンチへと連れていかれ気付いた時には座ってお菓子を差し出されていた。
「ほら、お食べ」
「ぇ、あ!その」
「ん?」
「っ〜〜、い、いただきます」
差し出されたお菓子をそっとつまめば、何故か少し残念そうな顔をされたけれどリーリアの目には既にお菓子しか入っていない。
「…いつもみたいに口を開けてくれていいのだけどな」
「?何か言いましたか?」
「いや、なんでもないよ」
「…あの、食べないんですか?」
リーリアばかりお菓子を食べていて、彼はニコニコとそんな彼女を見守るだけで一向に食べる気配がない。
「なら、食べさせてくれるかい」
「ふぁ?!」
「ふふ、君は本当に可愛いなぁ」
「か、かわかわ」
「ほら、どうぞ」
「っ!!いえ!あの、ど、どうぞ…?」
ニコニコ微笑みながらからかってくる彼に、何でもいいから仕返しがしたくてリーリアは彼が差し出してくる菓子を奪うと、それを今度は彼の口に向かって差し出した。
「っ!」
一瞬に固まった彼は、ほんのり目尻を赤くして息を飲んだ。
彼のその顔に、どうだ!と胸を張るリーリアの顔も真っ赤だったがそれよりもやり返してやったという達成感の方が勝っていた彼女は調子に乗った。
「あの…?食べないんですか?」
「っ、有難く頂こう」
「え」
ガシリと腕を掴まれると、彼はそのままリーリアが持つ菓子に齧り付いた。そのまま咀嚼し飲み込んだ彼は、リーリアの指先もぺろりと舐めた。
「甘い、な」
「はわわ…!」
妖艶な微笑みにノックアウトされたリーリアはその後は彼にされるがまま菓子を食べさられたり髪を撫でられたりと『猫』の時よりもとても甘い時間を過ごしたのだった。
お読み頂きありがとうございました!
続きはまた近々あげる予定ですので、よろしくお願いします!




