↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の化身となりました  作者: レモングラス
10/35

9話

ヴァイスの背中に乗ってゆっくりとザヴェードの森を進んでいく。

魔獣が多く生息している森だと2匹は言っていたけどそんなことないんじゃないかってくらい森の中は静かだった。

だってこんなにも頬を撫でる風は気持ちいいし緑の香りは心を落ち着かせてくれる。


「お腹すいたなぁ…。」


昨日ずっと張りつめていた緊張がここにきて緩んだのか。

私のお腹から情けない虫の声が響く。無意識に深い溜息が出た。


『あら、お腹すいちゃったの?』

「うん…そういえば昨日のお昼から何も食べてなかった。」

『少し先にフルールの実が成ってる木がたくさんある。そこで腹ごしらえにしよう。』


フルールの実がどういうものなのかは皆目検討もつかないけど名前からしておいしそうだからたぶん大丈夫だろう。

それから数分後にそこへ着いた。まわりには紫とピンクの水玉模様の実が木にびっしりと成っていた。

名前から桃やリンゴやバナナのようなものを連想していた私は言葉が出なくなる。

この色の組み合わせはダメでしょう。毒入りにしか見えないんですけど。

とりあえずヴァイスの背中から降りて聞いてみた。


「え、これっておいしいの…?」

『人間がよく食べてるから美味いと思うけどなぁ。』

「ヴァイスとシュヴァイツは食べたことないの…?」

『私達は食事を必要としないもの。』


あっけからんというような感じでヴァイスはそう答えてくれたけど、それってちょっと悲しい。

私にとって食事というのは昼寝の次に心安らぐ瞬間だ。食べてる間は嫌なこともすぐに吹き飛んでしまう。

誰かと一緒にご飯を食べればより一層おいしくなる。楽しさだって倍になる。これはまさに魔法という名の隠し味だ。

もちろんひとりでじっくり味わいながらの食事だって私は大好きなんだけどね。


『どうしたんだ?辛気くさい顔なんかして。』

「ううん。なんでもない。ただ、私と2人はやっぱ違うんだなぁって…そう思っただけ。」

『違っていても私達とレナは繋がっている。なら、そんな違いなんて気にするほどのことでもないわよ。』


頬の上を彼女の舌が優しく通り過ぎる。なんだかお姉ちゃんみたいだ。嬉しいな。

するとさっきよりも随分と大きな腹の虫の声が聞こえてくる。

私としては主に色のせいでフルールの実を食べたいとは思わないけど、他に食べられそうなものは近くにない。

それにこれ以上空腹の状態が続けば本気で死んでしまいそうだ。

私は木の上に成っているフルールの実を見上げる。私は木登りができない。どうしようか。

と、そこで私は思いついた。マスケット銃を使ってフルールの実を撃ち落とせばいいんじゃない?

まだ私は夢の中で一発撃っただけだし、まずは動かない物を相手に練習するのがいいだろう。

私はさっそくマスケット銃を取り出した。何もない所からパッと出てくるのに取り出すと いう表現はどうかと思うけど、それ以外に思いつかないのでこれで通す。

私のボキャブラリーは少なく、頭の中のディクショナリーはペラッペラなのだ。


『それはなんだ?』

「これはマスケット銃っていう武器だよ。リューン様から貰ったブレスレットの力でこの武器が出てくるの。」

『フーン…なんでこの武器にしたんだ?』

「なんでって言われても、自然とこの武器になっちゃったとしか…。」


私は2人にこの武器を手に入れるまでの経緯を話した。そして私はこの世界についての新しい情報を手に入れた。

まずこの世界スクライドはなんと魔法が発達しているらしい。異世界ならではのファンタジーな要素である。

そのため剣や斧や槍などといった近接武器は昔と変わらず冒険者や騎士に愛用されているが、銃や弓といった遠距離での武器はもう全くと言っていいほど使われてないらしい。銃や弓を使うなら後ろから魔法を飛ばした方が効率が良いという考えが広まったからだ。なるほど確かに一理ある。

と、ここで少し困った事情が発生するんだけどその前に先に腹ごしらえだ。

マスケット銃を構えてフルールの実が成っている枝先に狙いを定めて撃ってみる…がヒットしなかった。

そり ゃそうだ。私は銃に関しては素人なんだからいきなり撃ったって命中するわけがない。

せめて狙いを定めるためのレーダー的な何かがあればいいんだけど。今晩リューン様に相談でもしてみよう。


「お願いがあるんだけど…フルールの実、取ってくれない?」

『もう、最初からそう言いなさい。あなたのお願いなら何だって叶えてあげるのに。』


そう言ってヴァイスとシュヴァイツは器用に尻尾を使ってどんどんフルールの実をもぎ取っていく。その尻尾は伸縮自在なのね。

2人がフルールの実をある程度もぎ取った後、私はヴァイスの顔を手で挟み込んで言った。


「何でもなんて簡単に言っちゃダメだよ。私よくそれ言って怒られてたもん。」

『母親とか父親にか?』

「いや、母さんと父さんは逆に私に対してよくこれを使ってたよ。いつもそう言って聞かせてたのは清花さやかっていう私のはとこだよ。」


ヴァイスから手を離して私はフルールの実を手に取る。微かにだが甘い良い香りがして無意識に唾を飲み込む。

それでもやはり抵抗があったので私は目を瞑ってかじりついた。


「お、おいしぃ…!!」


私は目を開けてどんどん齧り付く。さっぱり甘くて水分も多い。見た目は全く違うけど味も食感も桃によく似ていると思った。

空腹が勝りすぎて忘れていたけど喉もカラカラだったのだ。お腹も満たされ喉も潤った私の機嫌は最高潮。

このフルールの実ならいくらでも食べられそう。金欠でご飯が食べられないときは面倒だけどここのフルールの実を食べようと私はそう決めた。

プチキャラ紹介

荻原清花(おぎわらさやか)

玲那のはとこ。玲那とはかなり仲が良い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。