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1話
僕が初めて人の死を美しいと感じたのは、高校2年生の時だった。
9月の朝の風は、少しだけ冷たかった。
夏の名残みたいな暑さが、まだ校舎に残っている。
けれど、花壇の鮮やかなコスモスは静かに揺れていた。
その足元には小さな白い花が密集していた。
名前は知らない。白くて静かで、少し不自然だった。
僕はその場で足を止めた。
誰かが倒れていた。
動かない。
白い花の中に、埋まるようにして倒れている。
僕は近づいた。
白い小さな花が、頬にくっついている。
血は、ほとんど見えなかった。白い花が隠していたからだ。
僕はしゃがみ込む。まだ少し、温かい。
言葉は出なかった。ただ、思った。
「…綺麗だな」
白い花が彼女を包んでいた。
まるで、最初からそこに置かれるために咲いていたみたいだった。
完成された棺桶のようだった。
風が吹く。コスモスが揺れる。彼女から色が抜けていく。
僕はしばらく、そのまま見ていた。
遠くで、誰かの声が聞こえた。
「おい……誰か倒れてるぞ!」
騒がしくなる。僕は立ち上がり、一歩下がった。
人が集まり、整理された花壇の花たちは潰されていく。
それでも綺麗だった。
しばらくして、僕は校舎へ足を運んだ。




