96話・おばさまの企み
「アーサー、帰って来た!」
「お姉さまぁっ」
「「「「「お帰りなさ~い」」」」」
アーサーの屋敷に帰ってくると、わたし達の足音を聞きつけたのか、シュネを始めとした妹達がわらわらと玄関に姿をみせた。彼と二人、五つ子達に取り囲まれる。
「皆、いい子にしていたか?」
「「「「「うんっ」」」」」
アーサーは何だか皆のお父さんみたいな事を言う。五つ子達は良い子にしていたようで元気よくお返事した。
「おじさまと、おばさまのいう事、ちゃんと聞いたよ」
「おじさま達のお手伝い、いっぱいしたの」
ねぇ。と、五人がお互いの顔を見合わせて目配せしあう。
「アーサー。安心してね」
「あの女の痕跡を消すために消臭剤まいたし」
「その後、綺麗に模様替えした」
「ベッドカバーも、お部屋もお姉さま好みにして」
「わたし達とお姉さまの絵姿、いっぱい置いたからね」
五つ子達はどうやらアーサーの部屋掃除でもしていたようだ。あの女とはパメラ王女のことだろうと分かる。でも、アーサーの部屋をわたし好みにする必要ってある?
疑問に思っていると、上機嫌でアーサーの母が顔を出した。
「お帰りなさい。アーサー、リズ」
「おばさま。心配かけてごめんなさい」
「いいのよ。リズが獣化した事は聞いたから。うちの人が余計なことを吹き込んだみたいね? 罰としてアーサーの部屋の模様替えを手伝わせたから許してね」
「罰ですか……?」
意味が分からずアーサーの母を見返すと、フフフとほほ笑まれた。戸惑っていると五つ子達が「お腹がすいた」と、言い出す。
「あらあら。じゃあ、皆で食事にしましょうね」
足取り軽く先を歩くアーサーの母の後に続くと、アーサーが「嫌な予感しかしねぇ」と、言い出した。アーサー曰く「あの母さんの浮れようは何か企んでいるようにしか思えない」らしい。
アーサーの母の企みが判明するのはしばらくしてだった。




