97話・思い出話
「やあ、先に席に付かせてもらっていたよ」
「ロリアン?!」
食堂に入ると、アーサーの父が金髪に青い目をした麗人と談笑していた。その麗人と目が合って驚いた。麗人はロリアンだった。彼女はこの屋敷の男性使用人の服を借りたらしく、それが妙に決まっていて見違えた。今まではターバンで隠されていた金色の三角の耳が、肩までの長さの金髪の上で露になっている。
中性的要素のあるロリアンはお仕着せの服を着ていても麗しかった。椅子に座って足を組んでいる姿は王子さま然としていて、五つ子達がわあ。と、群がる。
「今度は私がロリアンの隣」
「やだ。私もロリアンの隣がいい」
「ずるい。シュネは昨日の夜、ロリアンの隣だったでしょう」
五つ子達のロリアンの取り合いに、アーサーの父が苦笑する。この分だと、自分達がいない間に妹達はずい分とロリアンと仲良くなっていたようだ。少しだけそこに寂しいものを感じながらもアーサーに促がされて彼らとは正面の席につく。当然、左隣にはアーサーが席に付いた。
「シュネたちはリズの妹達だそうだね。誤解してすまなかった」
「……?」
「いいえ。初対面の人は必ず誤解するので気にしてないですよ」
席につくなりロリアンに謝られた。五つ子達はアーサーによく懐いているし、アーサーの事を皆がパパと呼んでいることからして誤解されやすい。別に謝るようなことでもないのにと思っていると、わたしに代わってアーサーが言っていた。
「しかし、皆、仲が良いのだな」
彼女には年の離れた弟がいる。弟王子ともっと仲を深めたいと望んでいるのかも知れなかった。
「この子達が赤ちゃんの頃から、アーサーには面倒を見てもらっていたから」
「乳母達が大変でしたよ。赤ちゃんの時は皆そろってすぐ泣くし怒るし。動けるようになったと思ったら物凄い速さでハイハイしていなくなるし、いつもリズと乳母達とこいつらで鬼ごっこ状態になってましたね」
アーサーを伺うと、彼は懐かしむように当時のことを思い出しながら言った。五つ子達は赤ちゃんの頃から手ごわかった。行動を起こすときは言葉が話せなくとも皆、気持ちが通じ合っているようで、シュネが高速ハイハイで外に飛び出していくと、それを合図に皆が各方面に散らばって連れ戻すのに大変だった。
ベビーベッドに入れると五人で団結して、ピラミッドを築いてその上に乗りあがり一番小さなスノーが器用にもカチャリと鍵を回してドアを開け放ち、外に出てしまうことも度々あった。三人の乳母達は五つ子達に翻弄されて毎日ヘトヘトになっていたものだ。
その五つ子達が、こんなにも大きくなるだなんて年月の流れというものは、早いような気がする。




