48話・もう王女は終わったな
カミーレや王妃もやってくると、パメラは最後の砦とばかりにカミーレに泣き付いた。
「ねぇ、カミーレ。聞いて。このふたり酷いのよ。まるでわたしが悪いことをしたみたいに……」
カミーレは困惑顔。周囲では子供らが王妃に事の事情を説明し出した。
「お姫さまは意地悪だ。ハリーを突き飛ばしたくせに」
「ハリーがドレスで手を拭いたのは悪かったけど、ゴンッて、そこの切り株にハリーをぶつけた」
「ハリー、頭を打って血を出した」
「酷いよ、酷いよ。王妃さま。このお姫さまは意地悪だ」
「僕らのこと汚いって言った。ドレスにも触れて欲しくないって言った」
「お姫さまはハリーを怪我をさせたのに、何のお咎めもないの?」
「白ウサギのお姉ちゃんはね、お姫さまに、ハリーを怪我させたのに知らん顔してるから、それはいけないよって怒ったのに、侮辱だって、不敬罪なんだって。お姫さまは牢屋に入れるって言った」
「白ウサギのお姉ちゃん、牢屋に入れられちゃうの? 王妃さま。助けてあげて」
子供は正直だ。叔母上は皆の意見を聞き顔が強張ってきたが、特に「白ウサギのお姉ちゃんを、お姫さまが牢屋に入れると言ったと聞き目をぎらつかせた。
叔母上はリズの母親を可愛がっていた。その娘も同様に可愛がっている。その存在を機嫌を損ねた王女が勝手に牢屋に入れるなどと言ったのだ。相当、頭に血が上ったらしい。一睨みで人を殺せるような目を王女に向けていた。
王妃から殺気を感じ取ったのだろう。パメラ王女は必死に違うと言い出した。
「この子はいきなりわたしのドレスで汚れた手を拭おうとしたのよ。だから押しただけなのよ。たまたま切り株があってそこに彼は頭をぶつけて──」
「パメラ殿下。あなたのしたことはいけないことですよ」
叔母上はパメラ王女に最後まで言い訳を許さなかった。口調は丁寧だが、腸が煮えくり返っているに違いない。もう王女は終わったな。




