49話・馬鹿な王女
「年端も行かない子供を突き飛ばすなんて行為は暴力のようなものです」
「アザリアさま。わたくしは悪くありませんわ。そこの子供が礼儀を知らないから」
「口で言って諭す事は出来なかったと? ここにいる子達は皆、いい子達です。話してきかせれば分からない子供ではありません」
「でもお気に入りのドレスを汚されたのですよ?」
このような場所にそんな豪奢な衣装で来るからだろうが。見せ付けるようにしていれば子供たちだって関心を持つわ。叔母上も同じような気持ちだったらしい。
「あなたはどうしてそのような装いでここに来たのです? わたくしは、王族という者は時と場所、場合に合わせた服装や振る舞い、言葉使いを求められると言う事を常々、あなたがたに言って聞かせたと思うのですが?」
「────それは……申し訳ありません」
「わたくしに謝ることではないわ」
「この子達に謝ればいいのですね? ごめんなさい」
パメラ殿下は渋々、子供達の前で頭を下げた。あれは謝罪とは言わない。見ていて呆れた。二歳の子供だって悪いことをしたと思ったらちゃんと謝罪するぞ。五つ子達だって二歳の時にはちゃんと謝罪することを覚えたからな。
「あんたのその謝罪はちっとも心がこもっていない。王妃さまに注意を受けて面白くない気持ちで頭を下げるぐらいなら謝罪されても相手には迷惑になるだけだ」
「それならわたくしにどうしろと?」
パメラ殿下は怒り出した。自分が悪いのに注意されて逆切れだなんて救いようがないよな。母親である側妃はどんな躾をしてきたのやら。
「第一、平民の子が怪我をしたからとそれがどうしたと言うのですか? 王族であるわたくしが逆に怪我をしていれば彼らの方が罰に問われていたのですよ」
「残念ですね。パメラ王女。それが本心ですか? あなたにはわたくしの言いたい事が伝わらないようです。あなたはこれから宮殿から外に出ない方がいいわ」
「アザリアさま」
「今すぐお帰りなさい。パメラ殿下。わたくしはこれ以上、あなたの顔を見ていたくありません」
表向き優しい叔母上にしては、珍しくも厳しい口調だったからパメラ殿下は驚いたようだ。でも叔母上の逆鱗に触れたんだから仕方ない。リズを追い込もうとしたからだ。馬鹿な王女。尻尾を巻いて馬車に乗って慌ただしく帰って行った。




