45話・リズのクッキーはとびきり美味しい
「アーサー」
王女を睨むと、心優しいリズは駄目だよ。と、言うように俺の名前を呼んできた。このリズが焼いたクッキーは彼女のようにほっこりした味がするんだ、誰がおまえにやるか。
「このチョコチップクッキーは最高だな。俺はこれが一番好きだ。他のお菓子は甘ったるすぎて食べれたものじゃないけど、これは素材の味が生かされているから甘い物が苦手の俺でもいくつでも食べれる。俺好みの味だな」
「ええ、姉上食べないの? 勿体無い。僕もリズのクッキー大好き。姉上、食べないならそれ僕に頂戴」
カミーレが負けじと口を出してきた。その後に五つ子達も続く。
「「「「「お姉さまのクッキーはとびきり美味しいの」」」」」
「そうだよな。リズのクッキーが一番だよな」
五つ子達の賛同も得て俺は満足した。この味の良さが分からないヤツに食う資格はない。おまえのような女に食わせるには勿体無い過ぎるよ。叔母上も頷いていた。
「リズはお菓子作りがお上手ね。味も焼き加減もとてもいいわ。また作ってくれるかしら?」
「気に入って下さってありがとうございます。アザリアさまが宜しければまた用意させて頂きます」
「楽しみにしているわ」
パメラ王女はつまらなそうな顔をしていたけれど、叔母上が言った。
「特権階級にいるわたくし達は、自分で何かを作るなんて思いもしないものだけど、手作りっていいわね。その人の思いやりや気持ちが伝わってくるような気がするわ」
「そうだね。リズが作る物には優しさがある」
カミーレが分かりきった事を言う。これはリズだから出きる技だ。
「金を幾らかけてもリズの作る菓子の美味しさには叶わないさ」
「二人とも褒めすぎよ。お世辞を言っても何も出ないわよ」
リズが笑顔を見せてくれた。皆で笑いあっている側でパメラ王女だけ不貞腐れた顔をしていた。




