14話・ふたりきりは認めない
「リズ、あっちへ行こう」
「おい、待て。カミーレ。二人でどこへ行く?」
「アーサーは姉上とお話でもしてて。僕たちは向こうでシスターの手伝いをするよ」
背後で慌てる声がする。カミーレは可笑しそうにその場からわたしを連れ出そうとした。
「駄目よ。カミーレ。お待ちなさい!」
「なあに? 姉上」
「彼女と二人きりなんて駄目よ」
「姉上だってアーサーとふたりで話をしていたじゃないか?」
「──それは……、でもだめ。彼女とふたりきりなんて認めないわ」
聞いていると勝手な言い分だ。自分はアーサーと仲良くしているのに、弟にはわたしと親しくなるなだなんて。人の婚約者にちょっかいかけておきながら、弟には近付くなと睨んでくる。意地の悪いお方だ。
「ごめんね。リズ」
「何のこと?」
「パメラ姉上は強引だから」
すると猫なで声で王女はアーサーの腕を引いた。彼女の胸がアーサーの腕に当たる。彼女の胸は結構大きい。自覚してやっているのが丸分かりだ。
「ねぇ、ねぇ。アーサー。これを運ぶのを手伝って下さらない? もちろん、カミーレもよ」
王女殿下は自分が中心でないと面白くないらしいのだろう。わたしからアーサーとカミーレを引き離すように呼びつけて、二人に馬車の中にあった物を孤児院へと運ばせようとしていた。
そこへ騒がしい声が割り込んできた。
「美味しそうな匂いね」
「カナッペみたいよ」
「美味しそう」
「食べたい~」
「いいなぁ」
塀の向こう側からひょこひょこ見慣れた顔が五つ覗いた。




