101話・どっかの北風さん
「セージなの?」
「良かった。お目出度い頭をしているから僕のことなど綺麗さっぱり忘れたのかと思ったよ」
その言葉でやはり天敵だと思う。見た目は変わっても中身はぜんぜん変わっていない。
「相変わらず失礼なヤツだな。リズはそこがいいんだ」
アーサー、それってフォーローになってないよ。でも、その後に五つ子らの援護射撃が続いた。
「お姉さまはわたし達の太陽なんだから、どっかの北風さんとは全然違う」
「どっかの北風さんは冒険者さんの気を惹こうと一生懸命よねぇ」
「ピューピュー、吹くだけじゃあ、関心なんて惹けないよ。嫌われるだけだから止めたほうが良いよ」
「そうよ。そうよ。見苦しい」
「アーサーみたいな包容力がないとね」
ねー。と、五人が頷き合うと、セージは「煩い」とだけ言っていた。五つ子がセージのことを当てこすっていたようなのだけど、わたしには全然、意味が分からなかった。あとでこの子たちに聞いてみよう。
ロリアンは五つ子にやり込められているセージを見ながら可笑しそうな顔をし、アーサーやその両親に謝っていた。
「騒がしくなって済まない。辺境伯。そして前辺境伯夫妻も」
「構いませんよ。我が家は賑やかなのはいつでも歓迎しますから」
さすがアーサーのご両親。突然の訪問客にも動じてはいない。
「それにしてもずい分と急じゃないか? セージ」
「済まない。やむを得ない状況になったものだから……」
今日、迎えに来るなんて聞いてないぞ。と、アーサーが言えばセージが済まなそうに言った。そういえばアーサーはセージと連絡を取り合っているとの話だった。その彼が聞いてないと言うのだから、セージの訪問は突然だったことになる。
「フロリアン殿下。あなたさまがこの国にいるのがどうもラメル殿下にばれたようでして……」
「ラメルが私の後を追ってきたのか?」
「……はい」
「ラメルって?」
「フロリアン殿下の弟君だ」
「ロリアンの後を追ってきたって、二人とも仲が良いの?」
何だか意外に思った。ロリアンの話から弟君とは親しくしていたようには聞こえなかったし、わたし達姉妹を羨むような発言が結構あったから。
「仲が特別良い訳でもないが──、特に悪いわけでもない」
どういうことなんだろう? ますます分からないわ。
「あれは病んでるからな」
セージが言い捨てた。病的? なんだそれ? 真実が知れるのは間もなくの事だった。




