かんてらっ! ep38より 最後のシーン
後部座席でうなだれていたと思ったら、突然飛び起きて
「それじゃあさ、私たちのチーム名決めないとね」
少女の提案に、あきれ果てるタカシ。運転席からバックミラーで彼女を見やると、さっきまでの森林での夜叉のような貌はどこへやら、年頃の女の子の顔で、楽しそうに笑っている。
その顔を見ただけで、自分の判断は間違っていなかったと思う。これから先、委員会を敵に回して、彼女とその隣で少女を支える同僚を守っていくのも、悪くない。
「お前、そんなの別にどうでもいいだろう。といより、不知火と雲竜の後を継ぐのなら芙蓉会でいいんじゃないのか?」
すると、頬を膨らませて怒り出す。
「やだよ、あんなおしとやかなお茶飲みサークルみたいな名前。私達はアグレッシブに攻めてくんだから」
「お前、アグレッシブの意味わかってるんだろうな」
「でね、一つ決めてる名前があるんだ!」
「人の話聞かないのな。ユウスケ、お前は何かいいアイデアあるか?」
少女の肩を支えていたユウスケは、
「うーん、思いつかないよ。そもそも僕達3人だけだし」
「わかってないなーユウスケ君は。こういうのは形から入ればいいんだよ」
「そうなんだ。流石、ヨリちゃんだね」
割って入る。
「一応、ユウスケはお前より10年上だからな」
「ぱんぱかぱーん、では発表します。新生ぐらり能力者を相互扶助を目的とした会。その名も」
「ラブクルセイダース!」
ハンドルを、操作し損ねた。
「うあっわ! ちょっとタカシ君、何してんの!危ない危ない」
「……お前、俺達もその怪しげな軍団名を名乗れと言うのか」
「そだよ、素敵な名前じゃん! 私、昔この名前が空に響いた時から、いつか使ってやろうって思ってたんだ!」
「ああ、いぬがみ部隊が対応した例のあれだな」
「私達3人にぴったりだと思わない?!」
「どこら辺がだよ。見ろよ、ユウスケも未だかつてない困った顔してるぞ」
「えー、ユウスケ君は気に入らない?!」
冷や汗をかいていた。
「い、いや。僕はヨリちゃんの目指すものを共に目指すと決めたんだ…、う、うん。ラブクルセイダースね……。いいよ、世界一のラブクルセイダースにしてやろうよ」
「ユウスケ、声震えてるぞ」
「ほらー、賛成二 反対一 過半数を取ったので可決されました!」
タカシは、前を向いた。
さて、はたしてこの決断はよかったのだろうか。
帰って妻に何と報告しよう。
勤め先に喧嘩を売って、捕獲対象者を連れて帰りました。
日本国政府を相手どり、今日からラブクルセイダースとして粉骨砕身励むつもりですと答えたらいいのだろうか。
妻なら、笑い転げた後に、大真面目に夫にならってテロリストになりかねない。
「ヨリ、具体的にどんな活動をするつもりだ。少なくとも俺はテロは許さんぞ」
「わかってるよ。まずは、日本中を回ってみようと思う。私みたいに、捕獲対象になってる『ぐらり』能力者とか、他の異能を持った子達に会って回る。そして、味方はいるんだよ! って伝えて回るんだ。ユウスケ君とタカシ君が私にしてくれたみたいに。皆、孤独だから暴走するんだよ。一人じゃないってわかれば、行動も穏やかになるし、国の奴らも、無理矢理保護する以外の方法を考えてくれるようになるんじゃないかな」
くそう、本当にラブクルセイダースじゃねえか。
あほらしいと思いながらも、どこか、わくわくし出している自分に気付いて、タカシは頭痛がしだすのだった。
「でもとりあえず、お腹空いた! ごはん!」
暴君の要望に、とりあえずコンビニによることになるのだった。
ああ、未成年超能力者を補導するだけの楽な仕事だと思っていたのに。
これでは、宇宙生物を撃退する仕事にすればよかった。
陸上自衛隊 第虚数駐屯地 メルヴィッツ生体波動放射体対応班は、こうして月食夜理に懐柔されて、裏切り者と呼ばれるようになってしまった




