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番外 at カロリング大聖堂

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


こうしてシュバルツと二人、エトゥーリアでの夜会に出席する日がまさか来るとは…


彼はすでにこの滞在期間、分家の当主といくつかの社交クラブにも顔を出しているはずだ。


それもこれもシュバルツの心に生まれた新たな感情がそうさせたのだろう。

僕との間に生まれたグリージオのためにも、エトゥーリア本国から目を背けるばかりでなく、本家としての基盤も盤石にせねばならない…と。


それが分かるだけに僕はどんな協力をも惜しまない。

だからこそ今回、訪エトゥーリアに彼シュバルツを同行したのだ。エトゥーリア貴族クーデンホーフ侯爵として社交に勤しめるようにと。



「あれ?ハイデッカー子爵。いらしてたんですか?」

「おや?レジナルド様…、内乱の平定以来でございますね。お元気でしたか?」


彼、ハイデッカー子爵は例の内乱時にいた変革派貴族の一人である。僕に貴族街の海鮮レストランを教えてくれたグルメでもある。

その彼とシュバルツの友人が主催する夜会で再会するとは…何たる奇遇。


「なんでもクーデンホーフ侯爵との間に奇跡のお子を生されたとか…」

「お陰様でハイエルフの助力を得まして」

「…あの伝説とも言われるハイエルフまで篭絡されるとは…さすがレジナルド様…」


篭絡って人聞きの悪い…


ハイデッカー氏と話し込む僕の耳には様々なヒソヒソ声が届けられる。


「レジナルド様はあの美貌でクラレンスの王太子を虜になされたのか…」

「いくらクラレンスが同性婚を許容しているからと言って、まさか我がエトゥーリアの貴族を側夫になさるとは…」

「些かエトゥーリアを見下しておいでではないか?」


不穏…?


「だがあれほどまでに美しく、王家に匹敵するほどの財を持ち、そして一国を消し飛ばせるほどの力をもつレジナルド様を側夫とは言え娶れるとは…」

「クーデンホーフ家は今が盛りであられるな」

「どれ、挨拶に行ってまいろう」

「待たれよ、私が先だ」


うんセーフだ。

僕の存在がシュバルツの地位を引き上げるならそれに越したことは無い。が!


問題はもう一方…


「あれが死の天使ザラキエル…」

「ザラキエルの力によってウォーデモンの本店にはまるで神の怒りのように巨大な岩が降り注いだと言う話だったな」

「ゲスマンの王、そしてトラキアはザラキエルを恐れ東の奥地に引き込んだらしい…。クラレンスはそれによって領土を増やしたのだぞ」

「それより聞いたか?ナバテアは魔島の向こうに出現した第二の魔島に一国丸ごと連れていかれたとか…」


「……」

「……」

「……」


シィィィ…ン…


あー…よくご存じで…。どうしよう、全て事実なんだけど…


「ま、まあ悪人にしか天罰は下さないと言う話だし…、変革以降議席を得た我々は大丈夫だ。だ、大丈夫だとも!」

「そ、それにナバテアの件は我らエトゥーリアも少しばかり領土のおこぼれに預かった事だしな」

「なによりザラキエルのおかげでエトゥーリア、そしてウルグレイスの戦争が終わったのだ。喜ばしい事じゃないか!」


そう!喜ばしいでしょ!むしろ僕ってば幸せの青い鳥じゃない?


…だけど僕はそっと自分の影を薄くした。



「レジナルドここに居たのか、探してしまったよ」

「シュバルツ…、ちょっと心が痛んでね。それよりご友人との関係は修復出来たかな?」

「何人かは。あの状況はいみじくも友人の精査に役立ったのでね。途切れたままの縁もあるが…」

「デニスさんはまあ良いんじゃない?セコいけど。彼は一応パウルの貞操を守った功労者だし。ケチだけど。見てここのお料理。乾物ばかり」

「はは、彼は昔からそういうところがある」


僕はデニス氏にレイジタウンから持ってきた高級な魚介類をたくさんプレゼントしてあげた。シュバルツの顔をたててね。

デニス氏は大変感激してシュバルツにいつかクラレンスに招待してほしいと、ここ大事、シュバルツ持ちで招待してほしいと、何度も何度も頼んでいた。いや自腹で来ようよ。


そうして少し早いけど僕たちはお暇することにした。明日も視察があるし…

タイトなスケジュールによる出張業務は、こうして地味に疲れが溜まっていくのだよ。


「一緒に帰らなくても良かったのに…」

「いや、もう充分だ。それより馬車を呼ばなくて良かったのだろうか」

「少し酔っちゃったし歩こうよ…、タウンハウスは近くだし今日は夜風が気持ちいいよ」


「レジナルド、その…、手をつないでも?」

「聞いちゃう?」


子供まで作っておきながら今更照れないで欲しい…、いや、子作りの手順はちょっと外道だけど。


でもせっかくなので僕は出血大サービス、手どころか腕までしっかり絡めて歩いた。道行く人にアピール…ってね。


だけど僕は気付いている。シュバルツの案内する帰路は行き道と違う、少し遠回りの経路だと。


「ほらレジナルド、ここが電波塔となるカロリング大聖堂だ」

「前来た時も気になってたんだよね。ゴシック様式の高い塔、何かなって。魔石を設置するのにピッタリ」

「ここが世界を繋げる要になるとは実に感慨深い…」

「来たことあるの?」

「『祝福』も『洗礼』もここだ。そして…、私の両親はここで婚姻の誓いを立てた」

「あ…」


「私たちは正式な式をあげられなかったが…、どうだろう。今ここで私の誓いを受け取ってはくれないか」

「シュバルツ…」


「ここに生涯の伴侶と立つのが夢だったのだ。あの日あなたと誓いを交わすアルバート殿下がどれ程羨ましかったか…」

「もっと早く僕が言いだすべきだった。気が利かなくて…ごめん」

「いや…」


「遅くなっちゃったけど二人で式挙げちゃおう」



人気のない聖堂内、全てセルフで進められる簡単なお式。

そのお式を見守るのは、ステンドグラスに描かれた聖母様だけ。けど誰よりも最高のギャラリーじゃないか。


「永遠にあなたを愛し敬い、その命ある限り真心を尽くすとここに誓おう。レジナルド、私のラビエル」

「僕も誓うよ、シュバルツを愛し敬い慈しむと、この聖母様に誓う」



僕が居る限り二度と辛い思いはさせないからね。僕が守った高潔な人。

お式の最後は優しい優しい、それは優しい誓いのキスで締めくくられた。






毎日更新を目指しています。

お星さまをぽちっとしていただけると大変大変嬉しいです。作者の励みでございます(;^ω^)


この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)

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