番外 in 平和な日々
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
「ウィル!フィンはどこ!」
「先ほど騎士の宿舎でお見掛けしましたよ?」
ハイハイだけで嘘だろ…!あまりにも毎日なのでウィルも既に諦めモードだ。
さてその宿舎だがざっと見渡しても我が子の姿はない。
「クラウス!エルウィンはどこ!」
「演習場に向かって浮遊しておられましたな」
「演習場?」
「魔法の練習ではないですかな?」
ちょ!レベル3にはまだ早いって…。何故止めないクラウス、と思ったが…そう言えば僕もそうだったっけ。
何しろ『祈りの祠』までに最低限レベル上げときたくて必死だったから…。懐かしい。
「ジェイコブ!…あ…」
「全く困ったちい坊ちゃまたちでございますな。ヴォルフ殿、エルダー殿の血が入ったおかげで坊ちゃまのお小さい時より手に負えませぬ」
ため息をついているように見せかけてデレデレのジェイコブ。その腕の中ではがっちり捕まったフィンと、エルウィンが不満そうにブーたれていた。
「コラ!せめて歩けるようになるまで我慢しなさい!」
「ブーブー!」
「毎度ブーブー言わないの!」
「ブーーー!」
「エリーも!何でそんなに魔法を…あっ、そうだ」
ふと思い出したのはシャリムの闇魔法。シャリムはここに来た当初から、今思えば、ちょいちょい僕の心を読んでいた。
闇魔法使いがダークエルフの末裔なら、エルフのシンクロに似た魔法が使えることも今なら納得と言うものだ。
僕は階上からシャリムを呼びだし、当然だが未だ言葉がおぼつかない子供たちの気持ちを確認してもらう事にした。
「エルウィンとフィンがどうしてこんなに修行したがるかわかるかなぁ?」
「見てみる…あ…分かった」
そこで判明した事実とは…。
まずヴォルフ。わずか生後(?)数か月ですでにつかまり歩きをする誰より有望なフィンに向かって「俺はもっと歩き始めが早かった」と奴は自慢して見せたのだとか。何言ってんだろうヴォルフは…
そしてエルダー。神殿で『祝福』を受けないと魔法に目覚めない他の兄弟と違い、レベル3とは言えすでに植物魔法を操る我が子に向かって、「長の息子とあろうものがこの程度とは情けない…」と言い放ったのだとか…
ダメパパが約二名…
そこへいくと常識人のシュバルツは今日もグリージオを膝に乗せて静かに読み聞かせ中だ。
「シュバルツ、いつグリージオをクーデンホーフに連れていくの?」
「本国の分家からは既に乳母が到着している。いつでも良いのだよ。レジナルド、貴方さえ良ければ」
寂しいと言えば寂しいけど、…別に僕自身は毎日会えるし、大人しいグリージオは悪戯好きのエリーと体力お化けのフィンに振り回されてここに居ると少し気の毒でもある。
由緒正しいクーデンホーフの跡取りなら正統派な環境下のほうがいい気もする。
「どうしよう…」
「…やはり連れて行こう。そうすればレジナルド、貴方は毎日顔を出してくれるのだろう?」
「ここと何が違うの?」
「…二人きりになれる」
「あーそういう…いいけどね」
こうしてシュバルツの下心によりグリージオはクーデンホーフ領へと連れられて行った。
それだけじゃない。歩けるようになったらいずれエルウィンもエルフの里に行ってしまう…
フィンはここに居るし、いつでも我が子に会いに行けるのは分かってる、けど…スゴク寂しい!
ああっ!これが嫌で僕はどれほど動物好きでも保護活動には参加しなかったのに!まさかここでこんな思いをするとは!
だからと言って感傷に浸る暇もない程毎日事件は起きる訳で…
「エルウィンは…、あれ何してるの?」
「ゴーレムを作って遊んでいるようですな」
土魔法は植物魔法に近しい。低レベルならエルウィンにも使えるのだろう。
「じゃあフィンは…、あっ!危ないから剣で遊んじゃいけません。せめて木刀にしときなさい」
「バブ!」
ラジャって聞こえたな…
「懐かしいですな。坊ちゃまもこんな返事をしておられましたぞ」
「そうだったかな?そうだクラウス、歩き始めたらフィンにはバイヤールをつけて。彼はあのオスカーをあれだけにした実績がある。この子は暴走させないよう見ておかないと」
「そうですな。それにオスカー殿も弟弟子が出来ればまた良い励みになりましょう」
「なかなか威勢のいい話ではないか」
「お父様…明日の到着ではなかったんですか?」
そんな騒々しい居間に入ってきたのは孫の顔を見に来たお父様。残念ながら当主代理のコリンは今回お留守番だ。
「その子が公爵家の嫡子となるフィンで間違いないか?」
「ええ。それでその向こうで小さなゴーレム作って遊んでるのが末の弟…?でハイエルフのエルウィンです」
「おお…」
ケモミミのある嫡子にこの保守的なお父様がどんな顔をするかと思ったら…、意外にも目を細めてフィンを抱き上げている。
考えてみればランカスター領もダンジョンランドを皮切りに今ではウエストエンドと二分する獣人天国だ。お父様もその環境にすっかり適応されたのだろう。ふーやれやれ、一安心。
「さて本題だが…、この子達のいずれかが狂魔力を受け継ぐのか…。して、その制御は確かに可能なのだな?」
おっと。狂魔力に怯え続けたお父様が気にするのはそこか。
確かに、クラレンス王やウルグレイス王と違い、お父様はその目で見てきたのだ。荒ぶる父を、暴走する弟を、そして間接的とはいえ妻の不幸を…
「…ご安心ください。狂魔力を制御した以上、僕がいるうちは誰にも発現しませんよ」
「だが不測の事態には備えねばならん」
「それはまぁ…。制御はレベルを最大まで上げあらゆるスキルを取得することで可能となります。何が起きても良いよう、成人までには全員を鍛え上げましょう」
「頼んだぞレジナルド」
もちろんそれは地獄の様な鬼周回の始まりを意味するのだが。
毎日更新を目指しています。
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この作品はアルファポリス様で連載済みの作品を全年齢バージョンへ改稿し投稿していきますので、R18が苦手な方はあちらに行かないでくださいね(;^ω^)




