第5章 ~旅の軌跡~
■目的地:
富士山、山頂
■おすすめご当地グルメ:
【インスタントラーメン】
富士山は水や酸素が高額で売られている世界である。
山上では水が貴重なため、そもそも美味しい料理を求める場所ではない。
ただし、それだけ過酷な分、疲れ切った身体で山小屋になんとか辿り着き、そこで平地では考えられないほど高価なインスタントラーメンを購入し、寒風吹き荒ぶ中、温かい麺を啜るのは最高に贅沢な気分を味わえる。
■参考距離:
東京から高速道路を使って登山口の駐車場まで車で1時間半
新宿駅から富士山五合目までバス1本で2時間40分
※五合目から山頂まで徒歩7時間前後
■軌跡と端書:
【03:00頃】自宅を出発 空模様は晴れ
深夜まで図書館にいたこともあり、気づけばこの時間。
りゅーちゃんと富士山に行くことを急遽決定。
竜の翼の恩恵に与れるというのは、胸ときめく。
寒さ、気圧差、酸素等の心配はないとのことで、普段着で出発する。
自分の身体が浮かび上がったときは、かなり驚いた。
正直、はしゃぎまわりたい気持ちを抑えるのが大変だった。
深夜でなければ雄叫びのひとつでもあげていたと思う。
【03:10頃】富士山上空に到着
りゅーちゃんの飛行のあまりの速さに絶句。
加速時間も考慮しつつ距離を時間で割ってみると、速度はマッハ2以上。
……竜の凄さを実感。
翼は広げたまま羽ばたいていなかった。
曰く「魔力で飛んでいる」「翼を使って速く飛ぶと周りに迷惑がかかる」。
それと、「飛んでいるときは翼を広げていたほうが落ち着く」のだそうだ。
“魔法蒐集家”ジーンの飛行移動と同じ、静音飛行らしい。
そういえばジーンの飛行も妙に静かに移動するイメージがある。
きっと彼女も周囲の空気抵抗をどうにかする工夫をこらしているのだろう。
高速飛行中、りゅーちゃんに腋の下から腕をまわされて背後から抱えられる。
背中にりゅーちゃんの身体が密着して慌てた。
が、「このほうが飛びやすくて落ち着きます」と言われ、何も言えず。
【03:30頃】富士山の山頂に着地
予想以上に早く着いてしまったため、周辺の空の散歩をした後、山頂へ着地。
自分は靴を持ってきていたが、りゅーちゃんは裸足である。
山頂の寒さを知っているこちらとしては見ているだけで寒くなる思いだった。
それを伝えたところ、なんとりゅーちゃんの両足が瞬時に変化。
濃紺色のメタリックな鱗で覆われ、西洋鎧の鉄靴を履いているような見た目に。
足先だけ膨らんだシルエット、正直、凄く格好良い。
頼んでみたら、手先も鱗に覆われ鋭い爪を生やした強靭なものに変えてくれた。
とてつもなく格好良い。
“拾得魔法”で装備品を出したのかと思ったが、なんと自前の鱗だそうだ。
普段は目に見えない身体のパーツで、必要に応じて出し入れ可能なのだとか。
魔物の中にはそのような器官を備えているものがそこそこいるそうだ。
言われてみれば手足を伸ばしたりできる“千手の”センも、その類か。
魔法や魔物のこと、あるいは富士山のこと、雑談をして御来光を待つ。
【04:30頃】日の出
相変わらず、とてつもなく綺麗な景色だった。
晴れて綺麗な御来光が見られて良かった。
りゅーちゃんも言葉を止めて見入っていた。
【04:45頃】お鉢めぐり開始
富士山の山頂は、さすが日本一の山、とても広い。
火口の周りをぐるりと、1時間半かけて一周した。
こちとら普段着のような軽装でここを散歩することを夢見たことのある身。
非常に気分の良いひとときだった。
なお、私たちの姿は間違いなく目立つものだったが、誰にも気にされず。
私が異世界バイトを始めるきっかけとなった、例の魔法――。
「効くと思ったら効かなかった、実際は効く認識阻害の魔法」のお陰である。
が、これを口に出したらミヤさんがまたしょげそうなので、黙っておく。
【06:30頃】富士山の山頂を出発
もうこの際だから歩いて下山しようという話になり、下山道へ向かう。
砂地をジグザグと走る下山道の見晴らしは最高。
りゅーちゃんは非常に喜んでいた。
他の登山客にぶつからないよう注意しながら六合目まで下山。
【10:30頃】富士山から空へ向かって離脱
五合目は観光客が多いため、今回の観光はここまでとする。
【10:40頃】帰宅
早い。
地上の景色がはっきり見えるため、行きよりも一層その速さを実感。
ともあれ無事に、今回の富士登山(?)を終える。
■今回の観光時期:
夏
“異観絶景の迷宮”完成まであと僅か
(アクシデント発生により、仕上げを延期中)
■観光したいものリスト:コンプリート
観光地化された洞窟……○
花火……○
綺麗な水辺……○
日本の城郭……○
桜の花見……○
日本で観られる迷宮風景色……○
富士山……○
※観光用迷宮内に、多量の休憩所の設置が決定
※観光用迷宮内に、地を這う色付く雲の設置が決定
* 第5章 ~旅の軌跡~ 了 *
次回、幕間『シェパーズパイの異世界風』に続く




