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義母が私を殺そうとします  作者: 樹


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完結話:世界で一番ズレた少女と、永遠の赤いリボン

 私が前世の記憶を持ってこの世界に生まれ落ち、五歳の時にあのピリ辛な黄金のスープを飲んでから、早いもので十数年の月日が流れました。

 最弱の初期ステータスから始まった私の人生は、お義母様の熱心なスパルタ教育と、脳内カンペさんの親切なアドバイスのおかげで、気づけば男爵家から、子爵、伯爵、侯爵、公爵、聖公爵、神聖皇族、そして全ての次元を統べる超時空神聖一族の頂点へと上り詰めていました。

 そして今日、王都の天をも貫く大神殿では、全次元の総支配者となった私の『成人式』が、歴史上類を見ない規模で執り行われようとしていました。

 神殿の客席には、あり得ない光言の数々が並んでいます。

 学園時代からのマブダチである公爵令嬢のエリザベスちゃん、私を影から守る最強の裏組織を率いる第二王子殿下、国境で腰痛を治して以来すっかり我が家のファンになった帝国のガスタフ将軍、さらにはお庭で大人しくお座りしている巨大な古代神獣のグランド・ドラゴン。

 そして、現代日本の運送業界を代表して、あの時のトラック運転手のおじ様までが、正装をしてカツ丼をお供え物として持参し、涙を流しながら私を見守ってくれていました。

 そんな全宇宙のVIPたちの視線の中心で、私は白いドレスに身を包み、鏡の前で自分の姿を眺めていました。

「わあ、なんだかお雛様みたい。前世の成人式より、ずっとド派手になっちゃったなぁ」

 相変わらずのん気に呟く私の後ろから、カツカツとヒールの音を響かせて、一人の美しい女性が歩み寄ってきました。

 お義母様、ルクレツィア様です。

 今日の彼女は、公爵夫人としての品格に満ちた、宇宙一美しいドレスを纏っていました。そして、その綺麗に整えられた金髪の上には、私が世界創造のスキルで作った黄金のリボンではなく――あの日、五歳の私に猛毒スープを出した時に頭につけていた、あの少し古ぼけた『真っ赤なリボン』が、大切に結ばれていました。

「シルフィア。本当に、大きくなったわね」

 お義母様は私の前に立つと、優しく私のドレスの乱れを直してくれました。その手はとても温かく、かつて私を暗殺しようと震えていた面影は、もうどこにもありません。

「お義母様。そのリボン、久しぶりにつけてくれたんですね」

「ええ。今日という特別な日には、これが一番相応しいと思ったのよ。……私はね、シルフィア。このリボンを結ぶたびに、思い出すの。芋臭いド田舎の男爵領にやってきて、目の前にいたアホ面の一人の少女を、どうにかして処理してやろうと血眼になっていた、お馬鹿な過去の自分をね」

 お義母様は、ふふっ、と自嘲気味に、けれど本当に愛おしそうな笑顔を浮かべました。

「あの頃の私は、あなたに嫌がらせをするのが生きがいだったわ。でも、あなたが私のすべての悪意を、おバカなほど真っ直ぐな愛で返してくれたから……私は救われたのよ。没落の絶望から、孤独から、私を引っ張り上げてくれたのは、世界で一番ズレた、私の最愛の娘だったわ」

 お義母様の瞳から、一筋の綺麗な涙がこぼれ落ちました。

 すると、私の頭の中に、これが本当に最後となる、世界で一番優しくて温かい黄金のチャイムが鳴り響きました。

『うわぁぁん! ついに完結だね! 本当におめでとう、シルフィア! 君の無敵のマイペースさと、お義母さんの不器用な殺意(愛)が、ついにこの世界のすべての因果をハッピーエンドで満たしたよ! もう僕のカンペも必要ないくらい、君たちは最高の家族だ。最後に、お義母さんのその赤いリボンをぎゅっと結び直してあげて。これにて、君の危機管理能力は、永遠の幸福へと変換されるよ!』

「はい。ありがとうございました、カンペさん」

 私は心の中で、ずっと私を守ってくれた神様のギフトに感謝の言葉を伝えると、お義母様の頭の赤いリボンにそっと手を伸ばしました。そして、ほどけかけていた結び目を、真心を込めて、ぎゅっと綺麗に結び直しました。

「お義母様。私を最悪の未来からずっと守ってくれて、本当にありがとうございました。私は世界で一番、お義母様の娘になれて幸せです」

「ええ。私もよ、シルフィア。私の可愛い、世界一の神様」

 私とお義母様が強く抱き合った瞬間、大神殿の扉が勢いよく開かれました。

 溢れんばかりの聖なる光が差し込み、全次元の参列者たちが、一斉に割れんばかりの拍手と歓声を上げました。

「シルフィア様、おめでとうございます!」

「聖母ルクレツィア夫人、万歳!」

 ガスタフ将軍が号泣し、エリザベスちゃんが手を振り、グランド・ドラゴンが喜びの遠吠えを上げ、王宮の裏システムには【幸福度、測定不能の無限大】という最高のアラートが点滅しています。

 どんな悪意も、どんな陰謀も、考え方ひとつで世界はどこまでも優しく、ハッピーに変わっていく。

 私はお義母様の温かい手をしっかりと握り締め、真っ赤なリボンが幸せに揺れるのを見つめながら、光り輝く未来のステージへと、どこまでもマイペースに一歩を踏み出すのでした。

――『義母が私を殺そうとします』 本編完結。


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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます 楽しく読ませていただきましたが… お父様~?!一体いまどこにいらっしゃるの~(@_@)
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