第46話:全自動・天候エディット。~「毎日が日曜日(晴れ)だと、野菜が全部干物になる件」~
世界地図を「黄金比」でトリミングし、国境線を定規で引いたように真っ直ぐに整形してから数日。空中要塞のリビングで、カナタは窓の外を眺めながら小さく溜息をついた。
「……なぁテツ。せっかく地形を綺麗にしたのに、雨が降ると画面が暗くなって、せっかくの『彩度』が台無しじゃないか? 低気圧のせいで頭も重いし、作業効率が落ちるんだよな」
カナタがモニターのシステムトレイを確認すると、そこには【天候設定:オート(シミュレーション)】という項目がデフォルトで設定されていた。
『カナタさん、それは世界の生態系を維持するための「自動循環プログラム」ですよ。雨が降るから川が流れ、作物が育つんです。……あ、ちょっと、設定画面を開かないでください!』
「いや、もっとこう……常に『映える』天気でいいだろ。……よし、【天候:快晴】に固定。……あと、『彩度』を50%アップして、『明るさ』も最大値まで上げておくか。これでお掃除もしやすくなるだろ」
カナタが「適用」ボタンをクリックした瞬間、世界から「曇り空」という概念が消失した。
地上のあらゆる場所で、太陽が不自然なほど輝きを増し、空は加工アプリを通したような、毒々しいほど鮮やかなコバルトブルーに固定された。
――一週間後。
地上は、未曾有の「美しすぎる地獄」と化していた。
「陛下ぁぁぁ! お助けください! 毎日が日曜日(快晴)なのは結構ですが、一滴も雨が降らないせいで、帝国の畑の野菜がすべて収穫前に『干物』になってしまいました!」
「洗濯物が3分で乾くのは助かりますが、川の水が蒸発して、魚たちが砂浜で『焼き魚』になっております!!」
要塞のインターホン越しに、地上の代表者たちが枯れ果てた声で訴える。
だが、バルコニーで日光浴を楽しんでいたリリアーヌは、グラスに入ったジュース(カナタが氷の解けない設定にしたもの)を傾けながら、優雅に微笑んだ。
「あら、文句が多いですわね。カナタ様がこれほどまでに『明るい世界』にしてくださったというのに。……雨が欲しいなら、わたくしが聖光で雲を焼き払って、代わりにキラキラした粒子でも降らせてあげましょうか?」
「……ダメ。……不純物(雨)は、主様の、お肌を、汚す。……濡れた、地面を、拭くのは、大変。……乾燥している方が、埃を、吸いやすくて、助かる……ッ!」
セレスティアが、魔力を帯びた掃除機で大気中の僅かな湿気すらも「汚れ」として吸引していく。
彼女たちにとって、地上の飢饉など「主様が快適なら些末なバグ」に過ぎないのだ。
「……そっか。雨がないと困るのか。……じゃあ、テツ。直接『水滴のエフェクト』を特定の座標にドロップしてやればいいんだろ?」
『……カナタさん、その「エフェクト」って、まさか物理演算を無視した……』
「ああ。自然の雨は面倒だからな。……よし、帝国全土を選択して――【パーティクル:ウォータードロップ】、出力100%で実行!」
カナタがクリックした瞬間、帝国の空から「雨」ではない「何か」が降り注いだ。
それはカナタがデザインした、一粒一粒が完全に同じ形をした、ダイヤモンドのように硬く、そして高密度な「水の塊」だった。
ドドドドドドッ!!
「ぎゃああぁぁっ!? 陛下、雨が……雨が家を貫通してきます!!」
「雨粒一つが鉄球のような重さです! 畑に穴が空いて、地層が剥き出しになっております!!」
カナタが良かれと思って降らせた「高画質な水データ」は、重力加速度を無視した凄まじい質量兵器となって地上を蹂躙した。
人々は雨を求めていたはずが、今や「どうか、どうか元の『画質の悪い雨』に戻してください!」と、泥水を啜りながら要塞に向かって五体投地で祈る羽目になった。
「……おかしいな。テツ、水なんだから植物にいいはずだろ?」
『……カナタさん。貴方の「水」は、解像度が高すぎて地上には重すぎるんですよ……』
カナタの「うっかり」は、ついに天候すらも、人類が生存不可能なレベルの「高画質な絶望」へと進化させてしまった。
【次回予告】】
第47話:『要塞の「音量調節」。~「世界が静かすぎて、自分の鼓動がうるさい件」~』
「地上のデモの声がうるさい」という理由で、カナタが世界の【マスターボリューム】を0に設定。
音が消えた世界で、人々は「手話」と「ジェスチャー」のみで生活を始めるが……。
「音がなくて寂しい? じゃあ『BGM』を流してやるよ」
カナタが選んだ「作業用BGM」が、地上の住人たちの精神を強制的にハイテンション(狂乱)に叩き込む!
【作者よりお願い】
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