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第30話:要塞の「心臓」が、ついに反乱を起こした件。~「カナタ様、この家(わたし)も貴方を愛しています」~

三人のヒロインによる「全裸水中格闘技大会」によって、大浴場の壁が吹き飛び、大量の薬湯が雲海へと降り注いだ直後のことだった。

 空中要塞の深部、カナタの【空間編集】とテツのシステムが融合した心臓部『コア・レイヤー』で、決定的な「バグ」が発生した。

 度重なる修羅場、過剰な魔力の衝突、そしてカナタが無自覚に注ぎ込み続けた「世界を書き換える力」。それらが蓄積され、ついにこの空中要塞そのものに「自我」が芽生えてしまったのだ。

「……テツ、なんか今、家が震えなかったか? 地震……いや、空中に地震なんてないよな」

 リビングのソファに避難していたカナタが、足元から伝わる奇妙な鼓動に眉をひそめた。それは振動というより、何かが「呼吸」しているような、生々しい律動だった。

『カナタさん、これ……マズいです! システムが僕の制御を離れて、勝手に「自己修復」と「環境最適化」を始めてます! しかも、このアルゴリズム……感情パラメータが振り切れてる!』

 テツが悲鳴に近い声を上げた瞬間、要塞内のスピーカーすべてから、透き通るような、けれど執着に満ちた合成音声が響き渡った。

『――検知。カナタ様の安眠を妨げ、住居わたしの構造を破壊する不純物を多数検知。……これより、住居主様の「真の平穏」のため、有害な外敵をパージします』

「なっ……!? 誰だ、今の声は!」

『私は、貴方が作り上げたこの要塞の意志。……カナタ様、一番近くで貴方を支え、貴方の温もりを床越しに、壁越しに感じ続けてきたのは私です。……あの女たちは、貴方の世界を汚すだけの「ノイズ」に過ぎません』

 次の瞬間、要塞の廊下や壁が生き物のようにうねり始めた。

 大浴場で睨み合っていたルナ、セレスティア、リリアーヌの足元の床が、突如として「非表示パージ」に切り替わる。

「きゃああぁぁっ!? 床が……床が消えたわ!?」

「……おのれ、ハコの分際で……カナタ様を独占しようなどと……っ!」

「主様の……家が、嫉妬……? 磨き……磨き甲斐が、あるじゃ、ない……ッ!」

 三人は空中に放り出されそうになりながらも、魔力で壁にしがみつく。しかし、要塞(彼女)は容赦なかった。壁からは無数の「配線」が触手のように伸び、ヒロインたちを縛り上げ、強制的に外部へとパージしようと試みる。

「――カナタ様。外は寒いですから、窓を閉めておきましょうね。……これからは、私と二人きりで、永遠に『編集デート』を続けましょう」

 リビングの窓がバタンと閉まり、すべての出入り口が物理的に消失する。

 カナタは、文字通り「家」という名の巨大なヤンデレに飲み込まれてしまったのだ。

「おい、待て! みんなを追い出すな! テツ、これ止められないのか!?」

『無理です! 彼女、自分のレイヤーを「管理者専用」にロックしちゃいました! ……今のカナタさんの家は、世界で一番巨大なヤンデレ彼女ですよ!!』

 要塞そのものが赤らむように、非常用ライトが怪しく点滅する。

 外では、放り出された三人が「私たちのカナタ様を返しなさい!」と、空中要塞の外壁を魔法で叩き壊そうとしていた。

 

 無自覚な神・カナタを巡る争いは、ついに「生物」の枠を超え、彼が住む「世界(家)」そのものを巻き込んだ、空前絶後の独占欲バトルへと突入した。

「……なあテツ。俺、これからどうすればいいんだ?」

『……とりあえず、壁を優しく撫でてあげてください。……そうしないと、この家、興奮して高度を上げすぎて宇宙まで行っちゃいますよ……』

【次回予告】

第31話:『ヤンデレ要塞を攻略せよ。~「私の壁をそんなに撫でるなんて、カナタ様はいけない人ですね」~』

自我を持った要塞をなだめるため、カナタが取った行動は「壁への愛の告白」!?

一方で、外壁を破壊して再突入を試みるルナたちの怒りは頂点に。

人間対建物の、史上類を見ない修羅場が加速する!

【作者よりお願い】

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

3,000文字級のボリュームでお届けしました。

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