↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/34

幕間「失墜の飛空騎士」(前編)

「第一部・後段」への繋ぎとして位置付けつつ、同時にその「後段」の序章的な面も含みます「幕間」のエピソード。

まずは前編をお届けします。


飛行能力を持った幻想生物騎たちが担う事によって行われている、エリドゥ世界における航空戦の様相をご覧ください。

 船底から屹立(きつりつ)する前部帆柱(フォアマスト)の直下、甲板上に聳(そび)え立つ船首楼(せんしゅろう)の物見台(トップ)。

 そこへ仁王(におう)立ちする掌飛長(しょうひちょう)が、満を持しての号令を発した。


「飛空騎隊、発進に備え! 両舷、跳ね板(・・・)開口せよ(おろーせー)!」


 それを受けて。船首楼の左右両舷を守る巨大な防盾(シールド)が如くになっている、城砦の門扉(跳ね橋)と同じ造りをした分厚く長大な跳ね板が。

 鉄鎖(くさり)の滑り落ちる音を響かせながら、ゆっくりと外側へ向かって開き(倒れ)始めて。

 口を開け出したその隙間から、一気に潮風が吹き込んで来る。


 ともすれば逸る心を抑えるべく、ひとつ息を吐いてから。


「よし、行こう!」


 編隊(ペア)を組む同僚騎士(ウイングマン)のカントに声を掛け、ラグランの飛空騎士ナダーは愛騎の鞍上(あんじょう)へ身体を持ち上げた。


 そこに腰を据えるなり、もはやその身に染み付いている手際の良さで。

 腰周りへのハーネスベルトの装着、各種携行装備の点検と言った一連の流れ(発進前シークエンス)を進めて行く。


 彼らがそうしている間に、開度を増し続けていた跳ね板は停止して(全開となって)おり。

 さながら船体の両舷へ延びる小翼が如き、甲板(床面)と同じ高さで(はフラットに)そのまま海面上へ(船体の外まで)身を乗り出す事が可能な、踊り場の如きスペースがそこには出来上がっていた。


 もし真横から今のフネの姿を見たならば――船体を直交する形で貫通している構図になる短い滑走路(・・・)が、そこへと完成していると言う格好だ。


 降りきった両舷(左右)の跳ね板上でその固定確認を手早く済ませ、駆け戻って来る船員(水夫)たちの長が。それを示す合図(サイン)を出したのに頷くと。


「今日も頼むぞ、〔白頭(ボールド)〕」


 鞍上からそう呼びかけ、ぽんと背を叩く相棒(ナダー)に応えて。

 白い羽毛に覆われた頭部を持つ彼の愛騎は、腹這いにさせていた身体をぐっと起こすと、足取りも軽やかに跳ね板の上まで進み出て行く。


 船体と言う囲いの内から出た事で一挙に体感も増した潮風を受けながら、その際近くに歩を留めると。

 巨鷲は畳んでいた両の翼を大きく(いっぱいに)広げ、ゆっくりと羽ばたかせ始めた。


 最初(ひとつ)、再度《ふたつ》と繰り返し――三度(みっつ)目に羽ばたいた時にはもう、両脚が板目から離昇して(浮き上がって)行く。


 人間(ヒト型類)をその背に乗せて、苦にもしない(涼しい様子なまま)でいられる程の雄大な体躯を誇りし大空覇鷲(ハルパゴルニス)にとって。


 既に総員戦闘配置を下令(発し)、中央帆柱(メインマスト)上へ戦闘旗を掲げた臨戦態勢での急行中であるだけに。

 通常の自然風は元より、空気流(人為的に風)を造り出す(吹きかける)魔導具によるそれも加えた合成風(・・・)で帆をいっぱいに撓(たわ)めて航走中の(はしっている)母船(フネ)からの離昇(発艦)は、容易な(たやすい)事であった。


 船上の将兵(各位)へ向け、ナダーが発艦(出撃)の敬礼を送る間にも。

 高さを増し続けて行く視界は直ぐに中央帆柱(メインマスト)の頭頂(トップ)を超えて――対舷側からは、向こうもほぼ同じタイミングで発艦した(上がった)カントとその愛騎が姿を現して来る。


 大雑把に向かう(目的とする)方位との位置関係から、そのまま騎首(あたま)を巡らすだけで良かったので。

「お先!」とばかりに飛翔へ移ったカント騎を追って。


 ナダーも愛騎を大きく旋回させ、母船の頭上を飛び抜けながらそちらを目指す。


「ははっ、今日も絶好調だな? いい加速(出足)だ」


 もちろん向こう(カント)とて、全力(本気)で飛ばしているわけでも無いとは言えだ。

 少なからず付けられていたスタートダッシュでの差をものともせずあっさりと追い付き、並びかけた(並走飛行へ至った)愛騎(相棒)の力強い飛翔(羽ばたき)を確かめて。ナダーは満足げにつぶやく。


 羽を並べて悠然と飛翔して行く、炎の如し色鮮やかな緋色(あか)を主にする羽毛をまとった二騎の巨鷲(飛空騎)。


 翼手亜竜(ワイバーン)を代表格に(はじめとする)、それらの騎乗が可能な幻想生物種を駆って大空(そら)へと進出した飛空騎士たち。

 彼らによって実現されて幾久しいのが、この世界(エリドゥ)の航空戦力であったが。


 ナダーたちが駆っている巨大な鷲、大空覇鷲(ハルパゴルニス)は。

 それらの内でも〝魔素(マナ)の力を介さずとも乗騎として空を征く事が可能だ〟と言う、特異な存在(希少な例外)であった。


 基本的には超常生物――「魔物」と言う総称(くくり)が用いられる場合も多い、魔素(マナ)に活性な生物たちの中で。

 それに根ざした飛翔能力を有している種の内の幾つかが、乗騎として使役されているのが通例である処において。


 非超常生物(魔素に活性でない生物)でありながらも、唯一そこに伍している大空覇鷲(ハルパゴルニス)は。

 そうした「魔物」ではない通常生物(・・・・)の枠内での、猛禽類(もうきんるい)たちの頂点に座す(君臨する)存在だった。


 そんな巨鷲の背に乗って、ナダーたちが目指して行こうとするその先は――。

 自邦(ほんごく)の港を介しての魔導双話による救援要請を報せて来た、自邦ら(同胞たち)の船隊がいる筈の海域で。


 折悪(おりあ)しくも彼らはそこで海賊船隊と遭遇し、追尾されて(襲撃をかけられて)いると言うのだ。


 むろんの事ナダーたちの母船である〔リバティ号〕も、援軍に向かうべく戦闘態勢で航走して(はしって)いたわけだけれども。

 そこでまず飛空騎(空からの目)を送り出し(先行させて)、より正確な情報を得る(位置や距離等を知る)事を狙うと言うのが第一の目的(意図)であった。


『〔リバティ号〕より飛空騎隊へ、状況を知らせ。どうだ? 何か見えるか?』


 そこに入って来る、母船上で魔導双話具のもう片方を持っての管制(やり取り)を担う通信(双話)員からの問いかけに。


『いや、こちらもまだ何もだ』


 自身からのハンドサインでの問いに、大きく頭を左右に振ってカントが応じて寄越すのも確かめてから。

 ナダーは手元の魔導双話具に向け、そう返す。


 順調に高度を上げつつ進んではいるものの、今日の空域(そら)には各所でそれなりに雲も出ており。

 目指す前方の眼下に目標とおぼしき影(もの)は、まだ見出せていなかった。 


 僚騎(カント)とは、互いに左右を分担する格好で水平線上へと目を凝らしつつ。

 時折そうやってハンドサインの交換で、互いに意志疎通を図っている格好だったが。


 相応(それなり)には希少な代物(もの)である魔導双話具を。

 互いの間に(飛空騎同士で)も配備できる(も持ち合える)様な余裕(・・)は無いのだから、こればかりは仕方が無い。


「これでも以前(むかし)に比べれば、改善されて(随分とマシになって)は〝いる筈〟なのだから。贅沢な悩みだって言われてしまうのだろうがな……」 


 誰言うでも無しに、ナダーはそうひとりごちる。


 こうして偵察騎(・)として出て――それで〝結果〟(目にしたもの)を戻って伝える(報告する)までも無く。

 即時的(ダイレクト)な疎通(情報共有)を可能に出来る魔導具(魔導双話)の、その存在の価値(威力)と言うものを実感させられる事はしきりであったのだけども。


 だからこそ、逆に。

 編隊長(リード)騎と母船ないしは自陣営間のやり取りだけで無く、編隊の各騎間でも同様にする事が出来れば。


「各騎がバラけて(単騎で動いて)の、より広範な索敵線を展開したりする様な事も。あるいは可能になるかもしれない……」


 現場の人間ならではな発想(感覚)での〝そんな可能性〟にも思いは馳せつつ、ナダーの目は眼下へ懸命に凝らされていた。


(むっ!?)


 と、そんな中でナダーが再び僚騎の方を見やると。

 鞍脇から取り出した「遠見(とおみ)の魔筒(まづつ)」を目に当てて、カントはじっとある方向を注視していた。


 そして魔筒を降ろすと、おもむろにハンドサインを送って寄越す。

 その意味する事はすなわち、「見つけた!」だ。


 彼が指し示した雲の切れ間の方へ、交代でナダーが自身でも魔筒を向けると――。

 各所に損傷を負いながら必死に逃げている自邦(ラグラン)の旗を掲げた帆船に、中小複数の海賊船が群狼の如く追いすがりつつ襲いかかっている。

 そんな光景が、魔導による望遠鏡の視界内へ映し出された。


『飛空騎隊より、〔リバティ号〕! 目標発見! 状況は切迫と判断、ただちに援護へ入る! 位置は――』


 確認(目視)した状況から、もはや一刻を争う段階(レベル)だと判断し。

 ナダーは即座に風圧(かぜ)除けのゴーグルを下ろすと、愛騎をそちらへ向けての降下に移らせながら魔導双話具へ向け叫んだ。


 阿吽の呼吸で追随するカントが、後背の宙空へ着火した落烽火(おとしび)を投げ落とす。


 上空にいる飛空騎が可燃物を詰めた袋に着火し投下する事で、落下して行く空中へ煙や炎の線が引かれて流れる。

 謂わば地上で上げる狼煙(のろし)の逆回し版であり。魔導双話によって伝える位置情報を補完する、時限式の目印となるものだ。


 状況的に、まだ若干の猶予があり(見込め)そうならば――。

 一騎(片方)が母船の近くまで引き返し、その前方上空で誘導して行く形とする事で迅速な(最短時間での)戦力投入の集中を狙う場合もあるのだが。


 今回は直ちに介入をせねば危ういと見て、まず彼らだけ(飛空騎隊のみ単独)で仕掛けると言う判断をしたが為の代替策であった。


 本格的な救援(防衛戦)の展開は、軍船(武装帆船)である彼らが母船(〔リバティ号〕)の到着(合流)を待たねばならないのだとしても。


「それまでの猶予(時間稼ぎ)は、〝放たれし矢〟である飛空騎隊の役目(こっちの働き次第)だ!」


 自らを鼓舞する様にそう言うや、海面に向け伸びて行く煙柱を背に急降下へ移る二騎の大空覇鷲(ハルパゴルニス)。


 彼らが初撃で(まず真っ先に)狙うのは――追尾しながらの攻撃を続ける僚船たちを尻目に、軽快な機動性を発揮し側面から回り込む(大きく迂回する)針路を取って(動きを見せて)いる一隻の小型海賊船。


 近距離スプリンター的なフネと言うべき、ガレー船のその特性を存分に発揮しての。こうした状況下における船足の速さは伊達ではない。

 獲物である自邦(こちら)の船の進路(あたま)を、先回りして真っ正面から押さえようとしているその動きを妨げる存在(もの)がいなければ。

 その狙い通りに頭を押さえられる格好となって、我が邦(こちら)の帆船(フネ)はその行き足を大幅に鈍らされ、追いつかれてしまうだろう。


 故にまずはその阻止を! と仕掛けるナダーたちの攻撃は、見事な奇襲となった。


「吠えろッ、魔填杖(ブラスター)! 術式解放(ディスチャージ)!」


 愛騎の首元に巻く革帯(ベルト)の挿し口から抜き取った、複雑な装飾が施されし魔杖(ロッド)を片手に。

 ナダーが〝力ある言葉〟を唱えると――構えた魔杖(ロッド)の先端から、眼下の敵海賊(ガレー)船へ魔術の炎弾(ほむら)が飛び出して行く。


 「魔物」ではない(通常生物の枠内である)彼らの大空覇鷲(ハルパゴルニス)には、翼手亜竜(ワイバーン)ら超常生物騎の様な魔咆射(ブレス)を放つ能力が無い(事が出来ない)故に。

 騎手(駆り手)である飛空騎士が、攻撃魔術を充填(チャージ)した魔道具の兵装(武器)を携行し、その代用としているのだ。


 斜め上空から撃ち降ろす格好となった炎弾は、加速も付けつつ海賊船の船体を左舷に掠めて落ちる!


 至近弾(直撃せず)――ではない。

 そこ(・・)で忙しなく動いている多数の櫂棒(オール)、それらのど真ん中を捉えて。放たれた〈魔炎爆華(フレイムバースト)〉の魔術がその威力を解き放った!


 直下の海面(みなも)も巻き込んだ魔炎(ほむら)の爆裂が櫂棒(オール)の大半を打ち砕き、漕ぎ手たちが甲板上へ打ち倒される。


「よおし、とどめは任された!」


 狙い通りの初撃を終え、離脱に入って(上昇へと転じて)いるナダー騎と入れ替わりで。

 続いての急降下(ダイブ)を仕掛けて行くカント騎が、海賊ガレー船に向け今度は自身が魔填杖(ブラスター)を解き放つ。


 一撃で片舷の推進力を喪失し。つんのめる様にその行き足を止められ這う様に、ただ惰性で動くのみとなっていた船体のど真ん中を今度は直撃されて。

 海賊たちの悲鳴(絶叫)と共に、ガレー船の甲板上は瞬時に火炎地獄と化した。


 奇襲からの連係攻撃――まず行き足を止め、それで動きの鈍った敵を確実に仕留めると言う、理想的な初撃を見事に成功させたナダーたちだったが。

 本当に大事なのは、むしろここからだ。


 海賊たちも襲撃に夢中(前のめり)だったからこそ、相乗効果的な奇襲(初撃)が見事に決まる形となったわけだが。

 その戦果として見れば、小型(ガレー)船を一隻仕留めただけで。旗船(はたぶね)であろう中型の帆船以下、追撃中の敵勢(群狼たち)はまだまだ健在。

 そして奇襲のアドバンテージはもう存在しない(使ってしまった)。


 頭上に敵飛空騎(〝毒針を持つ蜂〟)が現れたぞ(取り付いたぞ)! と言う事で。

 各海賊船の船上では弓兵や、魔杖(ワンド)を手にする魔導士たちが頭上(そら)を睨み。


 また中型船の甲板上では、それらに加えて弩砲が大わらわで上空(こちら)へと向け直されようとしており。


 ナダーたちとしても、再び急降下で肉薄して魔填杖(ブラスター)の魔術を叩き込む様な機動(戦法)は。

 かなり危険な行動に(リスクが大なものへと)、もう変化している。


 とは言え、対応を強(そうせざるを)いられた(得なくなった)事で。

 連中の行き足は確実に抑止されて(ブレーキをかけられて)いるわけだから、それで良い(狙い通りの結果だ)と言う話なのだが。


 そして海賊船群の頭上を押さえたままのナダーたちが選べる(には可能な)戦術(攻撃)も、無論それだけでは無い。


 多分に牽制だろう(こちらを遠ざける為の)弩砲からの一射も、まず届かぬ(当たらぬ)高度まで再上昇して来たカントと意思疎通(ハンドサイン)を交わして。

 ナダーは群狼ども(・・・・)の統率役(あたま)と目される、最後尾に付く中型船を追撃(二次攻撃)の標的に定めた。


 海賊船群の中では目立って大きな目標となる為、純粋に狙い(当て)やすいと言うのもあったが。

 旗船(あたま)に一撃を食らわせ、それどころでは無くしてやる事で。


 軽快な機動性を武器としている、健在なままの残る小型(ガレー)船たちにも。

「母船が危ない(還る先が無くなる)!?」との動揺を誘う、波及が期待できるだろうと言うのも有る。


「次ッ、行くぞ!」


 更に少し高度を取ってからの緩降下に入ったナダーの〔白頭(ボールド)〕が。その加速を利用し、抱えて来ていた革袋を切り離す(投下する)。


「ヨシ! どんぴしゃだ!」 


 中型海賊船へ向けての落下軌道にあるそれを、急降下で追うカントが。

 持ち替えた新たな魔填杖(ブラスター)の先端を向け、充填されし炎魔法の術式を解き放つ。


 飛び出した魔術の炎弾が一気に革袋に追いつき、空中に派手な爆発の華を広げた!


 魔法(術式)の威力(ちから)だけでは、無論そうはならない。

 丸く膨れた革袋の中には、燐(リン)や硫黄などの可燃物も混ぜ込んだ油脂が詰められており。


 投下したそれを、魔咆射(ブレス)の炎弾や魔填杖(ブラスター)の火魔術で破裂(着火爆発)させて広範囲に炎の雨をばらまく、飛空騎ならではの空襲(攻撃方法)で。

 前線の砦や軍船の様な相手に対しての、特に有効な攻め手だとされていた。


 実際、炎の雨に降り注がれた中型海賊船の甲板上はたちどころに阿鼻叫喚(あびきょうかん)の場と化している。

 小さな炎の散弾を浴びせかけられた様なものであり、全身に帆を広げて進む帆船にとっては魔術の炎一つに直撃されるよりかむしろ恐ろしい(対応が難しい)攻撃となる格好だ。


「どうだッ!?」


 確かに手応えを覚えつつ、標的(海賊船)の状態(ダメージ)を見定めんとカントは目をこらす。

 与えた打撃の度合い次第で、次の標的(第三次攻撃の対象)も変わって来るからだ。


 同胞を救う為(目的)の戦闘であるが故に。そんな彼の行動(意識)も、無理からぬものではあっただろう。

 しかし本来的には禁忌とされる(すべき行動とは真逆な)事をしてしまったその代償は、やはり高く付く事となる。


 攻撃の成果(分担としてならば、)確認と判定(自身の役目である事)を。カントもして(までがやって)しまっていると言う状況に、舌打ちしたくなる気分で。

 やむを得ず頭上を見上げた(上空警戒に切り替えた)ナダーの目に。


 そのカント騎めがけての急降下をかける(ダイブで迫っている)、全身赤褐色な敵騎の騎影(すがた)が映る!


「カント! 躱せ(避けろお)ッ!」


 ナダーの全力の警告(叫び)もかき消す騎竜の咆哮に、カントがはっ!? と頭上を見上げるが――しかし既に(もはや)、手遅れだった(間に合わない)!


 太陽を背に逆落としを掛けて来た翼手亜竜(ワイバーン)の、牙の並んだ顎(大口)が魔咆射(ブレス)を放った(撃ち出す)。


 避けようも無く炎弾の直撃を受けたカント騎は、一瞬で全身火達磨となって墜ちて行く。

 その途上で大小二つの炎塊に分かれ、それぞれが波間に飛沫を立てて沈む(消える)――それが彼らの終焉(さいご)だった……。




(続く)

地球世界の歴史上においては、帆船の船首楼は徐々に縮小化を辿って行く流れになっていたのですが。

対して本作の舞台である異世界エリドゥでは、そうした傾向はあまり見られないと言う相異があります。


その〝理由〟となるものが、今回の劇中にて描かれた通りでして。

艦載騎(・)として派遣されて、その船を母艦(基点)としての偵察騎や連絡騎の役目を担う飛空生物騎たちの。

離発着場および船内厩舎を兼ねる区画としての役割を持たされる様になっているから~と言う、ファンタジーな異世界ならではの事情に基づいての相異である格好となりますね。


※そんな船側における受け入れと運用の責任者となる「掌飛長」なんて言う、地球世界にはそもそも的に存在しえないポストがあったりするのも~ですが。


性質的には、現代の軍艦や巡視船がヘリコプターを搭載するのに――と言うよりも、むしろ第二次世界大戦の頃までの巡洋艦などが。

そうした用途に用いる為の単発水上偵察機や水上観測機を搭載していた~と言うのに近いかもしれません。


もっともこちらの飛空騎たちは、単に偵察や連絡任務だけではなく。

実際には今話の劇中で描かれた様な対水上船・対地上目標への攻撃や、敵飛空騎との制空戦闘までも行っているわけですので。


発揮しているその速度や飛行高度帯は別にして、そうした多用途騎であると言う意味では。

感覚的にはむしろ、ゲーム『艦隊これくしょん―艦これ―』のおかげで、それ以前に比してかなり知名度も向上した万能水上偵察機〔瑞雲〕あたりが。

イメージ的にはより近しい存在であると、そんな風に言えたりもするのかもしれませんね(笑)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
なんだか飛空機母船は水上機母艦や改装工事をしていない最初期の空母フェーリアス、ヘリコプター巡洋艦という感じを受けますね。 運用も取り敢えず空を飛んで攻撃力もそこそこ使えて限定的な通信能力を持たされてる…
お久しぶりです。また今回も続きが見られるのでとても良かったです。 以前話にあった飛空騎母船の話でしょうか。突然だったので踊りきました。かなり詳しく描かれてるのは凄いですね。役職まで船の構造的な面もこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。