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元人間の天狗徒然紀行  作者: 唐墨 いくら
第二章 蛍恋祭編
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閑話その四、 香音の鬱屈

更新が遅くなりすみません。これからもちまちま自分のペースで書いてまいります。

読んでくださっている皆様には大変感謝しております。

 今日も夕飯時になってくるまで、光翼は帰ってこなかった。香音は、邪魔になるだろうからと修行の間は顔を見せないようにしていた。だからだろうか、最近、妙に寂しい。


 私は親友なのだから、もう少し頼ってくれてもいいのに…これじゃあ、何のために光翼を追ってきたのか…。


 ふと、先日喧嘩した両親との会話を思い出す。



 ――大学の勉強も佳境に入って、就職先も見つけ出す時期なのに、なんで今休学するのよ!――


 ――お前の学力、能力なら、このままいけばいい職へもつけれるだろう!私がお前の興味ありそうな業界の分野の知人に声をかけてやったというのに、無駄にするつもりか?!――


――うるさい!私は光翼を探しに行くの!大学の研究も、就活も、そのあとすればいいでしょ?!私はもう決めたから!――


――今が一番大事な時期だというのに、所詮他人なのに、そんな労力かけるのがもったいない…――


 「今が一番大事な時期」というのが、昔から母の口癖だった。その口癖に従い、今まで常に全力を出して両親の期待に応えるようにしてきた。両親の意向に逆らわない範囲での自由で香音はいろいろこなしてきたが、今回は人生で初めて、香音が大きく両親に逆らったのだった。


香音は自分が理屈でなく感情で動いているのはわかっていた。だからあえて両親を説得しようとはしなかった。もう決めたことだと、話をしない姿勢で家出同然で出てきたのだ。

別に後悔などはない。それも、光翼を探しに行くなら仕方のないこととさえ思えていた。その光翼を「所詮他人」と母親が言ったことも、口論に熱を増し、家出同然で出て行った理由の一つでもあるが。


 従って香音は、今のこの状況に焦っていた。休学をして、親と喧嘩別れしてまでして再会した光翼に、現在何もできていないこの状況に。

 最初のうちは、光翼の身の回りの手伝いや(翼が大きくて、体や翼諸々の手入れや着替えが大変なのだ)、神社のお手伝い、光翼の修行の応援などで充実していたはずだ。香音も、一緒にいてとても心地よいと感じていた。

 和久さんやその両親である和義さんと清美さんとの何気ない会話、光翼との大学から変わらない冗談の言い合い、ゆっくりと流れる時間。その全てが、自分の実家には到底期待できないもの、しかし求めていたものであった。


 では、なんでこんなに心の内が空しく、不満を募らせているのか。


 「光翼のせいよ…。光翼は、私なんかいなくてもいいんじゃない…。」


 ここ最近、光翼が修行に身を入れるようになってからは、光翼との日常的な関わりが少なくなっていた。修行から帰ってからも、以前のように会話を楽しむ時間が少なくなった。常に光翼は修行の内容を考えて、香音との会話もどこか上の空の時もあった。光翼は決めたことにはまっすぐなのは理解していたが、そんな時、どうしようもない空しさが香音の胸を襲ったのだ。


 自分が光翼についていけば、光翼も精神的に安定した生活ができるだろうし、何よりお互い必要とする仲だ。そう思っていたのが自分だけなのかと、そんな暗い思考が頭をよぎってならなかった。


 そんな中に降ってわいた、再度山籠もりの話だ。しかも、香音は山籠もりの話など初耳だった。今まで何も言わなかったことにさえ腹が立った。自分はその山籠もりについていかない前提なのか、親友なのに、と。


 同時に、山神に選ばれたから光翼の中で香音の存在が薄くなっているのではないかと、余計な負の感情も渦巻いた。


 だから、つい感情的になって言うつもりもないことまで言ってしまった。「特別だから、お気楽でいいね」なんて嫌味、言うつもりも、今まで思ったこともなかった。口をついて出た言葉に、光翼は今までにない悲しい表情を香音に向けていた。


 「どうすればいいってんの…。」


 布団にくるまったまま、香音はただただ焦りや腹立たしさ、後悔をかき回していた。

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