自己創造
プロローグ
かつて、ウラニスの民は小さな恒星『ウラニス0』を中心とする文明圏に暮らしていた。
だが11年前。
第II次総戦争――通称『魔の世界戦』によって、彼らの母なる太陽は破壊された。
太陽消滅後、多くの世界が滅びた。
生き残った民は、新たな居住地を求めて各地へ移住する。
その一つが、褐色矮星ウラニス7だった。
褐色矮星。
それは惑星より大きく、恒星より小さい天体。
自ら僅かな熱と光を放つが、真の太陽にはなれなかった『燃えない星』である。
昼になっても空は薄暗い。
夜になっても完全な闇は訪れない。
ウラニス7は、そんな奇妙な世界だった。
'魔の世界戦'終戦をもって、あらゆる武力交渉は、隣接世界'媒界'で、仮想的に行われた。
ヒュラの物小屋
ヒュラは首飾りを付けている。
星図のような首飾りは、後にヒュラの生い立ちを示す重要な手掛かりになる。
母親らしき者がヒュラに首飾りをかける記憶。
途切れ途切れの記憶でその者の顔やあたりの風景は曖昧。
海を泳ぐメタルフィッシュ
幼い頃のヒュラが目隠しをされ、友達らしき者が、誰かに連れ去られる風景。
ヒュラが手を伸ばすも虚しく、足早に去っていく。
太陽の消滅。(強烈な閃光)
導入
①家に着いたヒュラが眠りこける。
寝る前に首飾りを外して握りしめる。
右手が異様な存在感を纏う。
夢の世界へ移行。
②飢餓状態の少年と青年が、巨大な魚を貪りながら、頬張っている。
③ヒュラは、空腹だった。
空腹………。
その欠乏は、すべての欲求を、渇望を、肯定してくれるかに思えた。
身体が、エネルギーを欲する。
熱が抜けていき、身体に力がうまく入らない。
何かを食らいたくて、仕方がなかった。
④足を踏み出すが、つまづきよろめく。
前を向き直してヒュラはギョッとする。
⑤2人とも、首を括って吊り下がっていた。
魚は思いの他、小さかった。
⑥ヒュラは急いで駆けつけ、飛び上がる。
ヒュラの手が、縄を引きちぎった。
すると、景色が変わっていく。
山場1
①ヒュラが着地した時には、そこは全く違う場所に変わっていた。
振り返ると、何もなかった。
②前を向き直すと、遥か前方に、細い線が途切れなくどこまでも水平に続く。
水平に続く細い線は、その星に生活する民の列だった。
③近づいてよく見ると、村人や兵隊、仕事服の男女など、その星に生活する民のようだった。
全員、顔はよくわからない。
④足を踏み進めるにつれ、言われずともなぜか感じた。
ヒュラは、自分に向けられた怒りをなんとなく感じ取った。
「なぜ、あの2人を助けたのだ!
奴らは、我々を生き地獄へと追いやった!!
ただ貪り搾取するだけの悪だ!!!!」
列を成した民は怒る。
⑤わけもわからずにただ走り続けていたヒュラは、先ほど助けた青年の1人を見た。
彼は、みるみる老けていった。
ヒュラが並び立つ民の近くまでたどり着いて、助けた男を見た。
⑥その男は、列を成して怒るに謝罪しているようだった。
⑦ヒュラが口を開けた瞬間、怒れる民の1人が消えた。
視界が開け、断崖絶壁が広がった。
⑧謝罪していた男が、落ちる者を助けようとするが、横にいた者が彼らを突き落とした。
⑩そして、ヒュラが不快感を覚えて何か問いただそうとする前に、その彼も飛び降りた。
一瞬、その者がヒュラには、のっぺらぼうに見えた。
⑪ヒュラの意識が遠のいていく。
⑫いつの間にか、ヒュラは目が覚めていた。
⑬それから、ふと我に返り、寸前までの記憶を辿れないことに気づいた。
⑭なぜか、背筋を冷たい汗が流れる。
ヒュラは寝返りを打ちながら、不調を感じる。
ヒュラは、激しい空腹感に襲われていた。
ヒュラは思い出す。
「今日、給食争奪戦で、サマンダーに勝ってさえいれば!」
だが、彼が寝ていた理由は、彼の給食争奪戦には無関係であった。
実際のところ、彼が現在、体調不良に陥った原因は、自業自得と言える。
ヒュラは、屋上でマラルに大敗した事も思い起こしていた。
そして、不快感を露わにした。
その後、ヒュラは再び眠りこける………………。
山場2
事の発端は、3時間前に遡る………。
①ヒュラのクラスは、'選ばれし者'の有力候補が集まるとされ、他クラスと大きく異なる。
例えば、週に2回の給食争奪戦が実施され、ステレオ武装(仮想戦争)の練習を行う。
その日も給食争奪戦が終わる。
マラルは給食にありつけない。
マラルが他クラスの生徒たちの机を叩き、ステレオを胸の前で握り締めて見せつける。
「その飯よこしな!」
ある生徒は、視界が眩んでいるかのような状態に陥る。
また別のある生徒は、身体中が虫に這いずり回られるような幻覚を見る。
②ヒュラがマラルの手を引いて制止する。
「やめろよ」
マラル
「お前だって、給食にありつけなかったくせに!
そもそも、強い奴が弱い奴から奪うのはこの社会の摂理だろ!」
ヒュラ
「それが、お前にとっての強さ、なのか?
本気でそう思っているのか?」
マラル
「スラム街出身の雑魚め!
重系のてめえが、隔系のこの俺に、強さを語るとは生意気な!!
最弱の偽善野郎は、おとなしく失せろ!!!」
ヒュラ
「悪いが、おとなしく食い下がる気はない」
マラル
「はぁ?! あーっ鬱陶しい!!!!
いっつもいっつも!懲りない奴だぜお前はよお!!」
ヒュラ
「懲りないのはそっちだろ」
マラル
「あー!?ふざけるなよ、雑魚が!調子に乗りやがって!!!
今日という今日は、貴様を完膚なきまでに、ねじ伏せてやる!!!!
俺の強さ、でな!! 屋上でステレオ武装だ!」
ヒュラ
「上等だ。受けて立つ」
③ 民は、感覚機能 ’媒覚’により、特殊能力'ステート'が使える。
ステートは6つの適合系統が存在し、宇宙の6つの力に関係がある。
そしてステートにおける独自スキルはその希少性から、5つの世代に分類される。
①ヒュラの適合系統は、最貧弱で圧倒的に不遇な系統'重系'らしかった。
独自ステートは、下から2番目に平凡な第3世代で'自己強化意識'。
②マラル
「系統が重系なら、第0世代ですら最弱レベルの雑魚だ!」
ヒュラが剣でマラルを斬りつけにかかる。
マラルが手から爆発するように火の粉を噴射してヒュラを交わす。
③マラルは飛びながら、右手をヒュラの頭へ向けた。
ヒュラを幻覚が襲う。 (太陽消滅の幻覚)
④マラル
「お前みたいな重系の第3世代が、俺に勝てるわけねえだろ!!!」
頭部を爆破されたヒュラのメレピン体が破壊。
⑤粉塵の中のマラル
「どんな雑魚の比ですらねぇてめえに、語れる強さなんぞ、存在しねぇんだよ!!!!」
[粉塵が激しく巻き上がる。
グラウンドで基礎鍛錬を行うケラがそれを目撃。ケラ視点の風景。]
物小屋で眠りこけるヒュラに戻る
右手は冒頭のヒュラと同様に、異様な存在感を纏うが、より一層強調される。
首飾りを握りしめる。
引き
[ヒュラの夢に戻る]
ヒュラはあまり夢を覚えていなかった。
「確かに感じる、そうだ!!僕だ!!」
彼には、彼自身の存在が信じられ、また、信じようとしていた。
いや、自己への認知が、認識が、意識を提起し求め、その自由から、彼は'主体'となった。
ヒュラは、ヒュラ自身を自ら縁取っていった。
そして、彼の能力は彼自身を超えてその存在の在り方を問うようになる。
首飾りが、邪気を払い除ける。
天空に星図が広がる。




